第46話 シュインツ陥落
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シュインツ陥落……。
その報告はすぐに大要塞同盟主都市メッツァーに届けられ、領主バルケーノの知るところになった。
ブロワード宮殿に泊まったルミルラも同じ報告を聞く。
シュインツにはゴドーゼンの『風の勇者』、テーランの重戦士部隊のような主戦力となる武将タイプがいない。
その代わり、メッツァー以上に高い城壁と、優秀な工兵部隊を整えている。
2、3日ぐらいなら余裕で魔族の攻勢に耐えられると思っていた。
しかし、報告によれば半日も保たなかったという。
バルケーノは眉を顰めた。
「一体、どんな大軍で攻めてきたのだ、ヤツらは!」
レドベンに詰め寄る。
軍務参謀と大臣を兼任するレドベンは、三角縁の眼鏡を釣り上げながら、答えた。
「報告によれば、およそ3000……」
「3000だと!」
バルケーノは思わず声を荒らげた。
今にもレドベンに掴みかかりそうな勢いで、顔を赤くする。
その表情を見て、レドベンは震え上がった。
「愚か者どもめ! 高々倍数の兵力で城塞1つ守れないとは……。シュインツの領主は、そんなに無能だったのか?」
バルケーノは唾棄する
だが、横でやりとりを見ていたルミルラは冷静だった。
「落ち着いて下さい、父上」
「落ち着いていられるか! ルロイゼンに続き、シュインツまでヤツらに落とされたのだぞ。大要塞同盟の3分の1の都市が、悪魔どもに奪われたのだ。落ち着いていられる方がどうかしている」
「ごもっともだと思いますが、まずはお平らに……。問題はシュインツが落とされたことではありません」
「なんだと? どういうことだ?」
「問題は一体どこから3000の兵が現れたか、ということです」
「ルロイゼンに決まっておろう」
「恐れながらバルケーノ様……」
親子の会話に割って入ったのは、レドベンだった。
ルミルラが言いたいことに気付いたのだろう。
彼女に代わって、参謀が説明を始める。
「我々が知り得る情報では、ルロイゼンにいる魔族の数は1000名余りと思っておりました。そのほとんどが、魔物やアンデッドです」
「それが一気に2000も増えたか……。どうせアンデッドを増やしただけではないのか?」
「それは違います。報告によれば、魔狼族も含まれていた、と……。また確定情報ではありませんが、第四師団ベガラスクの姿もあったそうです」
「第四師団!!」
その報告には、さしもの『竜王』といわれた男も声を張り上げた。
ルミルラは神妙に頷く。
「そうです。その第四師団がどこから現れたか、それが問題なのです」
魔族本国は遥か彼方だ。
2、3人の魔族ならまだしも、2000の兵が人類の支配権を抜けて、ルロイゼンにやってくるのは、どう考えてもおかしい。
仮に大軍を送り込める転送魔法を、魔族が開発したならば、たちまち内地は大騒ぎになるだろう。
そういう意味もあり、慎重に分析をしなければならない――というのが、ルミルラの意見だった。
「ふん。まあ、良い」
バルケーノは会議室の椅子にどっかりと腰を下ろす。
髭をさすり、ようやく心を落ち着かせた。
「これで決定的だ。ちまちましていれば、シュインツの二の舞になるぞ」
「お待ち下さい、父上! 相手の出方を見るべきです。それに昨日、申し上げましたが、先の反乱でまだ戦力が整っていません」
「武器の調達を急がせろ!」
「お、恐れながら我が主……」
レドベンは頭を下げる。
1度、眼鏡をかけ直すと、報告書を見ながら答えた。
「武器防具ですが……。すべてシュインツに発注しておりました。今、メッツァー中の鍛冶屋に頼んでおりますが、時間はかかるかと」
「まさか……。シュインツを狙ったのは、そのため――」
ルミルラは顎に手を置き、1つ頷く。
娘は冷静に受け止めたが、父親は違った。
「なんたることだ!!」
バルケーノは机を叩く。
まるで灼熱の炎のように息を吐き出した。
「鍛冶屋に見張りを付けろ! ヤツらを1日中働かせるのだ! 休みを与えるな!!」
「そ、それでは鍛冶師が死んでしまいますぞ」
「魔族に殺されるのと、過労死で死ぬとのどっちがいいのだ。それでも死を選ぶというなら良かろう。我自ら刃をくれてやるわ!」
「父上! 横暴が過ぎます! 先の反乱で、メッツァーでは反戦の機運が高まっているのに。これ以上、民を刺激するのはお止め下さい」
「口出しするな、ルミルラ! ここは我が治める都市ぞ。それとも、ヴァルファルにもふれを出してやろうか? 大要塞同盟主都市の総領主として」
「…………」
ルミルラは反論しなかった。
大要塞同盟の主都市の総領主でも、ヴァルファルの政治に口出すことはできない。
それができるのは、中央の大臣級ぐらいだろう。
つまり、バルケーノはその判断すらできないほど、怒り狂っているということだ。
だが、決してバルケーノは猪突猛進な武将ではない。
時間が経てば、冷静になるだろう。
そういう意味では、戦力が整うまでの時間があるのはありがたいことかもしれない。
「父上、私はヴァルファルに戻ります」
「ああ……」
それ以上、何も言わず、バルケーノは机に広げられた地図を見つめる。
別れの言葉はなく、ルミルラは少し寂しげに会議室を後にした。




