第39話 シュインツ侵攻
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実は、これ凄いことなんです!!(作者の人生初!)
皆様の愛に押されて、早くも本日2回目投稿だぁぁあああ!!
ルミルラは合図を送る。
するとスライヤは徐々に高度を落とし始めた。
雲を抜けると、大きな城壁が四方を囲む大都市が現れる。
ヴァルファルとは違い、所狭しと建物が並び、碁盤の目のように道が張り巡らされているのがはっきりと見えた。
その中央には、本国のリントリッド城に負けず劣らず大きな宮殿がそびえている。
大要塞同盟主都市メッツァー。
そして、その宮殿ブロワードだった。
「今日は天気がいいから、街がよく見えるわ」
ルミルラは1人呟く。
スライヤに合図を送ると、さらに高度を落としていった。
宮殿ブロワードへ真っ直ぐ突っ込んでいく。
その速度は鷹のスピードを超え、さらに伸びていった。
今にもブロワードにぶつかりそうになった時、ルミルラは大きく手綱を引く。
スライヤの巨体が大きく反り返ると、急減速した。
一羽ばたきしながら、ブロワードの大きなテラスに降り立つ。
「ここで待ってて、スライヤ」
首を軽く2回叩くと、『があ!』とスライヤは嘶き、翼を畳んだ。
従順な竜に目を細めながら、ルミルラは宮殿の中へと入っていく。
何事かと思った衛兵たちが集まってきた。
「ルミルラ様!」
慌てて敬礼する。
スライヤに無闇に近づかないように、と注意すると、自分は廊下を突っ切っていった。
あと1つで父の私室というところで、ルミルラの動きが止まる。
藍色の髪に、色白の肌。
珍しい三角縁の眼鏡を掛けた男が立っていた。
軍服を着ているが、身体が細すぎて、あまり軍人らしくはない。
「レドベン、こんにちは」
「ルミルラ様、飛竜で宮殿に乗り付けないで下さい」
「どうして? ここにだって飛竜はいるでしょ」
ルミルラは笑顔でかわそうとする。
だが、あまりうまく回避はできなかったらしい。
レドベンは眼鏡を釣り上げ、こみかみの辺りをピクピクさせた。
「父は?」
「その前に、その衣装をどうにかして下さい。いくら親族とはいえ、バルケーノ様はメッツァーの領主です。村人のような服装を着て、会えるような方ではないのですよ」
「はいはい。わかりました。ただ……ドレスだけは勘弁してね」
ルミルラはやれやれと首を振り、衣装室へと連行されていった。
◆◇◆◇◆
宮殿ブロワードにある会議室にて、メッツァー領主バルケーノは人を待っていた。
時折、空を見上げる。
強い日差しに目を細め、青い空を臨んだ。
少し奥歯を噛みながら、左足をさするような仕草をする。
その先に足はなく、お粗末な義足が付いていた。
バルケーノ・アノゥ・シュットガレンは、元々【竜騎士】であった。
空を駆け抜け、魔族や魔物たちを相棒と共に屠ってきた。
その功績は凄まじく、1度の空戦における撃墜数はいまだ抜かれていない。
しかし、どんな達人でもいつかは技が衰える。
足の怪我はその戒めであった。
それでも、身体は現役さながらだ。
60を越えた老爺とは思えないほどの偉丈夫で、胸も厚い。
もう10年以上、戦場から離れてはいるが、その覇気はいささかも衰えていなかった。
バルケーノは灰色の髪を撫でながら、振り返る。
少々苛立たしげに長い髭を撫でた。
すると、ノックが鳴る。
ギョロリと大きな目が、頬の傷と一緒に動いた。
ゆっくりと椅子に腰掛ける。
「入れ!」と相手を恫喝するような大声を上げた。
娘であるルミルラが、ようやく会議室に現れる。
バルケーノは目を細めた。
何故か娘が軍服を着ていたからだ。
「なんだ、その恰好は?」
「ドレスがイヤだといったら、これを着るようにいわれました」
バルケーノは「はあ」と息を吐く。
「お前、もうすぐ30だろ」
「いきなり女に年の話をするのは、野暮ではありませんか、お父様?」
「結婚していても不思議ではないはずだ。もう少し女の子らしくしたらどうだ?」
「お父様が睨みを利かせている限りは、誰もよってきませんわ」
またバルケーノは盛大にため息を吐く。
竜で乗り付けたこと。
服装のこと。
いまだ独身であること。
色々とツッコミどころがありすぎて、領主同士の会議のはずが、まるで家族会議のような始まりになってしまった。
「座れ……」
手を差し出す。
ルミルラは1つ断ると、自ら椅子を引いて着席した。
正面に座った娘を見据えた後、バルケーノはゆっくりと口を開く。
「呼び出された理由はわかっているな?」
「お婿さんを紹介してくれるという雰囲気ではなさそうですね」
「ふん……。南――ルロイゼンの悪魔どもの話だ」
「反対です」
ルミルラに先制される。
バルケーノは眉間に皺を寄せた。
「まだ何も言ってないぞ?」
「魔族と戦争をすると仰りたいのでしょ?」
「…………」
「ゴドーゼンとテーランで起こった反乱は鎮圧されましたが、まだ両都市の戦後処理がまだ終わっていません。本国からまだ代官すら来ていない状況で、開戦に踏み切るというのはいかがなものでしょうか?」
「この反乱が、悪魔どもが仕組んだことでも、お前はそう言えるのか?」
「なっ! 反乱が仕組まれたことだと!? 一体何を根拠に?」
「根拠はない。だが、ヤツらに時間を与えてしまったのは事実だ。反乱を鎮圧するのにかかった1月半……。我らはヤツらに何もできなかったのだからな」
そこでルミルラも気付いたらしい。
ハッと顔を上げると、顎に手を置いた。
その娘を見ながら、バルケーノは説明を続ける。
「出し抜かれたのかどうかはさておき、この間に戦力が増強されておれば、悪魔どもは一転攻勢に出てくるだろう。シュインツか、それともお前のヴァルファルか。一気にメッツァーを攻めてくるという可能性もある」
「では、軍の体勢を整えてからでも……」
反乱軍の勢いは凄まじかった。
死兵となって襲いかかってきたのである。
おかげで15000の三都市同盟軍でも、1ヶ月以上かかってしまった。
久方ぶりの人類同士の小競り合いに、精神的に病む兵が続出。
投石などによって武具が歪み、いまだ全軍に武器防具が行き渡っていない状況だ。
それでもバルケーノは、ルロイゼンの魔族たちを叩くといい。
ルミルラは断固反対した。
親子共々、1歩も退かず、議論は平行線を辿る。
「どうして、お前はそう頑ななのだ! 魔族は敵だぞ! 今すぐ叩くべきだ」
「それはわかります。ですが、まだ反乱の余波が収まらないうちに――」
「いいや! 違う! お前は魔族と戦いたくないのだ。いまだ絵空事を思っているのではないか。あの男のように!!」
「――――ッ!!」
ルミルラはうっと息を詰まらせた。
今まで的確な反論をしてきた口が、急に停止する。
唇をギュッと噛んだ。
それをバルケーノは見逃さなかった。
「まさかとは思うが、ルミルラよ。いまだお前が独身でいるのは、あの男がまだ頭の中にいるからではないか?」
「それは違います!!」
ルミルラは否定したが、バルケーノは信じなかった。
「あの男はダメだ! あれは裏切りものだぞ!!」
ヴァロウ・ゴズ・ヒューネルは! 我ら人類を裏切った!!
「彼は――――」
ルミルラは大きく息を吸い、反論しようとする。
その時だった。
大きな音を立て、会議室が開く。
現れたのはレドベンだった。
肩で息をし、額には玉のような汗を浮かべている。
慌てた様子であることは明白であった。
「何事だ、レドベン! 会議中だぞ!!」
「も、申し訳ありません、閣下。火急の知らせが入りましたゆえ」
「なんだ? 申してみよ」
「はっ……」
シュインツに敵、来襲せり!
「なっ!」
百戦錬磨のバルケーノですら、息を呑んだ。
対面のルミルラも口を開けたまま固まっている。
一瞬金縛りにかかったバルケーノだったが、一旦顎の髭についた汗を拭った。
少し落ち着いた様子で、レドベンを睨む。
「敵、とはなんだ?」
レドベンは報告書から顔を上げる。
三角縁の眼鏡の奥から強い眼光を光らせ、こういった。
「魔族です」
◆◇◆◇◆
ヴァロウの眼前に、シュインツ城塞都市が広がっていた。
その城壁の上では、兵士たちが慌ただしい様子で、防衛の準備に入っている。
ヴァロウの後ろには、魔物、あるいは魔族が控えていた。
久方ぶりの戦に心を踊らせ、爪や牙を研いでいる。
「ヴァロウ様、作戦は?」
補佐のメトラが尋ねる。
すると、ヴァロウは表情1つ変えず、こういった。
「作戦は――――ない……」
ひねりつぶせ……。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
鬨の声が上がる。
いよいよヴァロウ率いる第六師団は大要塞同盟に牙を剥くのであった。
面白い! 更新マダー! 3回目はよ!
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