第44話 科学者
ジャンル別8位でした。
また1歩後退!
でも、まだまだ!
本日1回目の更新です。
「魔導?」
「人馬型?」
「兵器だと?」
「キラ……ビム…………か……」
魔導人馬型兵器キラビム。
その前に集った魔族たちは、それぞれの種族に応じた驚き方をしていた。
驚いた観客たちを見て、アルパヤは鼻の下を擦る。
「ふふん! どう? カッコいいでしょ?」
「カッコいいか?」
「どっちかというと、ダサいというか」
「オレの方がよっぽどカッコいいわ」
魔族たちの評価は辛い。
ベガラスクなどは、どさくさに自分の容姿をアピールする始末だ。
魔族たちの意見を聞いて、アルパヤは眉間に皺を寄せた。
「うっ……。カッコいいと思うけどなあ。でも、見た目だけじゃないよ。こいつの力は、50頭の馬にだって勝てるんだ。機動性はまだまだだけど、改良すれば馬よりも速く走れるよ」
「そ、そう……」
「腹が減った」
「いや、見慣れてくると意外にカッコいい……」
「君たち果てしなく興味がなさそうだね」
アルパヤは脱力する。
魔族たちに興味がないのも無理はない。
その中には、馬50頭を引きずることができる種族もいるし、馬より速く走れるものもいる。
その程度で、「すごい」といわれても、ピンとこなかった。
だが、1人興味を示した者がいる。
ヴァロウだ。
興味深げにキラビムを観察していた。
「出力機関は2つか?」
「お! 指揮官さん、わかる? 魔法鉱石の大欠片を2つ付けてるよ」
「それでこの重量を動かせるのか?」
「それ以上付けると、エネルギー炉の効率が悪くなるんだ。機関の連続詠唱にも雑音が入るしね」
「この回路は……。なるほど。直接駆動によって効率をよくしているのか?」
ヴァロウはふむふむと頷く。
ザガスは頭を掻いた。
「お、お前ら……。もっとわかる言葉で喋れよ」
「それはいい。――で、こんな魔法鉱石の塊が、200万の人間を殺せる兵器というのか?」
ベガラスクは眉間に皺を寄せながら、アルパヤを睨む。
その表情にタジタジになりながら、ドワーフの娘は肩を竦めた。
「そう……、見えないかな?」
「ふん。こんな見るからに弱そうなヤツが、200万の人間を殺せる兵器なはずがない!」
ベガラスクは断言する。
さすがにベガラスクの言い方にカチンと来たらしい。
アルパヤはむっと頬を膨らませた。
「じゃ、じゃあ! キラビムが弱いかどうか試してみてよ!」
「試す?」
「そうだよ。ボクがこれに搭乗して、動かすからさ。ボクとキラビムが負けたら、煮るなり焼くなり好きにするがいいさ」
「面白い……。貴様、今誰に喧嘩を売っているかわかっているであろうな。オレの名前はベガラスク。第四師団師団長にして、魔王様の副官だ」
「え? 魔王様の副官……!」
アルパヤの顔から血の気が引いていく。
いくら魔族から離れて育った世代とは言え、その副官の実力は聞いているだろう。
「撤回するなら今のうちだぞ。ま――。どうせお前たち裏切り者は助からないがな」
「ちょっと待って下さい」
アルパヤとベガラスクの間に入り、制したのはメトラだった。
「アルパヤ、今搭乗すると言いましたね」
「え? うん。このキラビムは中に入って操縦するんだ。大きな鎧だと思ってくれればいいよ」
「じゃあ、なんで今動いているんですか?」
メトラはキラビムを指差す。
皆が一斉に振り返った。
突如、頭の所に赤い光点が閃く。
すると、右手がアルパヤに向かって振り下げられた。
「危ない!!」
メトラの悲鳴が響く。
鋭い金属音が倉庫に広がった。
砂の地面に大きな穴が空いている。
その凄まじい威力を物語っていた。
しかし、そこにドワーフの死体はない。
あるのはぺしゃんこになったベレー帽だけだった。
キラビムの赤い光点が左に流れる。
その視線ともいえるものを辿っていくと、ヴァロウが立っていた。
その胸の中にアルパヤがいる。
「あ、ありがとう……。えっと……」
「ヴァロウだ。怪我はないか?」
「……え? あ、うん。うんうん」
灰色の髪を揺らす。
ヴァロウはアルパヤをそっと立たせると、キラビムに向き直った。
「おい。これはどういうことだ、娘」
ベガラスクはこめかみの辺りをひくひくさせていた。
低く唸りを上げ、牙を剥きだしている。
その表情だけで心臓が凍り付きそうだったが、今はそういう場合ではない。
「あ、ありえないよ! ボク以外の人間が動かしているとしか……」
すると、大笑がキラビムの中から聞こえてきた。
「くっはははははは! なかなか凄い力ではないか。土竜が作った割りには高性能だ!」
「も、もしかして領主様!!?」
アルパヤは叫ぶ。
メトラは目を細めた。
「まさかシュインツの領主? こんなところにいたの?」
シュインツに住む人族(主に領主の館に務めていたもの)は、ほとんど捕らえることができたが、領主1人だけが見つかっていなかった。
「こんなところに隠れているとはな」
ベガラスクは手の先から鋭い爪を伸ばす。
一直線に走ると、キラビムに向かって爪を振り下ろした。
鉄を引っ掻いたような奇妙な音が鳴る。
「なにぃ!!」
ベガラスクの渾身の一撃に対し、キラビムは一部塗装が剥がれただけだ。
ベガラスクの爪は、軽々と鋼を切り裂く。
だが、魔法鉱石は別だ。
複雑に組織が入り組み、さらに魔法的な靭性をもつ魔法鉱石は、鉄以上の硬度を持つ。
そのベガラスクに代わって走ったのは、ザガスだった。
「斬れないなら、ぶっ壊すまでだ!」
棍棒を振り下ろす。
再び甲高い金属音が響いた。
「――――ッ!」
ザガスもまた目を剥いた。
キラビムが振り下ろされた棍棒を受け止めていたのである。
「ほほ! 人鬼族の力を上回るか! これはすごい!!」
キラビムは棍棒ごとザガスを持ち上げる。
まるで人形のように放り投げた。
薄い倉庫の壁を破って、ザガスは外へと消えて行く。
凄まじい力に、その場にいた魔族たちは戦慄した。
「やめろ!!」
その前に現れたのは、アルパヤだった。
「それはボクが作ったんだ! 今すぐ下りろ!!」
「うるさい。指図するな、裏切り者め……」
「え……」
アルパヤは息を呑む。
「魔族が劣勢だとみると、人類に尻尾を振り、人類が劣勢だと知ると、魔族に尻尾を振る。土と鉄の一族が聞いて、呆れるわ!」
「ち、違う!」
アルパヤはくすんだ灰色の髪を振り乱す。
「ドワーフは自分たちの住み処を守りたかっただけなんだ。ただそれに一生懸命だけなんだ……。ホントは戦争の武器なんて作りたくなかった。けれど、ボクたちと人類を仲介した人間がいったんだ」
武器は多くの人を殺す。多くの魔族を殺すだろう。……でも、いつか戦争を殺す。
「武器を手にし、戦わなければ終わらない。そういったから、ボクたちは武器を作った。……でも、誰も心の底から望んでなんかいない! 土をいじって、身体を煤だらけにする方が、ボクたちは何万倍も楽しいんだ!」
「ほざけ! 武器を作りたくないだと!! 冗談をいうな。こんな兵器を作っておいて何をいっている」
「キラビムは元々穴掘り用の魔導機械として作ったんだ。ボクみたいにひ弱なドワーフでも、みんなの役に立てるように……」
「詭弁だな!! 自己を正当化しようとしているだけだ」
「そうだよ……。でも、そんなの……。みんなも同じじゃないか。たった今も、どこかで魔族や人間が死んでるのに……。戦争だからって、みんな諦めてるじゃないか……。ボクは終わらせたい……。たとえ、200万人の人間を殺したって。武器を作らなくていい世の中ができるなら!」
「は!! 青いな! そんな覚悟が土竜にあるのか!!」
「ボクは科学者だ!!」
罪を背負う覚悟ならとっくにできてる!!」
アルパヤは叫ぶ。
倉庫の壁が揺れるぐらいの大声で。
その瞬間、キラビムが動いた。
何か領主が絶叫している。
意味をなさない声が、空気を震わせた。
アルパヤにキラビムの腕が襲いかかる。
ゴォォォオオオオオオンンンンン!!
釣り鐘を叩いたような音が響き渡った。
アルパヤは目を開ける。
自分が生きていることに気付いた。
驚き、目を開きながら、前を見る。
黒い髪の人鬼がキラビムの腕を受け止めていた。
その手の甲が光っている。
角の紋章が、赤く輝いていた。
「う゛ぁ、ヴァロウ……」
「アルパヤ……」
「え?」
「お前の覚悟……。見事だ……!」
「あ……。う、うん……」
「だからというわけではないが……。お前の傑作を破壊させてもらう」
許せ!!
ヴァロウは魔法を唱える。
ごろりと空に暗雲がたれ込むと、青白い雷撃が倉庫を貫く。
すると、一直線にキラビムに落ちていった。
「ぎゃああああああああああああ!!」
キラビムを伝い、中の領主が電撃を浴びる。
断末魔の悲鳴とともに、肉の焼ける匂いが倉庫の中を漂うのだった。
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