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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
13章 停戦交渉編

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第133話 魔王城騒乱

『ゼロスキルの料理番』2巻が発売されました。

是非こちらもよろしくお願いします。

 交渉日2日目が始まった。


 昨夜の騒ぎの謝罪から入った交渉は、初っぱなから火花が散らす。


 ヴァロウは停戦期間を4年にする妥協案を提示。

 一方、アルデラは交渉期限の短縮を受け入れない。

 もし2年以下となるなら、停戦交渉を続ける意味がない、と突っぱねた。


 昼の休憩を挟んだ後も、カードを切ったのはヴァロウだった。


 ヴァロウは旧魔族領の返還を白紙にし、5年の期限にこだわりをみせる。


 しかし、アルデラはそれすらも突っぱねた。

 停戦交渉破棄をちらつかせながら、交渉を優位に進める。

 これは昨夜の騒動が響いていた。

 魔族側は交渉をする気があるのか、と言われれば、交渉を持ちかけた側としては、立つ瀬がない。


 そんな中でもヴァロウは様々なカードを使い、譲歩を引き出す。

 だが、さすがは王国の『盾』と呼ばれた男である。

 頑として受け入れなかった。


 そして、2日目は進展なく、平行線のまま終了する。


 結果的には王国の『盾』の堅牢さを見せつけられる形となった。


「どういうことですか、ヴァロウ殿! やられっぱなしではありませんか?」


 当然、交渉後に行われた副官会議でも、進展しない交渉のことがやり玉に上がった。

 ロドロアンは気を吐き、ヴァロウを追い詰める。

 すでにヴァロウの醜態は文民派を通して、魔王城に全体に広まっていた。


 元々最年少で副官になったヴァロウには、味方よりも敵が多い。

 副官筆頭のドラゴランと第一師団の庇護にあるとはいえ、その実力を懐疑的に見る目は決して少なくない。

 文民派ではなくとも、ヴァロウの副官交代と交渉の決裂を望む声は、徐々に広がり始めていた。


 さしものヴァロウもぐうの音も出ないという感じらしい。

 ロドロアンの声に、一切の反論はなく、ただ腕を組み、聞いているのか聞いていないのかわからない態度を取り続けていた。

 そうしてロドロアンが退出する。

 ヴァロウ、ドラゴラン、ファーファリアだけが会議場に残った。


「相変わらずよく回る口だよ」


 ファーファリアは息を吐く。

 しばしロドロアンが出て行った出口を睨んでいたが、振り返って席に座るヴァロウの方を向いた。

 その眼光の輝度は、ロドロアンを睨んでいた時とさほど変わらない。

 むしろより鋭く磨き上げられていた。


「――で、本当に大丈夫なんだろうね、ヴァロウ?」


「ご心配なく……。すべては計画通りです」


「あの黒助にあそこまで言われるのがかい? 言っちゃあなんだけどね。あいつの意見には一理ある。このままだと人類に足下を見られるだけだ。停戦交渉を続ける意味はないよ」


「交渉は続けます」


「ヴァロウ!!」


「待て。ファーファリア」


 諫めたのは、ドラゴランである。

 だが、ファーファリアは待たなかった。

 副官筆頭にガンを付ける。

 恐ろしい迫力だ。

 並の魔族なら、その場で泡を吹いて、卒倒するだろう。


「待たないね。あんたが、ヴァロウを擁護するのはわかる。魔王様直々に託されたんだからね。だが、あたいは違う!!」


「何が言いたい……」


 ドラゴランは目を細め、睨む。

 すると、ファーファリアは椅子を蹴った。


「仮にヴァロウの副官交代という声が大きくなった時、あたいはヴァロウを降ろす方に付くよ」


「ロドロアンと手を組むのか?」


「違う! あたいはあたいの意志で、ヴァロウの首を切る。そう言ってるのさ」


「副官の解任は、魔王様のお許しがなければ……」


「今、魔王様は眠りにつかれている。現状、いつ起きるかわからないんだ。その前に誰かが、そこの坊やの暴走を止める必要がある。本来、それはあんたの役目だが、今回はあたいが引っ被ってやる――そう言ってんだよ」


「誰も頼んでおらん! そんなこと――!!」


 ついにドラゴランは椅子を蹴った。

 100年以上、副官の席に着く2人が、竜虎のように睨み合う。

 血で血を洗うような闘争が始まるかと思ったが、先に引いたのはファーファリアであった。


 くるりと振り返る。さっきロドロアンが出て行った入口の方を向いた。


「ドラゴラン……。わかっていると思うけど、このままじゃ魔族は割れるよ。誰かが意志を統一しないと、内側から食われることになる」


「わかっておる」


「なら腫瘍は早めに取り除くことだね」


 パタンと扉が閉まった。

 ドラゴランは怒らせた肩をしぼめ、息を吐く。


 たった今ファーファリアが出て行った扉を見ながら、ドラゴランはさらに深いため息を吐いた。

 そして、自分の子どもと言っても差し支えない若い魔族を見つめる。


「ヴァロウよ。今回ばかりは旗色が悪いのではないか?」


 正直、ドラゴランもヴァロウに対する期待を失いつつあった。

 ここまでヴァロウに良いところがない。

 本人は計画通りというが、どう見ても相手の交渉役に押されているように見える。


 そもそもこれまでヴァロウが、その知謀を発揮していたのは、血を血で洗うような戦場だけだ。


 しかし、今回は違う。

 テーブルの上である。

 それもまた戦場ではあろう。

 が、やはり向き不向きというものがあるものだ。


 コンコン……。


 ノックが響く。

 自然と竦んでいた首を伸ばし、ドラゴランは「誰か?」と尋ねた。

 すると、軽やかな声が扉の向こうから聞こえる。


『メトラです。ヴァロウ様にご報告したいことがありまして』


「会議の最中だぞ」


「いえ。ドラゴラン様はどうか彼女をお通しいただけないでしょうか?」


「む?」


 ドラゴランは長い首を捻る。

 やや憤然としながらも、メトラの入室を許可した。

 一礼し、ヴァロウの元へとやってくると、耳打ちする。


「なんだ? わしに報告できないようなことか?」


「いえ。俺から報告させていただきます」


「ん? どんな報告だ」


「明日起こることをです」


 ヴォロウの口角が静かに釣り上がった。



 ◆◇◆◇◆



 交渉3日目。


 アルデラはあてがわれた客室のベッドから飛び起きた。

 自然とベッドの下に潜り込み、頭を抑える。

 起きたばかりでまだぼやけた眼を、周囲に放った。


「なんだ?」


 すると――――。



 どぉおおおおぉおぉぉぉおぉおぉおぉおぉおぉおんんんん!!



 爆発音が鳴り響いた。

 壁が軋み、天井からは埃が落ちてくる。


「近くもないが、遠くもないな」


 アルデラは推測する。

 こういうのは長年の勘でわかるのだ。

 震動からして、階上からだろう。

 耳をそばだてると、何か(とき)の声のようなものが響いた。


「人類軍が僕たちを救出しにきてくれた? ――なわけないか……」


 アルデラは苦笑する。

 人類軍にそんな無茶をする人間はいない。

 軍を送るぐらいなら、2人の人間の犠牲など安いものだと思う方が、大勢を占めているだろう。

 殉職した2人の肖像画をかかげて、戦意を呼び起こす方がよっぽど有益だと判断するに違いない。


「そう言えば、1人馬鹿がいたっけな」


 アルデラは髪を掻く。

 頭の中でおぼろげに映る王国の『剣』といわれた騎士の姿が映った。


 ともかくこのままの恰好はまずい。

 今起こっている事に関しては、おおよそ見当が付いているが、まずは状況を把握しなければならない、とアルデラは動いた。


 簡単に身支度を調え、慎重に部屋の扉に近づいていく。

 アルデラがノブを捻る前に、扉が開いた。

 慌ててアルデラは後退する。

 現れたのは、赤い髪を逆立てた人鬼族だった。


 チラッと見ただけだが、確かヴァロウの部下の1人だ。


「お! いたいた……」


 黄ばんだ歯に、獰猛な犬歯を見せびらかせ、人鬼は笑みを讃えて部屋に入ってくる。


「君は……」


 アルデラは自然と距離を取った。

 相手に殺気はないことはわかったが、それでも一種の恐怖感がある。

 昨日まで彼が交渉の席や、客室に現れなかった人鬼が突然部屋に押しかけてきたのだ。

 警戒するなという方が無理がある。


「確かヴァロウの部下の?」


「ああ……。一応名乗っておくか。オレ様はザガスだ」


「ザガス? そうか。……なら、教えてくれ。今、何が起こっている?」


「手短に言うと、喧嘩だな?」


「喧嘩? もしかして、城の中で内戦が起きてるのか?」


「喧嘩も内戦も同じだろ」


 きょとんとザガスは言葉を返す。


 アルデラは反射的に蹲りそうになった。

 ヴァロウの部下とは思えない大雑把ぶりだ。


「魔王城では、こういう喧嘩は日常茶飯事なのかい?」


「ここまで大規模なのは、この城に移ってからは初めてだな」


「気のせいならいいのだが、君は随分楽しそうだね」


「かかか……。そう見えるか? 城の中の喧嘩も、戦場の戦闘もオレ様はどっちも好きだぜ」


「そうか。――で、君は何をしにきたんだ?」


「うちの上司の命令でな。あんたを保護しにきた」


「やっぱり狙いは僕か……」


 なんとなく予想はしていた。

 魔王城にいるとひしひしと伝わってくる。

 人類に対する際限のない憎悪、殺気……。

 彼らはまだ何もしていないのに、その空気と雰囲気に乗ったものは、もはや呪詛に近かった。


「あんただけじゃねぇ。うちの師団長もだ」


「ヴァロウも……? 君の上司は、そんなにも人気がないのかい?」


「あいつが好きっていうヤツの方が、どうかしてるぜ」


「かく言う君はどうなんだい?」


「嫌いだね……。でも、好きなところもある」


「へぇ……。どんな?」


「匂いさ」


「匂い……?」


「あいつからは誰よりも血なまぐさいに戦場の匂いがするんだ」


「だから、付き従っていると……」


「ああ。だから、大人しくしてくれ。今は、ドラゴランの旦那率いる第一師団が、暴動を収めているが、少々数が多い。突破してくるヤツもいるだろう。だから、あんたを安全な場所に移送しろ。それが上司のお達しだ」


 状況は理解できた。

 いや、完璧というわけではないが、このザガスという魔族が、今すぐ自分をどうかするというわけではない――ことだけはわかった。


 この後、どうなるかは、さしもの王国の『盾』も検討が付かない

 しかし、今は付いていくしかアルデラには選択肢がなかった。


「ちょっと待ってくれ。もう少し身支度を……」


「早くしろよ! そろそろ――――いや、遅かったか……」


「え?」


 突然、入口に長い影が伸びる。

 のそりと部屋の中に入ってきたのは、魔狼族だ。

 それも普通の魔狼族ではない。

 通常は黒や焦げ茶色が多いのに、その魔狼族だけは白銀の体毛をしていた。


 さぞかし戦場で見れば、目立ったであろう。


「第四師団師団長ベガラスク……」


 アルデラは息を飲む。

 彼は前線軍総司令官の地位にいる。

 むろん敵の主立った将校の顔と名前は頭に叩き入れていた。


 ベガラスクは入口の前に立ちはだかる。

 逃がさない、とばかりに仁王立ちしていた。


「よう、ベガラスクの旦那……。悪いが、そこを通してくれねぇか」


 実は、もうベガラスクの身体からは殺気が放たれていた。

 アルデラですらおののく気迫が、もうそこにある。

 この時、差しなら絶対負けると、アルデラは確信した。


 一方、ザガスは笑っていた。

 むしろ楽しんでいるように見える。


「そうはいかん。その男を引き渡してもらうぞ」


「イヤだって言ったら?」


「力尽くでも――」


 ザガスの口端がますます歪んでいく。

 今、人類の前で盛大に魔族たちが仲間割れをしようとしているのに、ザガスの表情は明らかに輝いていた。


「くかかかかかかか!!」


 奇妙な声を上げて、ザガスは笑ったというより吠えた。


「そりゃあ願ってもねぇ。ベガラスクの旦那」



 あんたと戦うためなら、オレ様は意地でもこいつを渡さねぇぞ。 


ザガスさんが楽しそうで何よりw


いよいよ来週1月15日に書籍版が発売されます。

Web版よりもパワーUPした第六師団の活躍を是非ご覧下さい。

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