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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
14章 極雪の聖地攻防編

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第152話 読み合い

第2巻が6月15日発売が決定いたしました!

さらに追加の情報がございます。

後書きをお楽しみに!

「よう……。来ると思ったぜ」


 ヴァロウたちの前にたちはだかったのは、獣人の軍団だった。

 名は『ベヒーモス』。最強の獣人傭兵集団である。

 その中の1人が進み出た。


 雪の色と同じ毛並みを持つ白狼族だ。


 その姿を見て、ヴァロウはわずかに眉を動かす。

 変わっていなかったのだ。

 21年前、ヴァロウはヴォーギン率いる『ベヒーモス』と相対している。

 あの時のことが少し頭の中によぎる。


「あんたが指揮官かい?」


 ヴォーギンはヴァロウを指差す。

 一方、ヴァロウは冷たいヘーゼル色の瞳で応じた。


「よくわかったな。それもお得意の勘か?」


「ほう。どうやら、俺のことをよく知っているらしい」


 ヴォーギンは得意げに笑い、顎を上げて相手を見下げる。


「俺たちがここに来るとわかったのも、勘か?」


「いや、これは勘じゃない。確信だ」


「何?」


「俺はここにあんたが来ると確信していた」


 ヴォーギンは断言する。


 その言葉を聞いて、メトラは息を呑んだ。


「そんな……。ヴァロウ様の考えを読むなんて」


 これまでヴァロウの読みに外れなかった。

 まるで未来を見てきたかのように、戦況を予測し、それに対して最高の戦術を練り上げ、戦果を上げる。

 戦場はその手の平であり、将や兵はヴァロウにとっては単なる駒でしかない。

 本当にそんな感覚がするほど、ヴァロウの手際は鮮やかなものだった。


 しかし、とうとう今――。


 ヴァロウの読みを凌駕し、立ちはだかる者が現れたのだ。


 やがてゆっくりとヴォーギンは己の思考を開示する。


「違和感を覚えたのは昨日の第1戦目だ。あんたはあの時、追撃を命じなかった。人類軍は千々に乱れていたはずなのに、魔砲撃を繰り返すだけだった。もし仮に塹壕から出て白兵戦に出ていれば、もっと被害は大きくできたはずなのにだ」


 対して、ヴァロウは反論した。


「無理をしなかっただけだ。こちらは5000。そちらは10000。兵数の差がある。無理に兵を動かし、戦況を変えればどこかに綻びが生まれ、人類軍の退路を作ってしまったかもしれない。それに、南側に魔獣がいた。こちらに被害を飛び火させるわけにはいかない」


「はっ! あの魔獣があんたらの仕込みじゃない、偶然のものだと、俺たちが本気で考えてると、思ってんのか?」


「その通りだが……」


 ヴァロウの表情は少しも変わらない。

 鉄で固めたように冷たく、硬質な印象を相手に与えた。


 ヴォーギンは耳をそばだてる。

 心音に変化はない。

 ピクリとも反応していなかった。

 思わず「大したヤツだ」と呟く。


「わかった……。その話は置いておこう。だが、あんたは絶好の追い打ちチャンスを逃した。それがわざとだとしても、俺には気になって気になって仕方がなかった。これが“勘”だというなら、確かにそうだろう」


 すると、ヴォーギンは自分のこめかみを指でトントンと叩いた。


「だから、俺は仮定することにした。敵が何故追撃しなかったか? いくつか原因は考えられたが、俺は敵が気を引くために、わざと追撃をしなかったんじゃないかって思ったんだ。俺たちはここに来るまで、アズバライト教にまとまった戦力があることを知らなかった。当然、俺たちは目の前のことに集中する――――だが、それ自体がもう罠だとしたらどうだろうか? 実は、敵の狙いが聖地守護より大事なことがあるとすれば」


 心音が高鳴る。

 それはヴァロウではない。

 ヴォーギンの話を聞いていた周りのものたちの音だった。


 その音を聞いて、ヴォーギンは自分の推測が正解に辿り着こうとしているのを察する。


 思わず口を裂き、笑った。


「ああ……。やっぱりそうだったんだな。あんたの狙いは人類軍の完全な分断だ! つまり、この東へ行き来する渓谷の封鎖だろう」


 友軍敵軍問わず、息を呑んだ。


 それはヴォーギンの推測が正しいことを意味していた。


 極北と人類圏を結ぶこの渓谷は、今や西側にある前線軍との唯一の架け橋――連絡網である。

 仮にここが分断されれば、前線軍と足並みを揃えることは不可能に近い。

 前回の二正面作戦のような大規模な戦略が取れなくなってしまう。


 故に、その連絡網を確保するために、アズバライト教の従属は絶対必要だったのだ。


 一方、ヴァロウは前線軍との分断という戦略的目的と、もう1つこの渓谷を潰さなければならない理由があった。


 それは極北と人類圏の分断である。


 仮にヴァロウたちが、今戦っている人類軍聖地占領部隊と『ベヒーモス』を追い払ったとしても、東の渓谷の行き来ができれば、再び軍の侵攻に見舞われる。

 本国から再び援軍を送ることも可能だろう。


 その観点から、ヴァロウは一刻も早くこの渓谷を封鎖したかったのである。


 戦場であるはずなのに、静かだった。

 沈黙が支配する。

 耳朶を打つのは、極北の寒風が吹きすさぶ音だけである。

 いつの間にか、雪がしんしんと降り始めていた。


 ヴァロウが率いる幹部たちは一様にショックを受けていた。

 今まで看破されたことがなかったヴァロウの作戦を、答案用紙を見てきたかのようにスラスラと語ったのである。

 その言葉は、多少の差異はあれど、昨夜の作戦会議で聞いたものとほぼ同じだった。


「くくく……。かははははははは!!」


 突然笑い始めたのは、ザガスだった。

 この絶望的ともいえる状況下の中でも、笑みを絶やさない。

 いや、むしろ危機的状況であればあるほど、その表情は輝いていた。


 先頭に立ち、ヴォーギンの前に立ちはだかる。

 反応したのは、敵の隊列の後ろにいたブロルだ。

 ザガスの姿を認めると、濁った白の眼球がぐるりと動かす。


 ザガスはブロルの存在も視界に入れつつ、ヴォーギンに言い放った。


「だから、どうしたよ?」


「うん?」


「うちの上司の戦術を見抜いたからって、どうしたってんだよ? 舐めてるのか、お前ら」


 ザガスの三白眼が閃く。

 顎を上げて、ヴォーギンに睨みを聞かせった。


戦さ(けんか)ってのはな。戦術がどうとか、戦力がどうとかじゃねぇんだよ」



 最後まで立ってたヤツの勝ちなんだ!



「うちが戦術云々で今まで勝利してきたとは思うなよ、(けもの)野郎」


 実にザガスらしい言い方だった。

 その物言いに、ヴォーギンは思わず微笑む。

 ザガスと同じく、楽しそうに見えた。


「確かにあんたの言うとおりだ。俺があんたらの指揮官の考えを見抜いたところで、勝利につながらなきゃ単なる自慢話だわな。だがよ。兄ちゃん、勝てると思ってるんのか? こちとら最強の看板を掲げた傭兵集団だぜ!」


 様子見していた獣人たちが前に進み出る。

 肩を回し、あるいは得物を確認し、横一線に並んだ。


 相手は2000。それも全員獣人だ。

 対するはヴァロウ、メトラ、ザガスの魔族トリオと、400人の黒罪騎士。

 しかも、黒罪騎士は今だ戦力として未知数のところが多い。

 いくらヴァロウといえど、いくらザガスが強いといえど、切り抜けるのは難しかった。


 真綿で締められたように、刻一刻と隊全滅のシナリオが近づく。


 しかし、ヴァロウの表情は変わらなかった。

 その彼が再び口を開く。


「ヴォーギンだったな。1つ教えろ。お前に献策を授けたのは、誰だ?」


「はっ! 献策? なんのことを言ってるんだ? これは俺が考えた推測――」


「嘘だな……」


 ヴァロウは即刻否定する。

 その表情は、有無も言わさぬ迫力があった。


「確かにお前の推論は見事だ。だが、お前は経験と勘の武将タイプだ。今の話もよく出来すぎている。少し論理が飛躍している部分もある。――誰だ? お前に、策を授けたヤツは……」


「ハハッ……。これまた驚いた。あんた、やるねぇ。あいつが一目を置くだけはある。ふふん……。あんた、そうやってカマを掛けているが、本当誰なのかわかっているんじゃないのか?」


あいつ(ヽヽヽ)か……」


「ああ。今頃は、西の前線軍と合流している頃だろう。別に策がほしいといったわけじゃない。本国からここまで来るのに、たまたまあいつがいて、たまたま俺の耳に入っただけの話だ」


「なるほどな。わかった……」



 少し安心した。



 直後、ヴァロウは手を挙げた。


「全隊転進! 渓谷の中に侵入せよ!!」


「はっ!?」


 すると、ヴァロウ、メトラ、ザガス、そして黒罪騎士は転進する。

 号令通り動き、渓谷の中に逃げ込んだ。

 ひたすら崖と崖に挟まれた狭い道を進む。


「こら! 待て!!」


 その後を、ヴォーギン率いる2000が慌てて追いかける。


 しばらく走ると、かなり道が狭くなってきた。

 人が2人、あるいは3人走れるか否かというところである。

 そこに来て、ヴァロウは再び停止する。

 振り返って、ヴォーギン率いる2000を迎え撃った。


 その様を見て、ヴォーギンの額に汗が流れる。


「なるほどね……」


 狭い山道特有の現象だった。

 2000の兵がありながら、前面に2人、ないし3人も横に並ぶことができない。

 折角2000も兵がいるのに、これでは宝の持ち腐れだ。


「――――って思ってるよな!


 ヴォーギンは笑う。

 そして叫んだ。



 ブロル!!



 狭い参道をくり貫くように大熊族は現れた。

 多少友軍に被害を出しながら、ヴォーギンに呼ばれるまま前に出る。

 その濁った瞳を、自分よりも遥かに小さな人間たちに向けた。


「うろろろろろろ……」


 奇妙な吠声を上げながら、ブロルは睨む。


 対して、前に出てきたのはザガス、そして――。


「なんで、てめぇまで前に出てきてんだよ。ここはオレ様1人十分だ」


「別に理由はない。あるとすれば、それはリーゼロッテ様のためだ」


「はっ! 随分とお優しいことで。惚れてるのか?」


「そ、そんな俗っぽい気持ちなど、俺にはない。目の前の火の粉を払う。それだけだ」


「なるほど。それについては同感だ。まあ、火の粉っていうよりは、相手は火山だけどな」


 ザガスと、キッザニアが構える。

 目の前の大熊族と対峙した。


 ここに『ベヒーモス』vsヴァロウ部隊の火蓋が切られたのである。


『叛逆のヴァロウ』第2巻が6月15日に決定しました。

Web版から大幅に改稿、エピソードが追加されております。

読み応え満点となっておりますので、是非お買い上げ下さい。

村カルキ先生の美麗なイラストにも注目ですよ!


そして、ついに……!!!!!!


コミカライズが開始されます。

6月15日の前日、6月14日から配信が開始されますので、

そちらの方もお楽しみに!!

(※続報はこちらの後書き、Twitter、活動報告などで発表させていただきます)


2巻の刊行、そしてコミカライズ。

ここまでシリーズを展開できたのは、

Webから応援していただいた読者の皆様のおかげです。

引き続き更新して参りますので、書籍、コミカライズの方もよろしくお願いしますね。

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[一言] 最強だからこそ油断が生まれ隙が出るんですよね。
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