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アナザーレイド  作者: 好日日和
死の運命編
1/62

契約締結

 日本のとある都市のちょっと外れに住んでいる、春田メイは自室にてスマホを片手に混乱していた。


 つい先程、メイは自分がもう死んでしまうのだと、どうにもならないという諦めと強い絶望感を感じていた。はすだが…


ーーー




 2018年6月20日、メイはいつものように朝ご飯を食べ、私服に着替えて勤め先の病院へ行く。

 自転車で駅まで走っていたところ、右折してきた車がメイにぶつかる。

「っっっ!!」



 激しい痛みと自転車がひしゃげる音を一緒感じとれたがすぐに目の前が真っ暗になった。



 ぼんやりと少しだけ目が開くことができた時、メイの視界には白い天上と、泣きながら声をかけてくる家族の顔が映る。



「メイ…お願い…メイ…」

「頼む!メイ!!目を開けてくれ!」

「姉ちゃん…嫌だよ…死なないで!!」

 両親と弟の声がする。



『私、さっき車に轢かれて…あぁ病院に運ばれたのかな。身体も痛いし声も出ない。

 あれ?でも目はなんとか開けられてるけどな…』


 まだぼんやりする頭で、そんなことを考えていると突然知らない男の声がした。




(…君はもうすぐ死ぬよ。魂が抜けかけているから痛みや音は感じていても身体は殆ど死んでる状態だ。視覚的情報を感じられているのは身体から魂が離れ始めているからなのさ。所謂、幽体離脱の状態だ)


 男は淡々とした口調でそう言った。



『え…もう私死んじゃうの?嫌だよ…まだやりたいことあるし、家族と離れたくない…嫌…嫌!』




 メイは突然のことに激しく動揺し、悲しみと死への恐怖を感じた。


『なんとかして!お願い、なんでもするから!!私まだ死にたくない!』


(そう言われても、もう君の身体はほぼ死んでいるんだ。どうにかしようがない。ただ方法が無い訳ではない)


『方法って何!?お願い、教えて!!』


(さっきなんでもするって言ってたけど、本当になんでもするかい?)


『する!するわ!どうしたいいの?!』


(分かった。そんなに強い気持ちがあるなら大丈夫かな。君には僕の()()()になってもららうよ。内容は今のとこ秘密だけど…それでもいいかい?)



 男の声は少しだけ、楽しそうに聞こえた。しかしメイには実験台になろうが生きて家族のもとに戻れるのであれば、内容がなんであれ受け入れる気持ちになった。

 目の前で泣いている家族と離ればなれになるなんて考えられない。



『いいわ、実験台にしてもらって構わないから、私を生き返らせて下さい!』


(よし、じゃあ契約は成立だ!()()世界の創造主【メディテイカム】の名の下に【春田メイ】に新たな能力を授ける)



 メディテイカムがそう宣言すると、目の前の家族の動きが止まり、音が無くなり、視覚に映る全ての人や物がぐにゃりと歪む。

 事態が飲み込めないでいるメイは、ただただ呆然とその光景を見ている。



 歪んだ景色はグルグルと螺旋を描きながら回りだす。人と物の境目が無くなり、色が混じり合い、色々な絵の具ぐちゃぐちゃに混ぜた様な状態になる。


 そしてメイが一度瞬きをすると…



ーーー



 事故で病院に運ばれ、死の淵に立たされていたメイは、自分の部屋の椅子でスマホを持った格好で座っていた。

感想等お待ちしております。なんでも結構ですのでご意見いただけると幸いです。


2020/03/08 メイの女子大生設定を変更しました。そのほかは何も変わってないです。

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