第43話 魔導工学
ジャンル別順位が7位で、1歩後退です。
でも、まだまだ頑張ります!
本日3回目の更新です。楽しんでいただければ……!
「いやぁ~。魔族様たちが来てくれて、ホント助かったよ」
と言ったのは、アルパヤだった。
他のドワーフたちは神妙な顔をしていたのに、彼女はニコニコしている。
そしてこの発言だ。
戸惑ったのは、ヴァロウたちの方だった。
そのヴァロウが眉を顰める。
「助かった?」
「だってさ。人間って人使い荒いんだよ。納期は短い割りに、質にはうるさいし。それなのに、金額をまけろっていってくるんだよ。もうめちゃくちゃだよ。この前も、メッツァーから大量の受注があってさ」
「メッツァーから?」
尋ねたのはメトラだった。
「うん。ほら……。前に大きな反乱があったでしょ。その時に壊れた武器とかの補修とか、武器の新作とか注文が来たんだけどさ。普通なら3ヶ月かかるのに、2週間でやれっていうんだよ。みんな、何も言わないけど……。ボクみたいに助かったっていう人、結構いると思う」
「ふざけるな!」
棍棒を振り下ろしたのはザガスだ。
その横のベガラスクも鋭い視線を放っている。
「助かっただあ……。オレ様はお前らが裏切ったのを許してなんかねぇぞ」
ザガスは、アルパヤの被っているベレー帽が吹き飛ぶぐらいの怒気を放つ。
しかし、アルパヤが縮み込むことはなかった。
冷静に地面に落ちたベレー帽を拾い上げ、被り直す。
「気持ちはわかるんだけどさ。ボクは第二世代なんだ。そこのところよくわからないんだよね」
「第二世代? もしかして、あなた……。人間に支配されてから生まれたっていうの?」
「まあね。一応、話は聞いてたけど、ピンとこないっていうか……。あ、着いたよ」
アルパヤの足が止まる。
ヴァロウたちは同時に顔を上げた。
そこは大きな倉庫だった。
いや、倉庫というのもおこがましいかもしれない。
屋根は穴が空き、梁も細い。
やっと立っているのが精いっぱいといった感じだ。
ただ背が高いだけの荒ら屋という印象だった。
「ここは?」
「ボクの家さ。さ――。入って! 入って!」
ヴァロウたちを促した。
言われたとおり、中に入る。
倉庫の中は真っ暗だった。
「おい! なんも見えねぇぞ!」
ザガスが叫ぶ。
ちょっと待って、とアルパヤの明るい声が聞こえてきた。
すると突然、光が閃く。
魔法の光だ。
だが、アルパヤが魔法を唱えた様子はない。
ただ何かのレバーを下ろしただけだった。
ヴァロウは顎をさする。
「魔導工学か……」
「あ。よく知ってるね、お兄さん」
アルパヤは瞳を輝かせた。
魔導工学とは、人が使う魔法を別のもので代用させようという試みである。
魔法鉱石に魔法を閉じ込め、何らかの方法で発動を遅延をさせて、遠隔地から発動させたり、指定の時間に発動させたりする技術だ。
ヴァロウがラングズロス城を破壊した時も、この技術が使われていた。
だが、まだまだ発展途上で、知名度は低い。
高度な知識が求められるため、技術者の育成も難しい。
研鑽していけば、戦争のやり方すら変わるのに、敷居の高さが邪魔をして、国もなかなか予算が付けづらいという現状にあった。
それを積極的に取り入れようとしていたのが、人間だった頃のヴァロウなのだが、事如く上級貴族たちに邪魔をされてしまった。
訳のわからない技術に、金は出せないというわけである。
そんな高度な技術が、まさかシュインツ――しかもこんな荒ら屋で見られるとは、さしものヴァロウも予想していなかった。
そのヴァロウは質問する。
「誰に教わった?」
「前のここの領主だよ。変わった人でさ。何かと中央に楯突いて、結局脱税容疑で捕まっちゃった。たぶん今頃、本国の牢屋の中だよ。本人は『陰謀だ!』って騒いでいたけどね」
「名前は?」
「メフィタナさんだよ。下の名前は忘れちゃったけど」
「め、メフィタナ博士!!」
素っ頓狂な声を上げたのは、メトラだった。
「ああ……。あの人か……」
ヴァロウもまた額を抑えた。
「なんだ、お前たち? 知ってるのか?」
ベガラスクはギッと睨む。
メトラは目を右往左往させながら狼狽えた。
(さすがに王女時代の私の家庭教師で、ヴァロウ様の師匠に当たる人とは言えないわね)
メトラは心の中で苦笑する。
変わり者ではあったが、メフィタナは大陸一の賢者といわれていた。
本人は「古くさい」と綽名が気にくわなかったようだが、その知識量と先進的な理論や哲学は、他の追随を許さず、間違いなく天才と呼べる人物の1人だ。
その天才に天才と言わしめた人間がいる。
それが今、メトラの隣にいる人物。
ヴァロウである。
そのヴァロウは言葉に詰まるメトラに助け船を出した。
「資料で見ただけだ。変わり者らしい。自分を科学者と呼んでいるそうだ」
「なんだそりゃ?」
ザガスもまた目を細める。
「神に楯突く研究をしていると、本人は自負してる。俺も詳しくは知らん」
すると、ベガラスクはアルパヤに向き直る。
鼻から荒い息を吐き出した。
「ふん。……で、娘。オレたちに一体何を見せようというのだ。まさかこの荒ら屋を見て欲しかったわけではあるまい」
「荒ら屋なんてひどいなあ。ここはもっとも科学が進んだ前線基地なんだよ」
すると、アルパヤは倉庫の奥の方へ歩いて行く。
そこには布と縄にくるまれた大きな構造物があった。
アルパヤは丁寧に縄を外す。
衣擦れの音とともに、それは現れた。
「な、なんだこりゃ!!」
ザガスは度肝を抜かれた。
横のベガラスクも、メトラも言葉を失っている。
ただヴァロウだけが無表情にそれを見つめていた。
それは一見、人馬の形をしていた。
だが、この世に金属だけでできた人馬はいない。
しかし、それは全身を魔法鉱石製の鋼板に覆われ、人を軽々と掴めそうな腕と、長い胴、4本の足を持っていた。
肩となる部分の上には頭のようなものがあり、沈黙している。
「じゃーん。これがボクが作った魔導人馬型兵器キラビムだよ」
再びアルパヤは胸を反らせるのだった。
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