第52話 入城
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衛兵は差し出された通行手形を確認する。
次に本人たちに鋭い視線を放った。
2人組。
通行手形には商人と書かれている。
だが、商品のようなものは持っていない。
荷馬車すら引いていなかった。
「どこから来た?」
「シュインツです」
頭に三色のターバンを巻いた長身の男は、答えた。
途端、衛兵の顔色が変わる。
明らかに警戒した様子だった。
「あのシュインツ……」
「ええ……。そうです。聞いて下さいよ、衛兵さん。シュインツで商売をしていたら、いきなり魔族が襲いかかってきましてね。命からがら逃げてきたんですよ。おかげで儲けは0です。とほほほ……」
やや芝居がかった動きで語る。
すると、周りの衛兵たちは「がははは」と笑った。
人の不幸話が好きなのか。
妙にいやらしい笑みを浮かべている。
「そういうことか」
目の前の衛兵は警戒を解いた。
長身の男は一瞬口元を緩めるが、すぐに弱り顔に戻る。
「大変だったな。通っていいぞ」
手で合図を送る。
「どうも」と胸に手を当て、長身の男がお辞儀しようとしたが。
「きゃあああああ!!」
悲鳴が上がった。
女が衛兵と何か言い争っている。
側には子どもがいて、苦しそうに息をしていた。
「お願いです! せめて薬だけでも!!」
「ダメだ! お前らはゴドーゼンの住民だろう!? 反乱に荷担した都市の住民は誰も入れるなというお達しだ! 命があるだけでも有り難く思え!」
「そんな! 私は反乱に荷担してません。ただ見ていただけで……」
「ふん! 関係ない。そもそもそれを証明できるのか?」
「それは――」
「出来ないだろう。さあ、行った行った!!」
「ダメなんです。早くこの子に薬を与えないと……」
「うるさい!」
衛兵はとうとう母親に手を上げた。
その子どもは母親に駆け寄るも、ふらりとすがりつくように倒れてしまう。
その様を見て、衛兵の態度は変わらない。
ふん、と鼻息を荒くし、そっぽを向いた。
「ゴドーゼンからの難民ですか?」
長身の男は尋ねた。
衛兵は少々めんどくさそうに兜を撫でる。
「ああ。反乱後、難民がああしてやってくるんだ。だが、メッツァーでは受け入れていない。彼らは全員反乱軍ということになっているからな。ははっ……。馬鹿な連中だ。お上に逆らっても、なんの得にもならねぇってのに」
衛兵はししし、と笑う。
まるで鼠の笑顔を見ているかのようだった。
「さ! あんたら、あっちだ。行け」
「はい。ありがとうございます。行きましょう、ヴァロ――じゃなかったヴァル」
長身の男が振り返る。
だが、すぐ後ろに控えていたはずの連れの姿がなかった。
辺りを見回す。
先ほど衛兵といざこざを起こした親子の側にいた。
倒れた女を起し、子どもの病気の具合を診る。
「この薬を飲め……。後は十分な栄養を取るんだ」
連れは硝子瓶に入った薬と、パンを衛兵たちに見えないように渡す。
「足りないようなら森に行け。今の時期の獣は大人しいから、襲われる心配はない。マザランというブツブツとした赤い実が食べられる。それで飢えをしのげ」
「あ、ありがとうございます」
母親はぶわっと涙を流し、深く頭を垂れる。
人間の感情が激しく露わになっても、男の表情は変わらない。
衛兵を一瞥した後、再び忠告した。
「衛兵に見つからないように早く隠せ。行け――」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
母親は言われた通り、薬とパンを隠す。
子どもを担ぐと、メッツァーの城門から離れていった。
男は見送る。
「お前、今あの親子に何をした」
衛兵は問い詰める。
「ヤツらは反乱に荷担したものたちだ。ヤツらを助けるというのは、反乱に荷担したも同然だぞ」
衛兵は槍を構える。
すると、男は振り返った。
ヘーゼル色の瞳を光らせ、衛兵たちを睨んだ。
「「「「――――ッ!!」」」」
瞬間、衛兵たちは凍り付く。
自然と槍を持つ手が震えた。
妙な緊張感が漂い、入城を待っていた他の人間たちも顔を向ける。
異様な雰囲気に飲み込まれ、沈黙した。
「これは失礼しました」
割って入ったのは、長身の男だった。
衛兵の前に揉み手をしながら、歩み寄る。
「うちの連れが大変失礼を……。ここはどうか、これで――」
ペイベロは衛兵の手をギュッと握る。
その感触に、衛兵は満足そうに顔を歪めた。
「ふん! 気を付けろ! 行け!!」
槍を振るう。
長身の男は連れの手を引き、ようやく城門をくぐった。
歩きながら、長身の男は口を開く。
「危ないことをなさりますね。気持ちはわかりますが、それは偽善というものです。お忘れですが、反乱を煽ったのは我々ですよ」
「…………甘い、と思うか? ペイベロ」
長身の男は首を振る。
「いえ……。ただ時々、あなたが人間のように見えて仕方がない。そうやって、角を隠しているお姿を見ると、特に……」
「…………」
「ザガスさんや、あのベガラスク師団長は、生粋の魔族だと思います。ですが、あなたとメトラさんはどこか違う」
「そうか……」
ヴァロウはそれだけ行って、城門をくぐる。
そして現れたのは、大要塞同盟主都市メッツァーの姿だった。
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