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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
15章 天界の騎士

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第163話 聖地防衛戦終幕

本日、コミカライズ最新話更新されております!

是非読んで下さいm(_ _)m

 操縦席の中でヴァロウは風の精霊を呼び出す。

 すでにアイギスを依り代にしていた純魔法鉱石(ピュア・ミスリル)の刀は、テガンとの戦いで折れている。

 次にアイギスが依り代にしたのは、キラビムMrkⅡだ。

 正確にいえば、その中に搭載された一対の高純度化魔法鉱石(ハイ・ミスリル)である。


 アイギスを降臨させたことによって、一気に計器が回復していく。

 魔力が溢れ出し、燐光が青白く輝いた。


「行けるか……」


 実はアイギスをこうしてキラビムMrkⅡに搭載したのは、初めてだ。

 精霊は魔力の塊のような存在である。

 その純度も、人間が精錬できる限界値を遥かに越えている。

 それをさらに魔導工学の力によって、何十倍にも引き上げるのである。

 相応の強度が必要だ。

 その最終調整は、この極北の地まで来て行われていた。


 ヴァロウが、上級貴族――天使との戦いを想定していたからである。


 その甲斐はあった。

 いや、時間と言うよりも、この今の今までキラビムを研鑽し続けた――アルパヤの執念の勝利と称しても、過言ではないだろう。


 ヴァロウが設定した納期からは大幅に遅れたが、ギリギリで間に合った。


「あとで褒めてやるか」


 ヴァロウはニヤリと笑う。


 すると、声が聞こえた。

 耳の側で鈴を鳴らしたような可愛らしい声だった。


『どうしました、ご主人様』


「アイギス、お前喋れるようになったのだな?」


『アイギスの魔力は、この機体のあらゆる部分に満ちています。機体についているかくせーき(ヽヽヽヽヽ)? というのですか。そこを通して、喋れるようです』


「ほう。そうか」


『お、おかしいでしょうか?』


「いや、良い声だ」


『あ――――ありがとうございます!』


 思いも寄らぬお褒めの言葉に、高純度化魔法鉱石(ハイ・ミスリル)の中にいるアイギスは、頬を赤らめた。


 そしてヴァロウは操縦桿を握る。

 潜望鏡を覗き込み、アルパヤをいたぶる天使に狙いを定めた。


「行くぞ、アイギス!!」


『はい! ご主人様!!』


 瞬間、アイギスを搭載したキラビムMrkⅡが発進した。


 大きく雪煙を上げて、テガンへと迫る。

 いきなり動き出した機体に、テガンの対応が遅れた。


「動力源を精霊にするだと!! 小癪な!!」


 テガンは細剣を振り上げる。

 対して、キラビムMrkⅡが持っていたのは、折れた大剣である。

 しかし――。


「アイギス!!」


『はい!!』


 アイギスの魔力が大剣に宿る。

 緑光を纏ったかと思えば、青い炎が噴き出す。

 それは暴風のように荒れ狂い、一振りの大剣となった。


「おおおおおおおおお!!」

『でああああああああ!!』


 ヴァロウの裂帛の気合いが、操縦席に響く。

 そこにアイギスの声が重なった。


 大きく振り下げた大剣は、見事天使の攻撃を払う。

 テガンは面を食らった。

 先ほどまでの出力とは雲泥の差だったからだ。


「この――――!!」


 ムキになってやり返す。

 その時、すでに天使の表情から余裕はなくなっていた。


 最短最速で機体の胴を狙った敵の刺突を、ヴァロウとアイギスが操桿するキラビムMrkⅡはあっさりと弾く。

 さらに踏み込み、がら空きになった脇に青白い魔力を纏った大剣を滑り込ませた。


「なめるな!!」


 テガンの一つ目が大きく光り輝く。

 左手を伸ばし、素手で止めようとした。

 だが、その防御は今のキラビムMrkⅡの攻撃を防ぐには、あまりに脆すぎる。


 キラビムMrkⅡの大剣に触れた瞬間、あっさりと破砕した。

 甲高い金属音に似たそれは、もはや生物の皮膚が削られるものとは違う。


「ぎゃああああああああああああああ!!」


 テガンの悲鳴が戦地を貫く。

 その圧倒的な出力に、敵味方問わず、おののいていた。

 笑っていたのは、雪の上に倒れたアルパヤだけだ。


「貴様!! 調子に乗る――――」


 テガンが反撃しようとする。

 しかし、キラビムMrkⅡの機動性能よりも、1歩も2歩も遅い。

 1手――テガンが攻撃しようとすると、ヴァロウたちは2手詰めてくる。

 次第に、美しく光り輝いていた天使の身体がボロボロになっていった。


 それでもテガンは諦めない。

 武官という役職にある者の矜持なのか。

 戦場というフィールドにおける、強い覚悟のようなものを感じた。


 テガンの外装は切り刻まれ、金属をうじゃうじゃと詰め込んだような身体が露出している。

 垂れている液体は、もはや血なのか、機械油なのかさえ不明だった。


 だが、テガンは戦い続ける。


「これで!!」


 テガンは高々と細剣を掲げた。

 雷精が唸りを上げて細剣に纏う。

 火山の噴火のように噴き出した魔力は、空を裂き、曇天を貫いた。


 ヴァロウのストームブリンガーを圧倒したあの魔法剣である。


 対するヴァロウとアイギスも黙ってはいない。

 大剣の柄を掲げ、ヴァロウは使役する風の精霊に命じた。


「アイギス!!」


『はい!!』


 アイギスは叫ぶ。

 すべての魔力を大剣に注いだ。

 青白い光が竜のように吠えると、天へと上っていく。

 その勢いは凄まじいの一言に尽きる。

 曇天の空を一瞬にして払い、極北の地に青い空をもたらし、光を与えた。


 燦々と降り注ぐ光に、ドワーフたちの技術の粋を尽くし、アルパヤの執念が結実したキラビムMrkⅡが照らされる。


 白銀の装甲は輝き、神の尖兵に相応しい。


 しかし、その操縦席に座るのは、神すら恐れた悪魔(ぐんし)であった。


「しねぇええええええええええ!! 虫けらぁあぁぁぁぁああぁあぁぁあ!!」


 テガンの絶叫が地平の彼方まで響く。

 同時に巨大な緑光が振り下ろされた。


 ヴァロウたちも反応する。

 すべての力を大剣に注ぎ、ヴァロウは1つ弁舌を振るう。


「震えよ、神よ。これはお前らを殺すための一撃だ……」


 天を衝き、地を掬い上げる魔法剣は振り下ろされた。



 ゴッド・イータァァァァアァアアアァァアァア!!!!



 ついに神を喰らうと宣言した一撃は、テガンに襲いかかる。

 天使が吐き出した魔力をあっさりとはねのけると、文字通り光が天使を喰らう。

 その中から聞こえてきたのは、今にも猛獣に食われそうになっている小動物の嘆きであった。


「ぎ、ぎゃああああああああああああああああ!!!!」


 膨大な魔法出力が放たれ、雪煙はすぐに蒸発し、白煙へと変わる。

 その中で、テガンの断末魔の叫びと思われる声だけが響いていた。

 大地が割れるのではないかという一撃は、やがて終息の時を迎える。


 白い靄がかかったような戦場の中で、不気味な赤光が明滅を繰り返していた。


 一方、キラビムMrkⅡもまた活動を停止していた。

 大剣を薙いだ状態で固まっている。

 瞬間、勢いよく蒸気が上がると、光を失い、完全に停止した。


 すべての力は放出したアイギスは、実体化する力もなくなり、大気の中に消える。

 冷却機能を最大限にしても、【神喰らい(ゴット・イーター)】の魔法出力に機体が耐えきれなかったらしい。

 一部が融解し、操縦桿が溶けてゲル状になったものが、ヴァロウの手に貼り付いていた。


 仮に人間であったならば、ヴァロウはこの操縦席の中で焼け死んでいたかもしれない。


「よくやったな。アイギス」


 一時的に消滅したアイギスを労う。

 なんとか操縦席から出ると、ヴァロウに向かってメトラが飛び込んできた。


「ヴァロウ様! よくご無事で!!」


 歓喜の悲鳴を上げる。

 すでに赤い眼からさめざめと涙を流していた。


「お前もな」


 メトラを強く抱きしめ、安心させる。

 そして、彼女を伴い、ヴァロウは誘われるように赤い光の前に立つ。

 そこにあったのは、テガンの頭の一部だった。

 哀れな姿になっても、天使としての矜持は忘れない。

 光を点滅させながらも、まるで笑っているように見えた。


「これで…………勝った…………と思う、なよ」


「お前たちこそ勝てると思うな」



 上級貴族は全員、根絶やしにしてやる……!



 その言葉に強い決意が表れていた。


 テガンは何も言い返さない。

 ただ「ふっ」と小さく嘲笑ったような気がした。


 もはや鉄くず同然となったテガンに背中を向け、ヴァロウは歩み出す。

 戦場の中心で、ボロボロになった手を掲げた。


「聖地防衛は果たされた! 我々の勝ちだ!!」


 宣言する。


 その声にザガスが反応し、ルミルラに介抱されたアルパヤが力無く手を挙げた。


「勝ち鬨だ!! 野郎どもおおおおおおおおおおお!!!!」



 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!



 聖地防衛戦は、これにて終幕した。


 人類軍の損害。

 死傷者4500名(指揮官、テガンが連れてきた増援含む)。

 残り7000名は虜囚。

 傭兵団ベヒーモスの損害は、死傷者12名。

 残りは虜囚(扱い)


 アズバライト教義勇軍。

 5400名中――死傷者76名。


 ほぼ完全勝利と言っていい内容であった。


コミカライズの方のお気に入りもよろしくお願いします。


書籍の続刊ですが、編集部の方から売上が芳しくなく、このままでは打ち切りと連絡をいただきました。


編集さん曰く、ここから売上が盛り返せば、まだチャンスはあるとのことです。


WEBだけではなく、最終的には書籍でこの作品を完結させたいと思っています。

是非書籍の方もお買い上げいただけますよう、何卒よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] オーラバトラーみたいに乗り手によって性能が大きく変わるだけかと思ったら 魔装機みたいに精霊憑くんかい
[良い点] 完 全 勝 利 とはいえ機体の損傷が激しくてしばらく出番はなさそうですが [気になる点] 傭兵達が国に戻るのであれば陣営に引き入れるチャンスにはなりえそうですね。大体、他人事と片付けるのも…
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