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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
5章 シュインツ攻略戦

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第44話 科学者

ジャンル別8位でした。

また1歩後退!

でも、まだまだ!

本日1回目の更新です。

「魔導?」

「人馬型?」

「兵器だと?」


「キラ……ビム…………か……」


 魔導人馬型兵器キラビム。

 その前に集った魔族たちは、それぞれの種族に応じた驚き方をしていた。


 驚いた観客(まぞく)たちを見て、アルパヤは鼻の下を擦る。


「ふふん! どう? カッコいいでしょ?」


「カッコいいか?」


「どっちかというと、ダサいというか」


「オレの方がよっぽどカッコいいわ」


 魔族たちの評価は辛い。

 ベガラスクなどは、どさくさに自分の容姿をアピールする始末だ。


 魔族たちの意見を聞いて、アルパヤは眉間に皺を寄せた。


「うっ……。カッコいいと思うけどなあ。でも、見た目だけじゃないよ。こいつの力は、50頭の馬にだって勝てるんだ。機動性はまだまだだけど、改良すれば馬よりも速く走れるよ」


「そ、そう……」

「腹が減った」

「いや、見慣れてくると意外にカッコいい……」


「君たち果てしなく興味がなさそうだね」


 アルパヤは脱力する。


 魔族たちに興味がないのも無理はない。

 その中には、馬50頭を引きずることができる種族もいるし、馬より速く走れるものもいる。

 その程度で、「すごい」といわれても、ピンとこなかった。


 だが、1人興味を示した者がいる。


 ヴァロウだ。


 興味深げにキラビムを観察していた。


「出力機関は2つか?」


「お! 指揮官さん、わかる? 魔法鉱石(ミスリル)の大欠片を2つ付けてるよ」


「それでこの重量を動かせるのか?」


「それ以上付けると、エネルギー炉の効率が悪くなるんだ。機関の連続詠唱にも雑音が入るしね」


「この回路は……。なるほど。直接駆動によって効率をよくしているのか?」


 ヴァロウはふむふむと頷く。

 ザガスは頭を掻いた。


「お、お前ら……。もっとわかる言葉で喋れよ」


「それはいい。――で、こんな魔法鉱石の塊が、200万の人間を殺せる兵器というのか?」


 ベガラスクは眉間に皺を寄せながら、アルパヤを睨む。

 その表情にタジタジになりながら、ドワーフの娘は肩を竦めた。


「そう……、見えないかな?」


「ふん。こんな見るからに弱そうなヤツが、200万の人間を殺せる兵器なはずがない!」


 ベガラスクは断言する。

 さすがにベガラスクの言い方にカチンと来たらしい。

 アルパヤはむっと頬を膨らませた。


「じゃ、じゃあ! キラビムが弱いかどうか試してみてよ!」


「試す?」


「そうだよ。ボクがこれに搭乗して、動かすからさ。ボクとキラビムが負けたら、煮るなり焼くなり好きにするがいいさ」


「面白い……。貴様、今誰に喧嘩を売っているかわかっているであろうな。オレの名前はベガラスク。第四師団師団長にして、魔王様の副官だ」


「え? 魔王様の副官……!」


 アルパヤの顔から血の気が引いていく。

 いくら魔族から離れて育った世代とは言え、その副官の実力は聞いているだろう。


「撤回するなら今のうちだぞ。ま――。どうせお前たち裏切り者は助からないがな」


「ちょっと待って下さい」


 アルパヤとベガラスクの間に入り、制したのはメトラだった。


「アルパヤ、今搭乗する(ヽヽヽヽ)と言いましたね」


「え? うん。このキラビムは中に入って操縦するんだ。大きな鎧だと思ってくれればいいよ」


「じゃあ、なんで今動いているんですか?」


 メトラはキラビムを指差す。

 皆が一斉に振り返った。


 突如、頭の所に赤い光点が閃く。

 すると、右手がアルパヤに向かって振り下げられた。


「危ない!!」


 メトラの悲鳴が響く。


 鋭い金属音が倉庫に広がった。

 砂の地面に大きな穴が空いている。

 その凄まじい威力を物語っていた。


 しかし、そこにドワーフの死体はない。

 あるのはぺしゃんこになったベレー帽だけだった。


 キラビムの赤い光点が左に流れる。

 その視線ともいえるものを辿っていくと、ヴァロウが立っていた。

 その胸の中にアルパヤがいる。


「あ、ありがとう……。えっと……」


「ヴァロウだ。怪我はないか?」


「……え? あ、うん。うんうん」


 灰色の髪を揺らす。

 ヴァロウはアルパヤをそっと立たせると、キラビムに向き直った。


「おい。これはどういうことだ、娘」


 ベガラスクはこめかみの辺りをひくひくさせていた。

 低く唸りを上げ、牙を剥きだしている。

 その表情だけで心臓が凍り付きそうだったが、今はそういう場合ではない。


「あ、ありえないよ! ボク以外の人間が動かしているとしか……」


 すると、大笑がキラビムの中から聞こえてきた。


「くっはははははは! なかなか凄い力ではないか。土竜(ドワーフ)が作った割りには高性能だ!」


「も、もしかして領主様!!?」


 アルパヤは叫ぶ。

 メトラは目を細めた。


「まさかシュインツの領主? こんなところにいたの?」


 シュインツに住む人族(主に領主の館に務めていたもの)は、ほとんど捕らえることができたが、領主1人だけが見つかっていなかった。


「こんなところに隠れているとはな」


 ベガラスクは手の先から鋭い爪を伸ばす。

 一直線に走ると、キラビムに向かって爪を振り下ろした。


 鉄を引っ掻いたような奇妙な音が鳴る。


「なにぃ!!」


 ベガラスクの渾身の一撃に対し、キラビムは一部塗装が剥がれただけだ。


 ベガラスクの爪は、軽々と鋼を切り裂く。

 だが、魔法鉱石(ミスリル)は別だ。

 複雑に組織が入り組み、さらに魔法的な靭性をもつ魔法鉱石(ミスリル)は、鉄以上の硬度を持つ。


 そのベガラスクに代わって走ったのは、ザガスだった。


「斬れないなら、ぶっ壊すまでだ!」


 棍棒を振り下ろす。

 再び甲高い金属音が響いた。


「――――ッ!」


 ザガスもまた目を剥いた。

 キラビムが振り下ろされた棍棒を受け止めていたのである。


「ほほ! 人鬼族の力を上回るか! これはすごい!!」


 キラビムは棍棒ごとザガスを持ち上げる。

 まるで人形のように放り投げた。

 薄い倉庫の壁を破って、ザガスは外へと消えて行く。


 凄まじい力に、その場にいた魔族たちは戦慄した。


「やめろ!!」


 その前に現れたのは、アルパヤだった。


「それはボクが作ったんだ! 今すぐ下りろ!!」


「うるさい。指図するな、裏切り者め……」


「え……」


 アルパヤは息を呑む。


「魔族が劣勢だとみると、人類に尻尾を振り、人類が劣勢だと知ると、魔族に尻尾を振る。土と鉄の一族が聞いて、呆れるわ!」


「ち、違う!」


 アルパヤはくすんだ灰色の髪を振り乱す。


「ドワーフは自分たちの住み処を守りたかっただけなんだ。ただそれに一生懸命だけなんだ……。ホントは戦争の武器なんて作りたくなかった。けれど、ボクたちと人類を仲介した人間がいったんだ」



 武器は多くの人を殺す。多くの魔族を殺すだろう。……でも、いつか戦争を殺す。



「武器を手にし、戦わなければ終わらない。そういったから、ボクたちは武器を作った。……でも、誰も心の底から望んでなんかいない! 土をいじって、身体を煤だらけにする方が、ボクたちは何万倍も楽しいんだ!」


「ほざけ! 武器を作りたくないだと!! 冗談をいうな。こんな兵器を作っておいて何をいっている」


「キラビムは元々穴掘り用の魔導機械として作ったんだ。ボクみたいにひ弱なドワーフでも、みんなの役に立てるように……」


「詭弁だな!! 自己を正当化しようとしているだけだ」


「そうだよ……。でも、そんなの……。みんなも同じじゃないか。たった今も、どこかで魔族や人間が死んでるのに……。戦争だからって、みんな諦めてるじゃないか……。ボクは終わらせたい……。たとえ、200万人の人間を殺したって。武器を作らなくていい世の中ができるなら!」


「は!! 青いな! そんな覚悟が土竜(ドワーフ)にあるのか!!」


「ボクは科学者(とががくしゃ)だ!!」



 罪を背負う覚悟ならとっくにできてる!!」



 アルパヤは叫ぶ。

 倉庫の壁が揺れるぐらいの大声で。


 その瞬間、キラビムが動いた。

 何か領主が絶叫している。

 意味をなさない声が、空気を震わせた。


 アルパヤにキラビムの腕が襲いかかる。


 ゴォォォオオオオオオンンンンン!!


 釣り鐘を叩いたような音が響き渡った。


 アルパヤは目を開ける。

 自分が生きていることに気付いた。

 驚き、目を開きながら、前を見る。


 黒い髪の人鬼がキラビムの腕を受け止めていた。

 その手の甲が光っている。

 角の紋章が、赤く輝いていた。


「う゛ぁ、ヴァロウ……」


「アルパヤ……」


「え?」


「お前の覚悟……。見事だ……!」


「あ……。う、うん……」


「だからというわけではないが……。お前の傑作を破壊させてもらう」



 許せ!!



 ヴァロウは魔法を唱える。

 ごろりと空に暗雲がたれ込むと、青白い雷撃が倉庫を貫く。

 すると、一直線にキラビムに落ちていった。


「ぎゃああああああああああああ!!」


 キラビムを伝い、中の領主が電撃を浴びる。

 断末魔の悲鳴とともに、肉の焼ける匂いが倉庫の中を漂うのだった。


面白い! 更新マダー!

と思っていただいたら、

是非ブックマーク、最新話下欄にある評価をお願いします。

モチベーションが上がれば、更新が爆上がりします。

よろしくお願いしますm(_ _)m

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