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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
3章 決闘編

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第22話 アイギス

「カーッ! なんだよ、そのおもしれぇイベントは!!」


 唸ったのは、ザガスであった。

 どん、と机を叩きつけ、ふてくされるように頬杖をついた。


「こら! ザガス! ここはヴァロウ様のお部屋ですよ」


 側に立っていたメトラがたしなめる。


 ここは魔王城の中にあるヴァロウの私室だ。

 魔王の副官というポジションにあるためかなり広い。

 しかし、調度品や装飾などは何もない。

 あるのは、書類の山と堆く詰まれた本だけであった。


 その中で、ヴァロウは執務をしている。

 執務室はあるのだが、本に囲まれていると落ち着くというのが、ヴァロウの言い分だ。

 逆に何もないと、作業の効率が大幅に下がるのだという。


 魔王城を空けていた間にたまった書類を確認しながら、ヴァロウは次々と決裁印を押していく。

 人類から見ると、野蛮に見えるかもしれないが、魔族社会は意外と契約社会だ。


 力を誇示するだけで動く者は少ない。

 今押している決裁印がなければ、微動だにしない種族もいる。

 こういう煩雑な仕事は、ヴァロウも好むところではない。

 軍師時代も苦手というより、嫌だった。

 魔族になって、こうした雑務から解放されると思ったのだが、現実は逆だったのである。


「大丈夫なのですか、ヴァロウ様。いえ――ヴァロウ様が負けるとは思っていませんけど……」


「ベガラスクの野郎は、口だけじゃねぇからな。ありゃ強いぞ」


 ザガスは腕を組みながら頷く。


 それもヴァロウも認める所だ。

 ベガラスクは強い。

 魔王の副官に、実力で成り上がれるほどに。


 だが――。


「心配するな。すべて――」



 俺の手の平の上だ。



 いつもの台詞を口にするのだった。



 ◆◇◆◇◆



 魔族にとって闘争とは、共通する好物(ヽヽ)である。

 己が戦うことはもちろんのこと、他人が戦うのを見るのも彼らは好きだ。

 それはどんな美酒よりも勝るだろう。


 特に誇りをかけた戦いほど、崇高で面白いものはない。


 互いが真剣になれるからだ。


 故に、副官同士の決闘と聞いた魔族たちは狂乱していた。

 魔王城近くにある闘技場の観客席は、魔族で溢れかえっている。

 地上だけではない。

 観戦者は空にもいる。

 飛竜に乗った亡霊騎士や鳥人族が、決闘の開始の合図を待っていた。


 むろん、魔王も観戦する。

 観客席の中央に特設席が設えられ、その周りを【闇の羽衣】が覆っていた。

 【闇の羽衣】おかげで、その姿を拝見することは叶わないが、観衆の声に魔王が手を振って応えるという一幕があり、闘技場はさらに盛り上がった。


 その大きな声援を受けながら現れたのは、2人の若い魔族である。


「よく逃げずに現れたな、ヴァロウ」


 ベガラスクは牙を剥きだし笑う。

 白銀の尻尾を鞭のように揺らし、地面を叩き威嚇する。

 戦いはすでに始まっていた。


 ヴァロウは何も応じない。

 ただヘーゼル色の瞳は、じっと対戦相手を見つめている。


 その2人の間に進み出てきたのは、ドラゴランだ。


「勝敗は相手を降参させるか、もしくは殺すかだ――以上」


 実にシンプルなルール説明だった。

 しかし、これが魔族の決闘である。

 しかも魔族はなかなか降参しない。

 降参すれば、一生そのそしりを受けることになるからだ。


 故に、決闘には生か死しかなかった。


 だが、それを承知でベガラスクもヴァロウも承諾した。

 魔王も、どちらかの副官が死ぬかもしれないと覚悟した上での決断である。

 そもそも魔族からすれば、この決め事は当たり前なのだ。

 人間は議論を尽くし物事を決めるが、魔族はそれを愚かだと考える。


 口で納得したところで、どうせ遺恨は残る。


 遺恨を残すぐらいなら、生を断った方がより物事が気持ちよく進む。


 それが魔族の考え方なのである。


「はじめ!」


 ドラゴランの怒号が響いた。

 同時に大きな銅鑼が鳴らされ、闘技場に響く。

 しかし、それは観客の声にかき消されてしまった。


 最初に仕掛けたのは、ベガラスクだ。

 地面を蹴った瞬間、ヴァロウに向かって走り出す。


「はぇえな……」


 観客席から見ていたザガスが唸る。

 その通りだった。

 下級魔族には、ベガラスクが消えたようにしか見えなかっただろう。


 だが、ヴァロウは捉えていた。


 ベガラスクの初撃をかわす。

 その縦の大振りからは強い衝撃波が発生した。

 触れてもいないのに、石畳を抉られる。


「ヴァロウ様……」


 見ていたメトラは、キュッと両手を握った。


 対して、初撃をかわされてもベガラスクは笑う。


「オレの初撃をよくかわしたな」


「見えていたからな」


 ヴァロウは涼しげに答えた。

 顔には一片の焦りも、恐怖もない。

 逆にその無表情が、ベガラスクを怒らせたらしい。

 魔狼族の瞳が、赤く血走った。


「ああ! そうかよ!!」


 ベガラスクは踏み込んだ。

 さらに斬撃を食らわせる。

 対して、ヴァロウはよけていた。

 かわすのは容易いが、反撃の暇がない。


 ベガラスクのラッシュに、観客たちは興奮した。

 大きな歓声が上がり、汚い言葉が飛び出す。

 【闇の羽衣】の中で、魔王の手にも力が入った。


 一方、ザガスは1杯酒を呷る。

 やや不機嫌そうに言い放った。


「ケッ! 何にも知らないヤツにはヴァロウの野郎が苦戦してるように見えるだろうな」


「どういうことですか、ザガス?」


 身を乗り出し声援を送っていたメトラが、ザガスの方に振り返った。


「あれがヴァロウの戦い方なんだよ」


「え?」


「まあ、見ておけよ」


 ザガスはまた酒を呷った。


 そして、それは現実になる。


 ベガラスクの打ち下ろしを、ヴァロウが手で防いだのだ。

 それは完全にベガラスクの動きを読んでいないとできない防御方法だった。

 しかし、ベガラスクは連撃を止めない。


 多少体勢不十分でも容赦なく攻撃をくわえてくる。


 しかし――。


 トンッ!


 涼やかさすら感じる音が、闘技場の中心で響き渡る。

 再びヴァロウが、ベガラスクの攻撃を防いでいた。

 しかも、攻撃の発生の前にである。


「てめぇ!」


 今度はベガラスクは蹴りを出す。

 しかし、これもヴァロウの足で止められてしまった。

 それでも構わず攻撃を繰り出すが、ことごとく防がれる。

 いや、攻撃の前にヴァロウによって止められてしまうのだ。


 その不思議な光景に、観客たちも目を見張っていた。

 いつの間にか、2人の攻撃の順序が逆転して見えていたのだ。


 ヴァロウが手を出すと、まるで導かれるようにベガラスクが攻撃を繰り出す。

 人類風にいえば、拳闘士と訓練士がミット打ちをしているかのようだった。


「これは……」


 メトラもまた目を剥く。

 後ろにいるザガスに振り返った。


「あれが、ヴァロウの戦い方なんだよ。相手の動きを大方見た後、その動きを読んで制する」


「ベガラスクの攻撃を全部読んでいるということですか?」


 メトラは悲鳴じみた声を上げて、驚いた。


「ヴァロウ風に言やぁ。相手の癖、微妙な筋肉の動きから察せられるのだそうだ。そのためには、しばらく相手の動きを観察しないとダメなんだとよ。オレにはさっぱりわからねぇけどな」


 ザガスは少しやけくそ気味に酒を呷る。

 すでに鼻の頭が真っ赤になっていた。


 ベガラスクの攻撃は間断なく襲ってくる。

 1発当たれば、いくらワーオーガといえど、首が吹っ飛ぶだろう。

 そんな緊張感の中で、冷静に頭を動かし、相手の動きを読む。


 まさに軍師ならではの白兵戦。


 いや、最強の軍師といわれた男の戦い方だった。


 そして、ヴァロウはずっと防御をしているわけではない。

 一転、ベガラスクの攻撃を大きく弾いた。


「なにぃ!!」


 ベガラスクは叫ぶ。

 攻撃が弾かれたおかげで、体勢が大きく歪む。

 そこにヴァロウが懐に入り込んできた。

 拳打を繰り出そうと、拳を弓のように引く。


 だが――。


「へっ!」


 ベガラスクは笑う。

 ダンッと地を蹴って、バックステップした。

 あっという間に、ヴァロウから距離を取る。


「ふん! さすがはドラゴラン様、そして魔王様に認められ、副官になっただけはあるな。……だが、オレの攻撃がお前に当たらないように、お前もオレに攻撃を当てることはできぬであろう」


 すると、ベガラスクはヴァロウの周りを回り始めた。


 速い。

 ベガラスクはさらに速度を上げたらしい。

 確かに、彼の宣言通り、これではヴァロウから攻撃を与えることは難しい。


「それは認めよう。だが、俺でなければいいことだ」


「なにぃ……!」


「いでよ、アイギス……」


 ヴァロウは呪文を唱える。

 すると、風が渦巻いた。

 淡い緑色の光を帯びながら、ヴァロウの後ろで人の形が作られる。


 薄く大きな翅を伸ばし現れたのは、風の精霊だった。


 ――――ッ!!


 城内が一瞬、静まりかえる。

 だが、一瞬は一瞬だった。


「「「「か、風の精霊だとぉぉぉぉぉおおおお!?」」」」


 魔族たちの叫声が、闘技場に響き渡るのだった。


あと、もうちょっと14000ptだ!

引き続き更新頑張ります!!

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