試してみよう 3
人は自分が自覚していなくとも覚えていることがある。
例えば自転車。子どもの頃に乗れるようになったが最近は車で移動することが多いため、あまり乗っていない。
でも、久しぶりに乗ったとしても転んだりフラフラすることはあまり無い。
例えば水泳。数年前の夏に泳いで以来泳いでいない。しかしある程度泳ぎ慣れた人は、別に数年経ったところで、よっぽど溺れたり変な泳ぎになることは少ない。
そう人は、慣れた動きを繰り返していると、自然と身体が覚えているんだ。正確には脳だけど。
「ねぇシロマちゃん、身体操作は別々のことを同時に発動させることはできる?」
「メイ様のイメージ次第です」
「じゃあ記憶保持を特定の部位にのみ発動させることはできる?」
「それもメイ様のイメージ次第です」
そっか、じゃあやっぱり…
私は身体操作で全身を硬化させる。
この硬化した状態を記憶保持のスキルを使い覚えておく。
全身硬化状態の記憶を運動や細胞の代謝を司る部位に留まるよう意識する。
身体操作スキルの良いところは、ある程度仕組みを理解していると、もっとザックリしたイメージでもちゃんと思い描いたように発動するとろこだ。
全身硬化状態を記憶→小さい箱をイメージ
記憶を留めさせてる→箱を頭の中に入れ、置くイメージ
これだけで…
「…シロマちゃん、もう一度色々な方法で私を傷付けてみて」
「かしこまりました」
シロマちゃんはまたハンマーになり襲いかかってくる。
全身硬化を発動させている私にはノーダメージだ。
形を変えて襲いかかってくるシロマちゃんから視線を外し、足元の砂に指で絵を描いてみた。
それから、小石を拾って投げたり、自分でランダムな数字を書いて計算してみたりした。
つまり意識的に身体操作のことを考えないようにしてみた。
それでも、全身硬化は解除されることなく維持されており、シロマちゃんの攻撃は私に通じることはなかった。
…
「できた!できたよ、シロマちゃん!」
「素晴らしいです、メイ様。身体操作と記憶保持を上手く掛け合わせたのですね」
私は嬉しくて、ついシロマちゃんをギュッと抱きしめてしまった。
シロマちゃんも嬉しかったのか、尻尾の部分がピコピコ動いている。
『スキルの名前や説明に捉われないで』
メディテイカム様の言葉が浮かぶ。
「あのヒントはこういうことだったのかな…」
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こうして私は
「身体操作」×「記憶保持」
という新しい方法を身につけた。
この最初の一歩は、私の今後を大きく左右する出来事となった。
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