運命の神
《おまえもか。気に食わんな》
そうたしかに女性は言った。
辺りにはシロマちゃん以外だれもいない。
ちなみにシロマちゃんは機械で合成した少女っぽい声で、結構聞き慣れているので分かる。
《貴様、どこでその力を手に入れた》
高圧的な話し振りで、そう女性は問いかけてくる。
心の奥底が冷え込むような感じがする。
威圧され、つい答えてしまう。
「この世界の創造主様です」
《…あいつか。また余計なことをしてくれたものだ》
女性は明らか怒っている口振りである。
《この娘が死ななければ、また紡ぎ直しではないか。手間をかけさせおって。忌々しい》
「ちょ、ちょっと待ってください。私が死なないといけないのですか?!」
《当たり前だ、私がそう決めているのだからな》
全く訳が分からない。私が事故で死ぬ運命はこの声の主が決めたと言っている。
《今ここで貴様を死なせる手立てがない。あの黒い塊を貴様にぶつけてやろうと思ったのだが、何かの能力で回避したのであろう?》
その発言で、この声の主が私を死の淵に追いやった原因であることがわかった。
頭とお腹が熱くなるのを感じる。
(この人のせいで私は死にかけたんだ…理由もわからないし、許せない)
自分の命を軽く考えられているようで怒りが沸く。
「答えることはできません。どのような理由で私を殺そうとしたかは存じませんが、今のところ、ご覧の通り元気です。それでは仕事がありますので」
関わりたくもなく、その場を去ろうとするが出来なかった。
周りを何人もの女性に囲まれてしまった。全員同じ顔、同じ服装をしている。
明るいブラウンで艶のある髪は、緩やかなウェーブがかかっており腰あたりまで伸びている。
黒を基調にしたワンピースのような服装には金色の複雑な刺繍が首元、袖口、腰と足元に施してある。
切れ長の大きな目にやや吊り上がった眉。スッと通る鼻に薄紅色の唇。
絶世の美女とはこういう人のことを言うためにあるんじゃないか。
そう思えるくらいに美しい人であった。
ただ一つ、真っ青な肌であることを除けば…
《まぁそう急ぐでない》
肌の青い美女達が声を揃えて言う。
《貴様も創造主どもの戯れに使われる駒なのであろう?奴らも懲りないな》
ものすごい上から目線だなぁ…
《まぁよい。貴様、名は何という》
「春田メイです」
《そうか、メイよ。能力の影響は大いにあるだろうが、それでも死の運命を回避したことは褒めてやる》
そう言って唇の端を上げる。
《我の名はイムマニプラ、運命と時の神と呼ばれておる》
「その運命の神様が私に何か用ですか?先に言いますけど、死ぬ気は全くないので全力で抵抗しますよ」
たった今ようやく得た生の機会と怒りの感情が神様相手にも関わらず口調をキツくする。
《今も言ったであろう?殺す手立てがないと。此度は見逃してやろう。だが、メイよ。貴様は何か面白いのう!今後も余を楽しませてくれ》
イムマニプラは左手をスッと前に出し手を開いた。
すると眩い光が手から発せられ、私は思わず目を瞑る。
目を開けると、私は自転車に跨った状態で、人々や車は普通に行き交っている。
空き家に大穴は無く、突っ込んできた車もいない。
持っていたスマホを見ると、今回の事故が起きた時間を確認してから1分程しか経っていなかった。
仕事のトラブルで更新遅れました。




