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アナザーレイド  作者: 好日日和
死の運命編
16/62

分岐点 2

 ゆっくり向かってくる乗用車を前に、私は考えを巡らせていた。


 私が事故に遭うことは()()()()いる。


 事故に遭うということはいくらスキルの力があっても、死ぬ運命は変わらないのでは?


 その可能性が少しでもあるなら、身体硬化で車と真っ向勝負は避けよう。



 車(運転手)は別に私を意図的に殺そうということではないはずだ。


 なら、車を避けてこの場から逃げるのが正解かな。


 私は歩道の上で自転車に跨っている。

 車は右前方から車線を突っ切って私に向かっている。

 左手側は空き家の壁が並ぶ。


 左に逃げては車と壁に挟まれる。

 前方に抜けても、車もそれに合わせてハンドルを切れば意味がない。それは右手側に逃げても同じことだ。


 じゃあ後ろ?


 いや、筋力上昇をしたところで人間のマックススピードが暴走する車に勝てることはない。背後から撥ねられて終わりだ。


 …車が来られない場所なら?


 うん。そこにかけてみよう。




 事故に遭う(死ぬかもしれない)運命はどこまでついてくるのか分からない。


 この時点で事故に遭わなければ、「事故に遭わなかった未来」は知らないので、どうなるのか不明だ。


 分からないなら、その場で判断するのみ。




 と、方針が決まったところで、頭が痛くなり思考加速が解除される。


 身体強化を施しても、脳の処理能力が限界を迎えれば必然的にスキルは解除される。


 スキル練習の時点で分かっていたことなので、心の準備はできている。



 思考加速時の頭痛=スキルの解除=全ては元通りのスピードに。



 …



 徐々に目の前の車がスピードを上げ、また私を目掛けて突進してくる。



 私は筋力上昇を発動。


 自転車を捨て、空き家の壁へ走る。

 車なんて見てられない。


 壁の目の前で止まりしゃがみ込み、


「ふっ!」

 全力で跳び上がる。


 跳び上がった先には空き家の二階の窓があり、その上下に少しだけ指だけが置けそうな部分がある。


 窓の下側に指をひっかけて、ぐいっと力任せに身体を引き揚げる。



 人が乗れるスペースはない。


 身体を丸める格好の私は空き家の壁を思いっきり蹴り、反動で車道側へ跳ぶ。



 空中で身体を捻ると真下には車が見え、私が行く方向とは反対へ進む。


 直後、


 バン!ガシャン!!

 と大きな音がなる。


 もう視界から車は消えているため状況は分からないが、多分自転車と車と空き家の壁は、それぞれが形を変えたことだろう。




 …


 空を飛びながら上手く車を躱したことを喜ぶことも束の間、そういえば着地のことを考えてなかった私は、為す術もなく道路に転がった。



 …痛覚遮断しておいてよかったよ…

いつもご覧頂きありがとうございます。

皆様に読んで頂けて嬉しいです。

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