表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
4章 ラングズロス撤退戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/190

第32話 毒の勇者

まさかの複数投稿です。

「さすがですわ、ヴァロウ様」


 ヴァロウと一緒に魔馬に跨がったメトラが讃える。

 そのヴァロウは表情を1つ変えない。

 燃えさかる森を見つめていた。

 その中から、仕事を終えた竜人たちがやってくる。


 100名の寡兵が、5000名の騎兵隊を破ったのだ。

 大勝利といってもいいだろう。


「相手の指揮官が馬鹿だっただけだ。功を焦っていたのもあるだろうがな」


「それでも、ヴァロウ様の策なしにはこの結果は生まれなかったでしょう」


 メトラは胸を押さえ、敬服する。


「ところで、戦いになる前にヴァロウ様が言った言葉。あれはどういう意味だったのですか?」


 メトラが指したのは、ヴァロウがいった『人類軍の思い込み』という言葉だった。


「ああ。簡単なことだ。これまで魔族軍は策というものを使わなかった。いや、必要なかったといってもいい。これまで質、量ともに優れていたのだからな」


「なるほど……。魔族軍が策を使わないと思ったからこそ、騎兵部隊は誘いに乗ってきたのですね」


「これで、魔族も策を使うと思ったに違いない。次はそれを利用させてもらうとしよう」


 ヴァロウは口角を上げるのだった。



 ◆◇◆◇◆



 残存騎兵部隊は1500名。

 その中で動けるものは、半数もいない。

 一旦騎兵部隊はその後ろを行軍していた第二部隊と合流する。

 歩兵と合わせた戦車部隊である。

 騎兵隊から情報を聞き、第二部隊は速度を上げた。


 竜人族が魔族の要であることは、人類軍の中では周知の事実である。

 第一師団がいるということは、魔王が側にいるということだ。


 今、ここで魔王を討つ。

 第二部隊は奮起した。


 その時、手に重度の火傷を負った騎兵部隊の隊長が、前方で何かを見つける。


 少し小高くなった丘に、1人の魔族が魔馬に跨がった状態で、第二部隊を睥睨していた。


「あいつは――――!」


 騎兵部隊隊長は息を呑む。

 彼は覚えていた。

 紅蓮に染まる森の中で、まるで悪魔のように光らせていたヘーゼル色の瞳を……。


「お止まり下さい!」


 部隊長は、第二部隊の指揮官に懇願する。


「なんだ? 相手は魔族1匹ではないか」


「ヤツです……。ヤツが魔族の指揮官です」


「あいつが! あいつが、騎兵部隊を敗走させたのか!!」


「罠です。きっと策を巡らしているかと……」


「案ずるな。こっちは12000、中には戦車もいるんだぞ」


「ヤツは寡兵で、精鋭の騎兵部隊を壊滅寸前にまで追い詰めました。どうかここはご自重ください」


 騎兵部隊部隊長は、騎馬から下りて必死に懇願する。


 第二部隊の指揮官はすぐに判断できなかった。

 魔族が策を弄したというのは、偶然だと考えていたからだ。

 だが、騎兵隊が壊滅寸前にまで追い込まれたことは事実である。


 それに随分と魔族領に向かって突出しすぎている。

 魔王を討たなければならないとはいえ、退路も確保せずに敵領地に行軍するのはいささか危険だ。

 仮に騎兵部隊部隊長の言葉が本当で、やや遅れ気味の第三、第四部隊から分断されれば、少々厄介になる。


 ならば、第三、第四部隊を待って開戦する方が安全だろう。


「わかった。一旦ここで様子を見よう。斥候を出せ。丘の様子を探るのだ」


 第二部隊の指揮官は指示を出す。

 12000の兵たちの軍勢が、たった1人の魔族に翻弄されていた。



 ◆◇◆◇◆



 ヴァロウが丘の向こうで待機していた原隊に復帰する。

 1人で人類軍の行軍を止めた英雄を、100名の竜人族たちは讃えた。


「おお!」

「止まった!」

「ヴァロウ様が……」

「お1人で人類軍を止めたぞ!」


 魔族軍は沸き上がる。

 そんな称賛を浴びても、ヴァロウは涼しげな顔だった。


「さすがはヴァロウ様ですね。敵の疑念を逆手に取るとは……」


「相手の心理を逆手に取るのは、軍略の初歩中の初歩だ。褒められるものではない」


 疑念というのは策に引っかかった直後が、1番大きい。

 冷静な判断が難しく、「また引っかかったら」と消極的な気持ちになるからである。

 故にヴァロウは立て続けに人類を揺さぶるため、単騎で現れたのだ。


「敵はどこまで待ってくれるでしょうか?」


「動きから見て、後ろの第三、第四部隊と合流するつもりだろう。なかなか優秀な指揮官らしい。だが、今回ばかりはそれが仇になったがな」


 これで少なくとも1日、いや半日の時間は稼げる。


 それだけの時間があれば、第二師団が建設しているはずの要塞に逃げ込むことは可能だ。

 第二師団が上手くやってくれているかどうかは、さすがに確認できない。

 こればかりは、ヴァロウであろうとも祈るしかなかった。


 それに他にも不確定要素がある。

 ヴァロウにはまだ、気になることがあった。


 もう1度、人類軍の様子を見る。

 その時、歓声というよりは戸惑いの声が、人類軍から聞こえてきた。

 メトラも気になり、顔を出す。


 12000の兵が縦に割れるのが見えた。

 その間を、1人の人間が歩いている。

 重度の火傷を負い、足を引きずり、荒い息を吐いていた。

 今にも倒れそうだ。


 だが、その目は確かに敵――ヴァロウたちを睨んでいる。


「あれは『毒の勇者』! 生きていたなんて……」


 メトラは横のヴァロウを見る。

 さぞかし驚いているだろうと思ったが、ヴァロウはいつも通りだった。

 冷えた目で、ボロボロになった勇者を見つめている。


「いかがなさいますか?」


 メトラの声は震えている。

 あの爆発で完全に『毒の勇者』を仕留められたと思っていた。

 だが、彼女は生きていた。

 その憎悪を倍増させ、今まさにヴァロウに敵意を向けている。


 だが、ヴァロウは言った。


「問題ない……。すでに用意は調えてある」


「あ。まさか……。あれをお使いになるのですか?」


「その通りだ」


 ヴァロウは懐から小さな杖のようなものを取り出すのだった。



 ◆◇◆◇◆



 当代最強の勇者の登場。

 その心強い援軍に第二部隊が沸き返ったかといえば、そうではない。

 むしろ悲鳴が上がっていた。


「『毒の勇者』だ!」

「生きていたのか!!」

「ひぃい! 助けてくれ」

「おい! 下がれ! 下がれ!!」


 12000の人波が割れる。

 『毒の勇者』に花道を作るかのように、何もない一直線の道ができあがった。

 死にかけているのは明白だ。

 だが、彼女を手当しようと駆け寄るものはいない。

 そして、『毒の勇者』ヒストリアもそれを望んでいなかった。


 ただただ魔族がいる方に歩いて行く。


「勇者様、一旦手当をされてみては?」


 その時、1人の兵士が歩み寄る。

 瞬間、ヒストリアは山猫のような瞳をその兵士にぶつけた。


「ひぃ!!」


 兵士は悲鳴を上げる。

 その刹那、兵士は白目を剥くと倒れた。


 12000の兵士たちは一斉に悲鳴を上げる。

 我先に逃げようとするものがほとんどだったが、激昂した兵士の一部が彼女に槍の先を向けた。


「ゆ、勇者様、何をなさ――――」


 その兵士も次の瞬間には死んでいた。

 周りにいた20名ほどの兵が、同じく倒れ、息を引き取る。

 その骸をヒストリアは、無感情な瞳で見下していた。


「撤退せよ! 退け! 退くのだ!!」


 第二部隊の指揮官は指示を出す。

 その号令を聞いて、兵士たちは散り散りになりながら、その場を離れた。


 広い荒野にぽつんと取り残されたのは、『毒の勇者』1人だけである。


 味方が周りにいなくなっても、ヒストリアは進み続けた。

 その彼女の前に、影が伸びる。

 顔を上げると、そこには1人の人鬼が立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
↓※タイトルをクリックすると、新作に飛ぶことが出来ます↓
『前世で処刑された大聖女は自由に暮らしたい~魔術書を読めるだけなのに聖女とかおかしくないですか?~』


コミックス1巻、好評発売中です!
『叛逆のヴァロウ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~』

↓↓表紙をクリックすると、コミックポルカ公式HPへ↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

ニコニコ漫画、pixivコミック、コミックポルカ他でコミカライズ絶賛連載中!
↓↓表紙をクリックすると、コミックポルカ公式HPに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ