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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
5章 シュインツ攻略戦

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第45話 200万の命

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「あーあ……。回路がボロボロだ……」


 黒焦げになったキラビムを見ながら、アルパヤは息を吐く。

 落ちていたベレー帽の埃を払うと、ぼさぼさの灰色の髪を帽子の中に収めた。


 魔法鉱石(ミスリル)には弱点がある。

 耐火耐水耐圧には強いのだが、雷属性の魔法には弱い。

 対処法として、特殊な膜を張る方法があるのだが、キラビムには処理が施されていなかった。


 雷を通した魔法鉱石(ミスリル)が反応し、中の領主諸共黒焦げにしたのである。


 中の領主の遺体を出して、回路などを確認したが、どこも焼き切れていた。


「一からやり直しか……」


「ああ。そうだ。一からやり直せ」


 悪びれることもなくそう言ったのは、ヴァロウだった。

 アルパヤと一緒に、キラビムの損傷具合を確認している。


「元々これは掘削用に作っていたのだろう?」


「え? う、うん……」


「ならば、戦闘用に作り直せ。今のままでは、やはり魔法鉱石(ミスリル)の塊でしかない。対雷属性被膜も貼っていなかったしな」


「えっと……。ちょっと待って、ヴァロウ! いいの? ボク……。キラビムを作って……」


「確かにこのキラビムだけでは、200万の人類を殺せないだろう」


「う――うん。それは……気付いてた。その、それは方便で……」


「俺の話をちゃんと聞け。俺はこの(ヽヽ)キラビムだけ(ヽヽ)では――と言ったのだ」


「ほへ?」


 アルパヤは首を傾げる。

 頭に載せていたベレー帽がずり落ちた。


「50、いや――まず最低100体のキラビムを用意しろ。むろん、改良したものをな」


「100体!?」


 アルパヤは思わず叫声を上げた。


 1体作るだけでかなりの時間がかかったのだ。

 それが100体なんて気が遠くなる作業だった。


「100体でキラビムの部隊を組織し、そして200万の人類を殺せ……。そして200万の命を救え……」



 俺がその戦場を用意してやる……。



「ヴァロウ……」


 そのヴァロウの横顔を見ながら、アルパヤは顔を赤くする。


「待て、ヴァロウ!」


 待ったをかけたのは、ベガラスクだった。


「それはドワーフたちを許すのか? それとも、このアルパヤというヤツを許すのか?」


 鋭い視線を向けながら、ヴァロウに詰問する。

 身が竦むような視線を浴びても、ヴァロウの表情は変わらなかった。

 そして、事も無げに言い放つ。


「ドワーフだ」


「貴様!! 百歩譲って…………この女が優秀な技師であることは認めてやる。キラビムという奇怪な兵器を量産するというなら、それもいいだろう。だが、それはこの女にできることであって、他のドワーフは違う!」


「ベガラスク、お前は何を聞いていたのだ?」


「なにぃ?」


「アルパヤは言った。『ホントはみんな、戦争の武器なんて作りたくなかった』。こいつらは、イヤイヤ武器を作らされていただけだ。そんな作り手の魂のない剣で、俺たち魔族を斬れると思うか?」


「それこそ詭弁であろう! こいつらの罪が許されるものではない」


「ならば、ドワーフの住み処であることを百も承知しながら、ここを放棄し、撤退せざる得なかった魔族はどう裁かれるのだ?」


「う……。それは――――。いや、そもそもオレがいいたいのは、こいつらがまた裏切るという可能性だ!」


「ならば、俺たちがきっちりと管理すればいい」


「お前! 第六師団で面倒を見るつもりか?」


「なんだ? 第四師団が面倒を見るのか?」


「ふん! 鈍足のドワーフなど。我らについていけるものか」


「決まりだな……」


「いやいやいやいや、待て。勝手に決まるな」


「いずれにしろ。こいつらの沙汰は俺たちが決めることではない。魔王様が決めることだ。違うか?」


 魔王という名前が出てきて、初めてベガラスクは反論を止めた。


 1万人規模の魔族を裁くのだ。

 いくら魔王の副官といえど、裁量権の範疇を超えている。

 中央にお伺いを立てるのは、当然と言えば当然だった。


「わかった。魔王様の判断を仰ごう……」


 ようやくベガラスクは矛を収める。

 すると――――。


「がああああああああああ!!」


 吠声が響き渡る。

 倉庫の壁を破壊しながら現れたのは、ザガスだった。

 どうやらずっと気絶していたらしい。


「くそ! もう一戦! 鉄くず野郎! かかってこい!!」


 声を張り上げる。


 だが、キラビムが壊れてしまったことを聞くと、今度はアルパヤの胸ぐらを掴んだ。


「今すぐ修理しろ!」


「そ、そんな簡単に直ったら苦労しないよ!」


「魔法でパパッと直せばいいだろうが」


「キラビムはそんな簡単なものじゃないの!! ねぇ、ヴァロウ! このお兄さんに、説明してよ」


「ザガスに説明して納得するほど頭はよくない。突っかかられるのがイヤなら、とっととキラビムの二号機を作るんだな」


「ああ! もう! これじゃあ、人類が治めていた時の方がマシだよ!!」


 アルパヤは弱音を吐くのだった。



 ◆◇◆◇◆



 再びドワーフたちは集められた。

 アルパヤの倉庫で語られたことを話す。

 戸惑う者もいたが、ひとまず命がつながったことに安堵するものがほとんどだった。


 だが、武器作り、魔族に再び貢献するというのには、難色を示すものがいた。


 そのほとんどがベテランの職人たちだ。

 人類軍の下でかなり酷使されていたらしく、もう身体がボロボロなのだという。

 ゆっくり余生を過ごしたい、というのが希望だった。


 当然、ベガラスクは難色を示した。

 だが、ヴァロウは「それでいい」と頷く。


「先にもいったが、魂のこもっていない武器ほど不要なものはない。やる気がないなら、それでもいい。ただ――」


 すると、ヴァロウは1枚の紙を書かれた。

 魔族の書類ではない。

 なぜならば、人間の言語で書かれていたからだ。


「最後に、お前たちがやり残した仕事をしてもらう」


「オラたちが……」

「やり残した……」

「仕事?」


 ヴァロウは書類をドワーフたちに見せた。


 確認した瞬間、ドワーフたちはギョッと目を剥くのだった。


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