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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
8章 メッツァー城塞都市占領

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第70話 メッツァー蹂躙

 有り体にいうなら、ルビガン・ゼイ・ボッタッキオはダレマイルが嫌いだった。


 目立った戦功もなく、本国の文官として何か偉業を成し遂げたわけではない。

 ただ王族――とりわけリントリッド王に寵愛され、成り上がった()である。


 何よりボッタッキオは上級貴族が気にくわなかった。

 大公に続いて公候伯子男と続く貴族階級。

 そこにいつの間にやら、上級貴族という階級が生まれ、自分たち貴族を顎で使い始めた。

 その能力は非凡であり、王族や民も認める殿上人というが、ボッタッキオからすれば、金持ちのボンボンとそう変わらない。


 ダレマイルにしてもそうだ。

 今も地方の村を占拠し、どんちゃん騒ぎをしている。

 戦局というのを何もわかっていない。

 所詮はお飾りの司令官なのだ。


 メッツァーを占拠するのは今しかない。

 本国の指示を仰いでいては、好機を逸す。

 ボッタッキオは自軍だけを率いて、メッツァーへと向かった。


 メッツァーの城門前へ来ると、兵を見せつける。

 その中で先頭に立ち、ボッタッキオは声を張り上げた。


「我らは本国軍第一師団。我は第一師団師団長ルビガン・ゼイ・ボッタッキオである。メッツァー軍に助太刀に来た。城門を開けられよ」


 突然の大軍に、数少ない駐屯兵たちは慌てふためく。

 だが、援軍だと知ると、ホッとした様子で、門の上から声を掛けた。


「助太刀感謝いたします。ですが、本隊はすでにシュインツに向けて進発いたしました」


「なるほど……。そうか。すまぬが、こちらは遠方より来て、人も馬も疲れている。一時、中で休息を取りたい。門を開けてくれぬか」


 駐屯兵たちが集まり相談する。


「何人であっても門を開けるなと、領主バルケーノ閣下から言付かっております」


 返答が聞こえる。

 ボッタッキオは軽く舌打ちした。

 だが、警戒しているだろうことは、予想の範囲内だ。


「我らは本国から来たのだぞ。その同胞に対して、門を開けぬとはどういうことだ。これならば、同盟は本国に含むところがあるといっているようなものだぞ!」


「そ、そんなことは……」


「ここで一戦を交えるというのは良かろう。お主らの数は精々500。我らは10000。籠城戦になろうと、どちらが有利かわかっているだろう!」


「うっ……」


 駐屯兵はたじろぐ。


「案ずるな。大人しく門を開けてくれれば、何もせぬ」


 肩をいからせ凄んだかと思えば、次にボッタッキオは柔和な笑みを見せる。

 その顔はまるで猿のようだ。

 彼はその容貌から密かに『大猿』と呼ばれる将軍であった。


 しばらく時間が置かれる。

 すると、ようやく門が開いた。

 ボッタッキオは「ありがとう」と感謝を述べ、悠々と兵を率い、メッツァーの中へと入っていく。


 全軍が入城したのを確認し、ボッタッキオは持っていた長柄の青竜刀をかざした。


「蹂躙せよ!」


 その一言で戦い――いや、虐殺が始まった。

 猿の顔をした兵は、途端に牙を剥き、獰猛な大猿へと変貌する。


「話がちが――――」


 あっという間に城壁にいた駐屯兵たちを屠る。

 ボッタッキオは笑いながら、声を張った。


「殺せ! こいつらは全員逆賊だ。略奪も許す。ただし、女も子どもも各人1人ずつまでだ。いいな!!」


 将軍の許しが出ると、大猿たちは領民に襲いかかる。

 次々と街の人間を斬りつけ、家の中に押し入っては、壁に血の跡を作った。

 およそ人の所行とは思えない。

 酷たらしい光景に、ショック死するものすら現れる。


 一方ボッタッキオは街の中心へと向かった。

 メッツァーには他に2つの壁がある。

 そこにも駐屯兵が待ち構えていた。

 弓を構え、先頭のボッタッキオを狙う。


「放て!!」


 号令と共に矢の雨が降る。

 するとボッタッキオはそのすべてを打ち払った。

 スピードを緩めず、第2の城壁に突撃していく。


 すると、サッと手を挙げた。


「魔法騎兵!! 呪唱準備!」


 ボッタッキオの背後にいた騎馬に乗った魔法騎兵が、槍のようなものを掲げる。

 先端の魔石に魔力を込めると、赤く光り始めた。


「放て!!」


 ボッタッキオは青竜刀を振るった。

 同時に魔法が放たれる。

 魔力が城門に殺到した。


 ドンッッッッッッ!!


 腹の底を揺るがすような轟音が、メッツァーを貫く。

 分厚い第2の城門が吹き飛んでいた。


 使用したのは炸裂系の魔法だ。

 それを収束させ、城門を吹き飛ばしたのである。

 さらにいえば、第2の城門ができたのは昔のことだ。

 今の魔法戦とその技術に、城門が対応できていなかったのである。


 ボッタッキオはその脆さに気付いていた。

 いずれ攻略しなければならない城塞都市である。

 事前に兵とも打ち合わせと訓練を重ねてきていた。


 第2の城門をくぐり抜ける。

 ここは中産階級の人間が住む区画だ。

 貧困街が並ぶ区画とは、着ているものも建物も違う。


 だが、ボッタッキオは目もくれない。

 狙うは次の門だった。


 駐屯兵を置き去りにして、第3の城門へとかかる。


 もう先ほどの魔法による突破はできない。

 炸裂系の魔法は魔力を食う。

 増幅の時間もかかるため、同じ戦術は使えないのだ。


「来たぞ! 死守だ、死守!!」


 第3の城門を守る駐屯兵たちの悲鳴じみた叫びが聞こえる。

 第2と同じく矢を射かけたが、ボッタッキオには通じない。

 構わず突っ込んでくる。


「ぶつかるぞ!」

「何をするつもりだ」


 スピードを緩めようとしないボッタッキオを見て、駐屯兵たちは戦慄した。


 すると、ボッタッキオは青竜刀を掲げる。

 大上段にかかげると、さらに馬の腹を蹴って、速度を要求した。

 口を開け、『大猿』の将軍は裂帛の気合いを吐き出す。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 青竜刀が閃く。

 その速さは落雷。

 聞こえてきたのは、雷鳴であった。


 ガラン、と甲高い金属音が響く。


 真っ二つに斬られた城門は、剣圧を浴びて吹き飛んだ。

 それは近くの屋敷に突き刺さった。


 メッツァー最後の門。

 第3の城門は第2の城門よりもさらに古い。

 まだ魔族の勢力圏内だった時に、急造で作られたものだ。

 そのため門の厚さが、他の門よりも薄い。


 だからボッタッキオは、自分の膂力ならば斬れると考えていた。


 かつて彼はその青竜刀で硬い巨人族をも斬ったことがある。

 古びた門を斬るなど、造作もなかった。


「きゃああああああああああ!!」


 悲鳴が上がった。

 上質な絹を纏った女が、道ばたで固まっている。

 ここは上流階級が住む区画。

 そして目の前には、宮殿ブロワードがそびえていた。


 広いメッツァーを走りきったボッタッキオは、己を称賛するように手を広げる。

 猿のように歯をむき出し、笑った。


「きぃきいいいい!! ものども! よりどりみどりだ! 殺せ! そして奪え! 2度と我ら本国に逆らえないように見せしめにせよ!!」


 ボッタッキオは再び号令をかける。

 まるで1本の男根のように怒張させた兵士たちは、のうのうと暮らしていた商人や貴族に襲いかかった。


 様々なところで悲鳴が上がる。

 血の雨がメッツァーに降り注いだ。


 だが凶行はいつまでも続かない。


 ボッタッキオはふと足を止める。

 青竜刀を降ろし、嬲っていた貴族を塵のように捨てた。


 振り返るが、そこにあったのは白煙と悲鳴が上がるメッツァーの姿しかない。


「気のせいか……」


 首を傾げる。 

 だが、確かに感じたのだ。


 誰かに見られ(ヽヽヽヽヽヽ)ているような(ヽヽヽヽヽヽ)感覚が(ヽヽヽ)……。


 しかし、それは気のせいではなかった。


 突然、メッツァーに地鳴りが響いたのである。


おかげさまで『ゼロスキルの料理番』が無事発売されました。

有り難いことにコミカライズも決まっております。

良ければ、Web版、書籍版、コミカライズ版を楽しんでいただければと思います。


『上級貴族様~』もコミカライズしたいぞ!

その前に書籍化だけど……!

なので、更新頑張ります!!

引き続き応援いただければ幸いです。

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