第41話 白銀の魔狼
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1歩前進です! ブクマ・評価を付けていただいた方ありがとうございます。
もう少し頑張れば、ジャンル表紙に手が届く!!
というわけで、本日1回目の投稿だあぁあああああ!!
それはまさしく疾風のようにやってきた。
垂直に立つシュインツの城壁をいとも容易く駆け上ってくる。
あっという間に城壁の上に踊り出ると、陽の光を背にしながら駐屯兵を睨み付けた。
一対の紅蓮の光が炎のように揺らぐ。
それを見て、兵たちはたちまち竦み上がった。
「何をしている! 槍兵、討ち取れ!」
指揮官は腰が引けながらも、檄を飛ばす。
城壁で待機していた数名の槍兵が、現れた魔族を見上げた。
それは白銀の魔狼族だった。
他の魔狼族よりも一回り大きい。
一切の武器防具を纏っていない。
それなのに、この魔族は矢の雨の中を突っ切り現れたのだ。
槍兵たちが囲む。
やや唇を震わせながら、槍の先を白銀の魔狼族に向けた。
すると、魔狼族は爪の先で耳を掻く。
「やれやれ……。ヴァロウの野郎はこんなヤツらに手こずっていたのか?」
「かかれ!!」
指揮官は号令を出す。
一斉に槍が白銀の魔狼族に向かって伸びた。
その先がその柔らかな毛に触れた瞬間――。
ジャッ!!
白銀の魔狼族は爪をなぎ払った。
ぐるりと回転する。
その瞬間、血しぶきが上がった。
魔狼族を襲った槍兵たちの首から鮮血が飛び出す。
一瞬にして、十名弱の槍兵が物言わぬ骸となった。
「ひぃ! ひぃいいいいい!!」
兵たちは悲鳴を上げる。
たちまち震え上がった。
しかし、彼らの悪夢はこれで終わらない。
次々と魔狼族が城壁を越えて現れたのである。
「そんな! どどどど、どうやってそんなに易々と……」
指揮官の声が聞こえたらしい。
白銀の魔狼族は少し苛立たしげに振り返った。
「あん? どうやってだと? 説明するまでもない。オレたちにとって、こんな城壁――壁の内にも入らんわ」
そう言って、爪を舐める。
指揮官はその仕草を見て、気付いた。
手、そして足の爪の鋭さを確認する。
間違いない。
爪を壁に突き立て、のぼってきたのだ。
くわえて、先ほどのしなやかな身のこなし。尋常ではない敏捷性……。
魔法は一切使わず、ただ身体的特徴と基礎能力だけでシュインツの壁を攻略したのである。
(これが魔族か……)
その常識外れの運動能力に、指揮官は戦慄する。
だが、不可解な点はあった。
どうやって、この矢の雨をくぐり抜けてきたかだ。
魔狼族は敏捷性こそ高いが、その皮膚は他の魔族と比べても柔い。
(むっ!)
その時、指揮官の視界にあるものが映る。
何も付けていないと思っていた魔狼族の腕に、何故かスライムが貼り付いていた。
そこには何本もの矢が刺さっている。
「まさか!!」
指揮官は慌てて城壁の縁に駆け寄る。
下を見た。
弓兵たちが必死に城壁を上ってくる魔狼族を撃ち落とそうとしている。
だが、魔狼族はスライムが付いた腕を盾にし、矢を塞いでいた。
「な!! スライムで矢を防ぐだと……!!」
指揮官は叫ぶ。
白銀の魔狼族の耳にも届いたらしい。
やや忌々しげに、腕に取り付いたスライムを振り払った。
「なかなか便利だったぞ。さすがに壁を上るときは無防備になるからな。それでムカベスク要塞の時には大損害を出してしまったが……。腹立たしいが、あのヴァロウの野郎が提案したこのやり方は、大当たりだったようだ」
憤然としているのに、白銀の魔狼族の声は明るい。
「さあ、覚悟しろよ、人間」
白銀の魔狼族は爪を舐める。
滴る唾液を見ながら、指揮官の恐怖は最高潮に達した。
ギュッと目をつむる。
悪夢から――現実から目を背けずにはいられない。
次に目を開いた時には、何事もなく官舎のベッドで寝ている自分を想像した。
だが、悪夢は終わらない。
聞こえてきたのは、けたたましい金属音だった。
ギィイィィイィイィイィィイィィィィイイイィィィ!!
目をつむっていた指揮官は思わず立ち上がる。
それほどの轟音だった。
また慌てて城壁の縁を掴み、音の方向を探る。
ちょうど直下を望むと、信じがたい光景が広がっていた。
「じょ、城門が……」
門の中でももっとも分厚く、中に鉄の格子をいれた南門が完全にひしゃげて、吹き飛んでいた。
余程大きな力に吹き飛ばされたのだろう。
くの字に曲がり、周辺の露店に突き刺さっていた。
「な、何が起こっているのだ?」
指揮官は悲鳴じみた声を上げる。
すると、その主犯とおぼしき男が現れた。
巨大な鉄の棍棒を肩にかけ、硬い赤髪からは2本の角が伸びている。
人鬼族である。
それもかなり大柄な……。
人鬼族は指揮官の視線に気付く。
にぃ、と牙を見せて笑った。
「ひぃいいいいいいいいいいいいい!!」
指揮官はバタバタと尻を付けたまま後退した。
目を合わせるだけでわかった。
あれは化け物だと……。
「おい……」
声をかけたのは、白銀の魔狼族だった。
爪を光らせている。
「だ、誰か……」
手を伸ばし、助けを求める。
しかし、応答するものはいない。
城壁にいた一千名以上の兵士は、為す術なくやられ、城壁に血を吸わせていた。
「どうやらお前で最後らしいな」
白銀の魔狼族が迫る。
指揮官は抵抗しない。
ただ逃げることしか頭になかった。
部下たちの骸を蹴り飛ばし、城壁の下へと降りていく。
そこにいたのは、城門をぶち抜いた人鬼族だった。
その後ろには魔狼族が迫る。
「あ……。あ、あ……」
前門に人鬼族、後門に魔狼族。
すなわち、それは死でしかなかった。
人鬼族の棍棒と、魔狼族の爪が同時に振り上げられる。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
その瞬間、指揮官を繋いでいた細い糸は、ぷつりと途切れるのだった。
面白い! 2回目はよ!
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