第38話 飛竜
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大要塞同盟第二位の城塞都市ヴァルファル。
総人口26000人を誇る大都市である。
その城塞都市の広さは、第1位の都市メッツァーよりも大きい。
牧畜――特に軍馬などの繁殖を主産業とし、前線に送っている。
そのため広大な城塞都市にはいくつもの放牧地があり、都市とは名ばかりののんびりとした風景が広がっていた。
またここには兵の練兵場があり、若き新兵たちが汗を流している。
ヴァルファルで育った兵は、強いことはもちろんであれど、忍耐強く、また礼儀正しく育つため、度々前線の指揮官が訪れ、見学に来るほどだった。
そのヴァルファルを統括するのが、領主ルミルラ・アノゥ・シュットガレンである。
もうすぐ30に手が届こうかという年齢のルミルラは、いまだ十代の生娘のような容貌をしていた。
艶のある黒髪を後ろに束ね、大きな黒目は領主という激務にあって、輝きは衰えない。背丈は低く、前髪を子どものように切りそろえているためか、彼女を知らない人間は必ずといって、「領主様の子どもですか?」と尋ねるほどだった。
しかし、仕方ないところもある。
領主でありながら正装を好まず、馬などの世話をするために村人のような恰好をして城下をうろついているからだ。
百歩譲って恰好は良しとしても、領主が度々館を抜けられては、いくらヴァルファルの治安がいいとはいえ、護衛たちも気が気でなかった。
そんな部下の気も知らないで、ルミルラは今日も自身が管理している厩舎へ向かう。
重い扉を開けて、ルミルラは中に入った。
すると、赤い目が光る。
闇の中で蠢くと――。
「があああああああああああ!」
大きな吠声が厩舎に響き渡る。
ルミルラは反射的に耳を塞いだ。
「ごめんなさい、スライヤ。秘書がなかなか離してくれなくて」
ルミルラは闇の中を歩いて行く。
呪文を唱えると、指先に火が灯った。
それを近くにあった燭台に放つと、ぼうと厩舎の中が橙色の光に包まれる。
大きな影が天井を覆った。
ルミルラは顔を上げる。
輝く黒い眼に映っていたのは飛竜だ。
大きな翼。太い後ろ足。その先についた鋭い爪。
口は大きく、刃物のような鋭い牙が見える。
長い首の根元に鎖がつながれ、やや煩わしそうに頭を振っていた。
近づいてくるルミルラに抗議するように鼻息を荒くする。
黒髪がまるで炎のように立ち上がった。
「もう。謝ってるでしょ」
ルミルラは話しかけながら、スライヤと名付けた飛竜の頭を撫でる。
次第に落ち着いてくると、スライヤはごろごろと喉を鳴らし、主人に甘えるような声を上げた。
飛竜とは、人間が特殊な品種改良で作った生体兵器である。
魔族との戦いにおいて、人類は空戦を強いられることになった。
そのため魔族の肉体を研究し、掛け合わせることを決める。
つまり、強靱な肉体は竜人族、翼は鳥人族、内臓器官は人鬼族という具合に、それぞれの長所を持ち寄り、完成したのが飛竜である。
飛竜を開発したことによって、人類はようやく制空権を争うことができるようになったのだ。
だが、飛竜は凶暴である。
その扱いは難しい。
赤子の時から育てなければ、人間に懐くことはない。
故に、そういった育成を担う人間を【竜士】と呼ぶ。
【竜士】と飛竜は一体だ。
いついかなる時も一緒である。
その【竜士】が騎士候をいただき、【竜騎士】となり、成長した飛竜とともに戦場へと出て行くのだった。
スライヤはルミルラが育てた飛竜である。
彼女もまた領主であり、【竜士】――いや、【竜騎士】であった。
すでにルミルラは、スライヤを含め3匹の飛竜を育て、戦場に出ている。
顔は幼くても、【竜騎士】としての経験は長く、【竜の巫女】と呼ぶ者もいた。
スライヤに餌と水をやる。
お腹が減っていたらしい。
がぶがぶと水を飲み干し、あっという間に餌を平らげてしまった。
「やはりここにいましたか……」
スライヤと戯れていると、秘書が慌ててやってきた。
すると、1通の封筒を取り出す。
「召喚状です。お父上からです」
子どものような顔をしていたルミルラの顔が、領主のそれに戻る。
慎重に封を切ると、中身を確認した。
「バルケーノ様はなんと?」
秘書が尋ねる。
ルミルラはすべて目を通した後、召喚状を秘書に渡した。
「至急、メッツァーに参内せよとのお達しよ」
「急ですな」
ルミルラは首を振る。
「いいえ。そうでもありません。そろそろあるのではないか、と思っていました」
「それは――」
「おそらくルロイゼンに巣くった魔族たちについてでしょう」
「まだ反乱の戦後処理も決まっていないのにですか?」
「父は――メッツァーの領主バルケーノ・アノゥ・シュットガレンとは、そういうお方です。戦が好きなのですよ」
やや棘のある口調で言い放つ。
すると、ルミルラは手際よくスライヤに鐙を載せた。
跨がり、スライヤを拘束していた鎖を解き放つ。
「ルミルラ様……。一体、どこへ?」
「決まってるでしょ。メッツァーですよ」
「ならば、すぐに馬車を……」
「馬車よりスライヤの方が速いですよ」
ルミルラはニコリと微笑む。
美女の微笑ではあったが、当の秘書の顔は青ざめていた。
「お待ち――――」
領主を止めようとしたが、1歩遅かった。
ルミルラはスライヤの首を叩く。
その瞬間、飛竜は地を蹴り、厩舎を飛び出した。
翼を広げ、あっという間に風を掴むと、大空へ舞い上がる。
「ルミルラ様! 危険ですぞ!!」
「大丈夫。明日の朝までには帰ってきますから」
別れの言葉を口にし、ルミルラは前を向く。
やや肌寒い空気を目いっぱいお腹の中に取り込んだ。
気がつけば、雲の上だ。
青い空と白い雲しか見えない世界。
今、その領土にいるのは、ルミルラとスライヤだけだった。
「行きましょう、スライヤ」
『があああああああああ!!』
スライヤは吠声を上げると、南へと向かうのだった。
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