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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
5章 シュインツ攻略戦

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第47話 補給部隊到着

本日は日常回です。

 シュインツを攻略し、占領下に置いたヴァロウたちはつかの間の休息を取っていた。


 領主館を接収したヴァロウは、早速シュインツの状態を点検する。

 残っていた書類を1枚1枚確認した。

 もうすぐヴァルファル、もしくはメッツァーが攻めてくる。

 その前に、シュインツの財政状況や裏帳簿などを確認する必要があった。


 敵を事細かく分析するのが、軍師の仕事だ。


 ある程度、予想はついているが、あくまで予想でしかない。

 真実を掘り下げていけば、思わぬ掘り出し物があるものだ。


 書類の精査に励んでいると、ヴァロウの下にベガラスクが現れた。


 白銀の魔狼族は、どこか落ち着きがない。

 せわしなく尻尾を振ったり、耳を掻いたりしていた。


「どうした、ベガラスク?」


「う、うむ。う゛ぁ、ヴァロウよ。オレのシュインツの活躍はどうだった?」


「活躍? ああ……。助かった。お前と第四師団がいなければ、シュインツを落とせなかっただろう。魔狼族の制圧力はさすがだな」


 ヴァロウは褒め称える。

 普段の彼から考えれば、まるで嫌味のように聞こえるだろう。

 だが、ヴァロウはただ素直な気持ちを吐露しただけだった。


「ふ、ふん……。そ、そうであろう」


 ベガラスクは気を良くしたらしい。

 大きく胸を反り、遠吠えでもするように鼻を掲げる。

 ぶんぶんと振った尻尾の毛並みはよく、もふもふになっていた。


「それで……。そんなことを言いに来たのか? 俺は忙しい。次の戦に備えなければならんのだ」


 ヴァロウは書類に目を落とそうとする。


 我に返ったベガラスクは慌ててヴァロウに迫った。


「ち、違う。そうではないのだ……。ううむ……。なんといえば、いいのか。褒美とでもいうのか……」


「褒美がほしいのか? それは構わんが、普通褒美というのは目上のものからもらうのであって――――」


「いやいや、そういうわけではない!」


 ベガラスクはブルブルと首を振る。

 また耳を掻き、尻尾を振った。


「そのつまり……。け、契約だ!」


「契約?」


「そう。お前と取り交わした契約だ。あれはどうなっている?」


 ベガラスクは瞳を光らせた。


 そこでようやくヴァロウは気付く。

 持っていた羽ペンを置いた。


「なるほど。お前、焼き魚が食べたいのだな」


「べ、別に! おおおお、オレが食べたいわけじゃないぞ。へ、兵が食べたいっていうから。そ、そもそもお前とはそういう契約で……」


 ベガラスクは素っ気ない風を装う。

 だが、心情というのは身体のどこかに出るものだ。

 特にベガラスクはわかりやすいアイコンを持っている。


 尻尾をぶんぶんと振っていた。


 どうやら、焼き魚を毎日食べるという契約は、相当魅力的なものだったらしい。


「わかったわかった。心配するな。すでに補給部隊がシュインツに向かっているはずだ。……それまで待て」


「補給部隊だと……」


「ああ……。シュインツはドワーフの街だ。まともな食糧はないとわかっていた。だから、時間差をつけて補給部隊をルロイゼンから進発させておいたのだ」


「おお!」


 ベガラスクの顔が輝く。

 まるで子どものようだった。


 だが、すぐに表情を整える。

 再び第四師団の師団長としての威厳を取り戻そうとするが、すでに遅かりしだった。



 ◆◇◆◇◆



「みんな、お待たせ!」


 城門をくぐり、補給品を詰んだ荷馬車と一緒に現れたのは、エスカリナだった。


 長旅だったにも関わらず、疲れを全く見せていない。

 向日葵のような笑みを、周囲に振りまいていた。


 それを見て、ギョッとしたのはメトラだった。

 横のヴァロウもやれやれと首を振る。


 エスカリナが補給部隊に帯同していることを、この時初めて知ったからである。


「あなた、どうして? ルロイゼンにいるはずじゃ」


「シュインツに知り合いがいてね。会いに来たのよ」


「知り合い?」


「メフィタナさんっていって、ここの領主のはずだけど」


「あなたもメフィタナ先生を知っているの?」


「メフィタナ先生(ヽヽ)……?」


「はっ!」


 メトラは慌てて口を塞いだ。

 だが、遅い。

 エスカリナはジト目で睨む。


 問いただそうと口を開いた時、ヴァロウがメトラを助ける。


「メフィタナはいない。中央に連行されたそうだ」


「え? わたし、そんなこと聞いてないわよ!」


 今度は、エスカリナが素っ頓狂な声を上げる番だった。


「不名誉なことだし。お前の父が報告しなかったのだろう」


「そっか。だから、手紙を送っても返事がこなかったのね」


「そのメフィタナという人物とは、仲が良かったのか?」


「うん。面白い人よ。すっごく変わった人だけど……」


「…………か」


「ん? ヴァロウ、何か言った?」


 エスカリナはヴァロウが何か囁いたのを聞き逃さなかった。

 確かに言ったのだ。

 「相変わらずか」と。


「そのことはいい。来てしまったのならしょうがないが、お前の役目は補給ではない。ルロイゼンの維持だ。仮にも領主代行を務めているのだから、軽はずみな行動はするな」


「……うっ。ごめん、ヴァロウ」


「あと、どうしても城塞都市の外に出たいなら、まず俺に報告しろ。報連相は基本中の基本だ。教わらなかったか?」


「そうだったわね。ヴァロウの書物にも書いてあったし。ああ。このヴァロウは、人間の方のヴァロウね」


「…………」


「ごめんなさい、ヴァロウ。今度からは気を付けるわ」


「わかればいい。補給部隊として来たのだ。部隊の手伝いをしてやれ。早々に焼き魚の用意をしないと、魔狼族がお前たちの首を掻き切ることになるぞ」


「そ、それは怖いわね……。なるべく早くするわ」


 エスカリナは顔を青くする。


 ヴァロウは忠告すると、2、3人の兵に指示を出して、自分は領主の館に戻っていった。


 その小さな後ろ姿を見ながら、エスカリナはある1人の男と重ねる。

 小さい頃、たまたま父に連れられた戦場で見た――あの軍師の背中とそっくりだった。


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