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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
13章 停戦交渉編

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第132話 暗躍

とうとう1週間前となりました。

書籍版よろしくお願いします。

 新魔王城ゲーディアは地下にあるが故に、夜も昼間もない。

 また魔族のほとんどが夜行性で、暗闇を好む。

 だから、外が夜になっても、活発に動き回る魔族が多かった。


 しかし、中には夜に生活する上で、光源を嫌う種族もいる。

 そうした種族の配慮もあって、魔王城は昼間よりも幾分薄暗くなるようになっていた。


 その闇に紛れるように1つの影が揺れている。

 黒のローブに身を包み、城の地下へと下りていっていた。

 気配の断ち方は見事で、夜番のガーゴイルの脇を抜け、種族の中でも位の高い魔族の部屋が連ねる区画に入る。


 辺りを窺った後、影は滑り込むようにして、ある部屋の中に入室していった。


「遅かったな」


 声にフードを被った侵入者は、びくりと肩を振るわせる。

 ゆっくりと振り返ると、蝋燭の火の向こうに、笑みを讃えたダークエルフが座っていた。

 滑らかなナイトガウンを着用し、その手には果実酒が入ったグラスが収まっている。


 部屋に入ってきた怪しい者を前にして、態度を改めることはなかった。


「ふぅ……」


 息を吐くと、フードを取る。

 現れたのは、人類側――犬牙族の女騎士だった。


「誰にも見つからなかっただろうな、レイリー」


「心配するな。護衛任務よりも、潜入任務の方が得意でね」


 蓮っ葉な声が部屋に響く。

 そう。彼女の名前はレイリー・ゴー・レプリガンド。

 アルデラの護衛役である。


「お前の主人には、まだ我々の関係を見抜かれていないな」


「主人? ああ、あの変人(アルデラ)のことかい。大丈夫だ。想像すらついていないだろうね。魔族と人間が手を結んでいるなんてさ」


 レイリーは肩を竦める。

 フード付きのローブを側にあった椅子にかけた。

 魔法で【鑑定】をし、椅子に何か仕掛けがないことを確認した上で、どっかりと腰掛けた。


 そして持ってきた水筒の栓を捻り、喉を潤す。


 明らかに目の前の魔族を信用していない所作である。

 だが、ダークエルフ――ロドロアンは気にも留めなかった。

 話を続ける。


「優秀な指揮官だと聞いているが……」


「噂では私も聞いているが、噂は噂さ。少なくとも私はそうは思わない」


 レイリーはムッと顔を顰める。

 交渉や、その後の休憩時間において、レイリーは怒ってばかりだった。

 そのすべてが打ち合わせにないことばかりだ。

 レイリーはアルデラの真意を測りかねていた。

 彼の狙いを探るのも、彼女の仕事の1つでもある。


「それで? 危険を冒してまで、今このタイミングで接触した理由はなんだね?」


「確認さ」


「確認?」


「私たちの友情の……」


 レイリーは目を細めた。

 鋭い青の三白眼が目の前のロドロアンを射貫く。

 そのロドロアンはゆっくりと背もたれから身体を持ち上げた。

 やや前屈みになるが、その口から漏れてきたのは笑声であった。


「ははははは……。人類と魔族の友情か。面白い表現もあったものだな」


 たまらずロドロアンは顔を片手で覆い、引きつった声を上げる。

 ヒーヒーと息を切らしながら、革張りの椅子の上で暴れ回った。


「私は真剣に聞いているんだよ」


「わかった。わかったよ、レイリー。心配するな。計画は順調だ」


 ロドロアンは余った笑気を吐き出しながらも、答えた。


「ほう……。今日あった襲撃も計画通りか?」


「事前に通達していたはずだぞ。我々の目的は今回の交渉を破断させ、魔王の副官の1人――第六師団師団長ヴァロウの責任を追及し、失脚させることにある。ある程度の演出は必要……。そう話しておいたはずだが」


「ならばそのヴァロウ一派の魔族に、我々が救われたのはお前のシナリオの内か?」


 ロドロアンの眉宇はピクリと動く。

 ギリッと奥歯を軋ませた。


 そこにレイリーが畳みかける。


「お前の計画はすでに、あのヴァロウという副官に漏れているのではないか?」


「だとしたら、どうするつもりだ? 私の首を差し出して、すべてを暴露するか? そうなれば、わかっているのか。お前の任務も完遂できなくなるぞ」



 いいのか? 魔王様の首を取れなくても……。



 ロドロアンはニヤリと笑う。

 まさに悪魔のようにである。


 身を乗り出して詰問していたレイリーは、椅子に座り直した。


 2人の関係性は、この停戦交渉前から存在した。

 ロドロアンの文民派の中には、アズバライト教の信者がいて、その信者を介して人類側に今回のことを持ちかけたのである。


 すなわち、ロドロアンは副官の椅子を……。

 人類は魔王の首を手にするために――。


 実は、人類との停戦交渉がかなり早く進んだ理由は、ここにあった。


「手はずは……」


「整っている。明日には決行できるだろう」


「明日? 随分急だな」


「このかび臭い魔王城にもう少しいたいのなら、明後日でも3日後でも」


「わかった。お前の言うことを信じよう」


 レイリーは喉を鳴らし、言葉を飲み込む。

 まるで自分に言い聞かせているようだった。

 一方、ロドロアンは貼り付いた笑みを引っ込めるわけでもなく、側にあったグラスに果実酒を注いだ。


「我々の友情に……」


 ロドロアンはグラスをレイリーに差し出す。


 レイリーはしばし不動の構えであったが、最後にはグラスを受け取った。


 互いにグラスを掲げると、一気に煽る。

 ふーと息を吐いたレイリーは、意外な美酒の発見に驚くのだった。


ちょっと短めだったので、なるべく早めに更新するつもりです。


明後日には『ゼロスキルの料理番2』が発売されます。

異世界チーズフォンデュをどうぞ召し上がり下さい。

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