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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
15章 天界の騎士

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第160話 時間稼ぎ

 だが……。


 ヴァロウはすぐに逆接する。


 目の前には武官型の天使テガン。

 ヴァロウのストームブリンガーは弾かれ、刀も折れてしまった。

 大出力の魔法を打ち出すのは、難しい。

 それも相手が天使となれば、なおのことだ。


 その状況でも、ヴァロウは策はあるとした上に、こう加えた。


「だが、少々時間稼ぎが必要なようだ」


「なんだよ、そりゃ。少々ってどれぐらいだ?」


 ザガスの三白眼が目の端に寄ると、鋭い眼光を放つ。

 しかし、ヴァロウも負けてはいない。

 ヘーゼルの瞳を光らせ対抗する。


「少々だ……」


「チッ! まあ、いい……。お前の策に乗って、戦うのも悪くねぇが、まあ……こういうのもたまにはありだろ」


 ザガスは起き上がる。

 その巨躯はすでに回復を始めていた。


「ほう……。あれを食らって立てるのですか。さすがは人鬼族、大した回復力ですね」


 テガンの表情を示す物はないが、唯一顔の部分で光る赤光は、笑っているように見えた。


「へっ! 見下してんじゃねぇよ。天使だか、武官だか知らねぇがよう。オレ様は今、ワクワクしてんだよ」



 1度、やりあってみたかったんだ、差しで天使とな!!



 ザガスが地面を蹴った。

 周囲の雪をまき散らし、曇天の空へと舞う。

 その目標は当然、空にいるテガンだった。

 まさか飛び上がるなんて野蛮なことで、距離を詰められるとは思わなかったのだろう。


 テガンは少し面を食らう。


 気が付けば、ザガスの巨躯は彼の前にあった。


「オラッッッッ!!」


 拳を振り回す。

 テガンの顔面を捉えようかという速度だったが、あえなく空を切る。

 一方、テガンは翼を羽ばたかせ、軽く後ろへと退いた。


「所詮、羽のない――――」


 罵倒しようとした時、ザガスの手が伸びる。

 テガンの翼が前方へと羽ばたいた瞬間を狙って、掴んでいたのだ。

 有無も言わせぬザガスの膂力が、再びテガンを間合いに引き戻す。

 挨拶とばかりに、ザガスは頭突きを食らわせた。


 カンッと甲高い音が響き渡る。

 生物のそれではない。

 如何にも硬質そうな音であっても、ザガスは容赦しない。

 さらに1発、2発と食らわせた。


 テガンもただ黙ってみていたわけではない。


「お返しです!!」


 頭突きを返す。

 鋭くかつ甲高い音が響いた。

 ザガスの三白眼が白目を向く。

 その額から鮮血が舞った。

 ザガスの身体がゆっくりとテガンから離れる。


 だが――――。


 眼光が炎のように灯る。

 急に意識を取り戻すと、ザガスはまさしく烈火のように襲いかかった。

 再びテガンに向かって、渾身の頭突きを叩き込む。


「ぐはっ!!」


 テガンは悲鳴を上げた。

 その視界に映ったのは、鬼だ――。

 顔を朱に染め、目はつり上がり、口端を歪めた鬼の笑みだった。


「貴様!!」


 たまらずテガンは無理やりザガスを振りほどく。

 ザガスは呆気なく空中に放り出された。

 それに入れ替わるように現れたのは、ヴァロウだ。

 落ちてきたザガスを足場にして、さらに空中で加速をかける。


 一気にその距離を潰した。


 ヴァロウは拳を振り上げる。

 だが、テガンの迎撃態勢はすでに整っていた。

 細剣を構え、カウンターを用意する。

 光の如く繰り出された突きを、ヴァロウは腰を捻って回避した。

 さらに懐に潜り込む。


 ダダダッ!!


 目にも留まらぬ三連打が人体の急所と呼ばれている場所に突き刺さる。

 それもただの拳打ではない。

 魔王の副官として選ばれた人鬼族の拳である。

 その1発は尋常ではない衝撃を伴って、相手に突き刺さる。

 事実、テガンは仰け反った。


「なかなか利きますね。ですが、所詮は虫ケラの拳打です」


 テガンの空いている左手が動く。

 身体を捻り、ヴァロウの横合いから拳を繰り出した。

 ヴァロウは動きを察知してガードの姿勢を作ったが、それでも吹き飛ばされる。

 再びテガンとの距離が開いていく。

 静かに落下していくヴァロウを、天使は見逃さない。

 大きく翼を羽ばたかせ、これぞ好機とばかりに迫ろうとしていた。


 だが――――。


「魔法名『火蜥蜴(サラマンダー)』。対空射撃、はじめ!!」


 雄々しい声が響き渡る。

 直後、北側から火砲が放たれた。

 いや、それは火砲ではなく、魔法だ。

 1000人以上の魔導士による同時詠唱魔法である。


 それが北側から大きく伸び上がり、天を衝くと、弧を描きテガンに落ちてきた。


「ちょこざいな!!」


 テガンは細剣を振るう。

 一瞬にして、魔法剣を精製すると、竜の首のように迫る魔法を薙ぎ払った。

 攻撃はそれでも止まない。

 さらに細剣の先を地上へと向ける。

 北を指し示した瞬間、横へと払う。


「退避!!」


 メトラの指示が虚しく響く。

 しかし、1歩も2歩も遅い。

 瞬間、周囲の雪を一瞬にして蒸発させながら、魔法剣が雪上に突き刺さった。

 爆発が連続で起こり、爆風がヴァルファル軍を吹き飛ばす。

 ルミルラもまたその被害に巻き込まれた。


「ルミルラ!!」


 メトラの悲鳴が響く。

 だが、感傷に浸る時間はない。

 その声を聞いて、テガンは方向を変えた。


「メトラ()はそこで……。ご心配なく、あなた様を殺すつもりはありませんよ」


「なっ! どういうことですか?」


「知りませんよ。あなたのお父上にでも聞けばいいのではないですか?」


「お父様が私を――――」


 メトラは呆然と立ちつくす。

 その美しく宝石のような赤い瞳が動揺で振れる。


「興味があるというなら、あなたを王城へとお連れしましょうか?」


 顔のないテガンがニヤリと笑ったような気がした。

 空から降りてくると、そっと手を差し伸べる。

 悪魔ではなく、天使の誘いに、メトラは一層動揺した。


 だが(ヽヽ)――――。


 風に乗って、その呪唱は聞こえてくる。


「我に耳を傾けよ! こは神々の盟主。こは宇宙の総意。こは四方を恐れ、八世界において君臨するもの。こは彼、命と声を作る万物の神の中の王――。我は()なり。雷鳴を轟かせ、悪夢を憎み、ここに光あれ……」



神々の炎(アグニ)



 光が輝く。

 その瞬間、解き放たれたのは紅蓮の炎であった。

 真っ白な極北の世界を瞬く間に朱に染める。

 炎は津波となって押し寄せ、そして天使を捉えた。


「なにぃ! 神罰(Sランク)魔法だと!!」


 テガンの絶叫が響き渡る。

 その瞬間、天使は炎の中に飲み込まれた。


 眼前で呆然と目を開けていたメトラは、横から現れたキッザニアによって救出される。

 炎に包まれるかつての同胞を、メトラは少し悲しげに見送った。


 放ったのは、リーゼロッテだ。

 差し出した細剣を構えたまま、大きく胸を動かし、激しく息を繰り返している。

 Sランク魔法は魔力の消耗が激しい。

 しかし、効果は見ての通りだ。


「直撃すれば、いくら天使といえど……」


「なるほど……」


「――――ッ!!」


 リーゼロッテだけではない。

 その場にいる誰もが息を飲んだ。

 完全に直撃したはずである。

 防御も間に合っていなかったはずだ。


 なのに、炎の中から天使は現れた。

 あちこち煤けているが、ダメージが通ったように見えない。

 白い翼が憎たらしく見えるほど、美しく輝いていた。


「なるほど。そっちの団長さんは、純血種(ピュア)エルフですか。いきなり神罰魔法を撃たれて驚いたけど、純血種エルフは生まれながらにして、魔力が高いですからね」


「ぐっ!」


 リーゼロッテはまた魔法を組もうとする。


「でも、邪魔だな。君のような存在は――」


 テガンは細剣の切っ先をリーゼロッテに向ける。


「リーゼロッテ様!!」


 叫んだのキッザニアだった。

 雪の中を走ると、リーゼロッテに覆い被さる。


「キッザニア!!」


 叫んだ瞬間であった。

 テガンの細剣から魔法剣が発動する。

 大きく放たれた魔法の波動は、リーゼロッテとその彼女を守るキッザニアに向けられた。

 直後、キッザニアの背中に直撃する。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 魔法剣がみるみるキッザニアの体肌を焦がす。

 それでも決してキッザニアは、リーゼロッテから離れることはなかった。

 強い意志を持ち、渾身の力を込めてリーゼロッテを守護する。


 すると、その様相が徐々に変化を始めた。


 牙を向きだし、筋肉が隆起していくと、まるで鎧のように肌が硬化していく。

 そして、その額から1本の角が突き出した。


 その様をリーゼロッテは見ていた。


「キッザニア、お前――――」


「すみません。リーゼロッテ様」



 私はあなたを騙しておりました……。



「キッザニアああああああああ!!」


 リーゼロッテの悲鳴が響き渡る。


 そして、地獄の時間は終わり告げた。

 キッザニアは決してその場を動かなかった。

 リーゼロッテは無事だ。

 着ている鎧の端が少し溶けたぐらいだった。


 その深緑の瞳は、敵ではなく、1人の人鬼族に向けられている。

 最後に一言発し、白目を向いて気絶していた。

 だが、その目は何か安らかで、笑っているように見える。


「キッ……ザニア……」


 リーゼロッテは弾かれるように顔を上げ、周囲を見た。


「誰か! 誰か回復魔法を!! お願いだ! 彼はまだ息がある!!」


 請い願う。


 しかし、今雪原に立っている者はごくわずかだ。

 彼女が率いていた黒罪騎士は、先ほど魔法剣の直撃は避けたものの、二次的に生じた衝撃によって吹き飛ばされていた。


 メトラは雪原に尻を着け、フォービルはヴォーギンとブロルの傷の手当に追われている。

 団長の仇とばかりに、残っていた獣人たちもテガンに襲いかかるが、あっさりと魔法剣の衝撃によってなぎ倒されてしまった。


 ヴァルファル軍もほぼ動けない。


 もはやどこにも余裕はなかった。


 絶望の表情を浮かべるしかないリーゼロッテに、さらに追い打ちがかかる。

 テガンが獣人たちを血祭りに上げると、今度は細剣の先をノースドームに向けた。

 20万人の信者が暮らすという、アズバライト教の聖地にだ。


「やめなさい!!」


「くくく……。そこで見ていてくださいね」


 細剣の先に、魔法剣が集束していく。

 だが、目の前に立ちはだかったのは、2人の人鬼族だった。


 ヴァロウとザガスだ。


「おい、ヴァロウ……。策はまだか?」


「なんだ。この状況を楽しんでいたんじゃないのか?」


「屁理屈はいいんだよ。全滅エンドなんて、オレ様の柄じゃない」


「案ずるな。……策は整った――というより、間に合ったらしい」


「ん?」


 何かけたたましい轟音が背後で聞こえた。

 ノースドームの南東に森が広がっている。

 そこから凄まじい音と、雪煙を上げて、何かが接近してくる。


「速い!!」


 そう確かに速い。

 ヴァロウの足ですら、数刻は必要な距離を一瞬にして縮める。

 そして、雪煙とともにそれは現れた。


「なっ――――!!」


 天使であるテガンですらおののく。

 そもそも、その謎の物体の名前すら知らなかったのだ。


 まるで鎧そのもの動いているようだった。

 姿形に近いもので表すなら、今のテガンに近いものだろう。

 だが、スリムさやスマートさが足りない。

 テガンが軽装の騎士ならば、現れたそれは重装騎兵であった。


 白銀の――――。


「いっっっっっけえええええええええ!! キラビムMrkⅡ(マークⅡ)!!」


 聞こえてきたのは、アルパヤの声である。

 勇猛果敢にテガンの前に飛び出ると、そのまま体当たりをかますのだった。


先週のコミカライズの更新時に、

ニコニコ静画にて毎時ランキング6位、毎日ランキング10位をいただきました。

コミカライズの方も読んでいただきありがとうございます。

ここからドンドン盛り上がって参りますので、コミカライズの方もよろしくお願いします。

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