第85話 ルロイゼン城塞都市攻城戦
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第2戦はオーソドックスに始まった。
攻める本国軍、守る魔族軍という構図ができあがる。
本国軍は矢を射かけ、城壁の兵士を攻撃する。
強い弓を引き、三段城壁の最後方から睨むルロイゼン駐屯兵を狙ったが、矢はなかなか届かない。
三段城壁は1段目が1番低く、3段目が1番高くなっている。
高低差に加え、1段目2段目が間にあるため距離もある。
3段目の敵に当てるのは至難の業なのだ。
これがルロイゼン城塞都市が、難攻不落と呼ばれる1つの理由である。
一方、ルロイゼン駐屯兵としては、攻撃がしやすい。
距離こそがあるが、高い位置から矢を射かけることができるので、易々と1段目にいる敵を攻撃することができた。
駐屯兵の数がそもそも少ないため、1度に飛んでくる矢の数は知れているが、損害を無視することはできない。
「魔導士部隊……。前面に展開しろ」
第7部隊司令官のレインの声が響く。
すると、黒金糸のローブを纏った魔導士部隊が、重装兵に守られながら現れた。
杖を掲げ、一斉に暗い呪唱の声を響かせる。
赤い光点があちこちで灯り、徐々に大きくなっていった。
「放て!!」
瞬間、爆発音が轟いた。
第一城壁に赤い光が殺到する。
まるで壁を薙ぎ払うかのように爆裂魔法が閃いた。
黒煙がたなびく。
爆風が前線、魔族両軍に襲いかかった。
「どうだ?」
レインが眼鏡を釣り上げながら、確認する。
徐々に煙が晴れていった。
やや煤の付いただけの城壁が現れる。
レインは思わず舌打ちした。
「さすがは難攻不落だな。異名通りか」
ルロイゼンの城壁を作ったのは、魔族である。
魔法に対抗する建築技術は、人類の技術に引けを取らない。
鉄や石に魔法鉱石を混ぜ、魔法効果耐性を上昇させる技術は、元々魔族が開発したものなのだ。
そして、その技術において人類はまだ、ルロイゼンの城壁以上のものを作り上げたことがなかった。
「だが――。それは10年以上の昔のことだ」
レインは下馬する。
そっと手を置くと、たちまち地面が凍り付いていった。
氷はさらに上へと伸び上がり、アーチ状の構造を作る。
一直線に氷のトンネルが第一城門へと延伸していった。
その中を前線軍が駆け抜けていく。
「これは!!」
唸ったのは、第3城壁から矢を放っていたルロイゼン軍である。
突如、第1城壁へと続くトンネルが作られたのだ。
いくら強い弓を撃ったところで、当たらない。
弩弓を下に向けて撃ってみたが、トンネルに突き刺さりはするものの、どうしても威力が減衰してしまう。
「魔法兵! あの氷のトンネルを砕け!!」
駐屯兵の中でも数少ない魔法兵に指示を出す。
だが、しかし……。
「おせえぇ!!」
声が響き渡る。
次の瞬間、第一城壁で轟音が響いた。
強い震動を感じ、ルロイゼン駐屯兵、前線軍問わず戸惑う。
白煙の中から現れたのは、ひしゃげた城門だった。
前線軍は沸き上がる。
一方で、ルロイゼン駐屯兵は言葉を失った。
顔を青ざめさえ、呆然とする。
「やはり城門の方が脆かったようだな」
ひしゃげた城門を見ながら、レインは眼鏡を光らせた。
ルロイゼン城塞都市はこの15年の間、居住環境をよくするという名目で、何度か改修が行われている。
その1つが城門だ。
魔族が作った城門は、特殊な魔法鍵が使用されており、魔族の声と合い言葉なしには開かない仕様になっていた。
そのため城門自体を付け替えなければならなかったのだ。
レインは胸を反らした。
「魔族が作ったものならまだしも、人類が作ったものなら、うちのロッキンドの魔眼に壊せないものはない!」
「その通りだ!!」
元気の良い声が響いた。
氷のトンネルをくぐり、最初に第一城門をくぐり抜けたのはロッキンドだった。
そのすぐ後ろには、自分の第7部隊の生き残りが続く。
仲間の仇を討とうと、殺気立っていた。
「第二城門に近づけさせるな!!」
ルロイゼン駐屯兵部隊の声が響く。
第二城門に近づく前線軍第7部隊に狙いを定めた。
だが、距離が近いことと、第二と第一城門の間は狭いため、なかなか斜角を取ることが難しい。
狙いを付ける前にロッキンドの狙いが定まっていた
「次だ!!」
『爆滅の魔眼』の力を解放する。
赤い光が一瞬輝くと、轟音を立てて第二城門も吹き飛ばされた。
ロッキンドはあっさりと通過する。
いよいよ最後の門――第三城門に迫った。
「敵を近づけさせるなぁ!」
駐屯兵の弓隊が身を乗り出す。
眼下に向けて弓を放った。
前線軍第7部隊に、矢の雨を浴びせる。
第二城門の時とは違う。
身を乗り出せば、簡単に狙いを定めることができる。
たちまち殺到した第7部隊を射貫いた。
「しゃらくせぇ! 邪魔すんな!!」
ロッキンドが叫ぶ。
顔を上げ、城壁の上の駐屯兵を睨んだ。
その動きを見て、隊長の指示が飛ぶ。
「離れろ!!」
その瞬間、第3城壁の端部分が吹き飛んだ。
再び大きな轟音が響き、白煙が舞い上がる。
同時に駐屯兵の悲鳴が聞こえた。
矢の雨が止む。
たった一撃で敵をなぎ払った司令官を見て、第7部隊の士気が上がった。
一方、ロッキンドはスッと息を吐く。
改めて、第3城門を睨んだ。
「チェックメイトだ!!」
ニヤリと笑う。
その瞬間、第3城門もまた悲鳴を上げた。
爆発が起こり、吹き飛ばされる。
爆風に乗った巨大な鉄板は1度空へと舞い上がると、ルロイゼン城塞都市に再び戻ってきた。
落雷が突き刺さったような音が鳴る。
ルロイゼンに前線軍が到達したことを知らせた。
「くへへへ……。これでオレは人類史上初めてこの難攻不落の都市を攻略した勇者として名が刻まれるわけだ」
初めに破ったのは軍師ヴァロウだ。
だが、勇者として破ったのは、ロッキンドが初めてになる。
人類史上2人目の快挙だが、ヴァロウが兵や戦術によって攻略した一方で、ロッキンドはほぼ単独である。
その点を考慮すると、ロッキンドがやったことは偉大な事といえるかもしれない。
「さあ、行くぞ! 野郎ども!! 魔族とそれに与した人間どもを根絶やしにしろ! ただし略奪は許さねぇぞ! 軍規に違反したヤツは、オレの魔眼でぶっ飛ばすからな」
ロッキンドは命令する。
そして忠告も忘れない。
相手は人類であろうとも、魔族と手を組んだのだ。
その罪は重い。
どんな理由があろうとも人類軍に弓を引いたことは間違いないのである。
だが、軍規に則るところは、彼が若く、またダレマイルやボッタッキオとは違うところだった。
何より彼は勇者だ。
正義の使者が悪事をなしてはいけない。
幼稚であっても、その純粋な正義感は持ち合わせていた。
ロッキンドもまた走る。
ルロイゼン城塞都市の通りを駆け抜けていった。
人通りは皆無に等しい。
石あるいは木造の家屋や商店が建ち並ぶ。
城塞都市のごく一般的な風景が広がっていた。
「おかしい……。静か過ぎる」
戦地を経験して、すでに5年の月日が経っていた。
短いながら濃厚な戦場生活が、ロッキンドの勘を刺激する。
民衆がいないのは、戦火から守るため逃がしたからだろう。
それならばわかる。
しかし、それでも静か過ぎる。
それに何故か、この広がっている風景が何か作りものっぽく見えた。
警戒しながら、ロッキンドは進む。
すると、つと足を止めた。
いや正確には、何か硬いものにぶつかったのだ。
「なんだ?」
手をかざす。
ある……。
何かゴツゴツした感覚。
石……? いや、おそらくこれは壁だ。
石の壁が目の前にある。
だが――。
「どういうことだよ?」
ロッキンドは周囲を見た。
彼の魔眼に見えるのは、どう考えても普通の城塞都市の風景である。
だが、今目の前から先が行けなくなってしまっているのだ。
「まさか幻影魔法か?」
あくまで予測だが、ここにはぐるりと囲むように壁があるのだろう。
そこに幻影魔法によって、町並みを映しているのだ。
「はっ! 小細工しやがって! 馬鹿にされたもんだな。こんな幻影魔法をオレが見抜けないとでも思ったのかよ!!」
ぶっ壊してやる!!
ロッキンドは鼻息を荒くした。
隻眼となった『爆滅の魔眼』を向ける。
いつも通り、幻影魔法がかかった壁をなぎ払った。
どぉぉぉぉぉおおおおおおおおおんんんんんんんん!!
轟音が響く。
だが、それは爆発音ではなかった。
崩れた壁の向こうから現れたのは――――。
「水だと!!」
そうだ!
大量の水である。
「ぎゃあああああああああ!!」
たちまちロッキンド以下、前線軍第7部隊が飲み込まれる。
破竹の勢いでルロイゼン城塞都市に侵入した人類軍は、巨大な水の中に沈んでいくのだった。
籠城戦で水攻めってなんぞ!?
【今後の更新につきまして】
『上級貴族様に虐げられたので、魔王の副官に転生し復讐することにしました』を
いつも読んでいただいてありがとうございます。
突然ではありますが、更新頻度につきまして、
毎日投稿から3日1回の投稿に今後変更させていただきます。
理由についてなのですが、実はこの作品の更新を開始してから、
うまく左手が動かない時がございまして、更新が困難な時が度々ございました。
(症状としては大げさなものではないです。ただ疲れが溜まると動きが悪くなる程度です)
整体に行ったり、マッサージしてもらいながら、
騙し騙しやっていたのですが、長い間なんらかの作品を毎日投稿していた影響からか、
蓄積された疲労感がぬぐえず、少しお休みを取りながら書き続けることに結論にいたりました。
他更新してる作品もそうですし、この作品もそうなのですが、
長く読者と関わっていける作品にしたいと思っています。
そのために必要な休養だと、ご理解いただければ幸いです。
楽しみにされている読者の方々には、本当に申し訳ないのですが、
今後とも『上級貴族様に虐げられたので、魔王の副官に転生し復讐することにしました』を
よろしくお願いします。
※ アルファポリスの方はなろう版に追いつくまでは毎日上げる予定です!




