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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
13章 停戦交渉編

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第125話 恩賞

後書きに大事なお知らせがございます。

最後までお楽しみいただければ幸いです。

 ヴァロウは自分の執務室に辿り着く。

 両扉が開くと、中で待ち構えていた部下たちが一斉に頭を垂れた。


『お帰りなさいませ、ヴァロウ様』


 声を揃える。

 商人ペイベロ。

 海の魔物ウルリカ。

 ドワーフ族の娘アルパヤである。


 それぞれには、第六師団の中で役職が与えられていた。

 財務・経済担当のペイベロ。

 海上防衛兼食糧調達担当のウルリカ。

 科学(とががく)・土木担当のアルパヤという陣容である。


 そこにさらに、補佐官メトラ。

 武将ザガス。

 参謀兼竜騎士部隊隊長ルミルラ。


 そして、ルロイゼン城塞都市に残るその領主代行エスカリナだ。


 ヴァロウは執務室の椅子に腰掛ける。

 6人の幹部が整列した。


 思えば、最初はメトラと2人だけだった。

 そこにザガスが加わり、難攻不落のルロイゼン城塞都市を落とし、旧同盟領を手に入れたことによって、さらに倍の幹部が揃った。


 今やヴァロウの下には、7人の幹部がいる。

 数こそ少ない第六師団だが、そのどれもが分野に秀でた専門家たちばかりだった。


 むろん、ヴァロウは満足していない。

 油断もしていなかった。

 自分が理想とする第六師団からは、まだまだ程遠い。

 今後も、精力的に師団の数を増やすことを考えなければならなかった。


 そのヴァロウは執務室に入って、開口一番に言い放つ。


「ペイベロ、今回はよくやってくれた。お前が本国国内で呪いの武器を流通させたおかげで、一兵も死なせることなく勝利できた。俺にできる幅は少ないが、恩賞を取らせる。何か望みはあるか?」


 おお、と執務室がどよめく。


 怜悧冷徹なヴァロウではあるが、恩賞を出し惜しみすることはしない。

 事実、新魔王城ディーバの築城に尽力したアルパヤには、彼女が望んでいる魔導人馬型兵器キラビムの予算を付けた。

 こうした恩賞が、部下のやる気を引き出させていた。


「商売をさせていただくことが、一番の恩賞ですので特にはありません。ただ――最近、魔族と商売することに興味を持つ商人が現れました」


「魔族と商売……? ペイベロ、あなたの正体がバレているのではありませんか?」


 メトラは眉間に皺を寄せて、詰問する。


 ペイベロは肩を竦めた。


「それはとっくの昔にですよ、メトラ様」


「な――――」


「ですが、こうして普通に商売ができているでしょ? 私が魔族に荷を卸しているとわかって、商売しているんですよ、その商人たちは」


「なるほどな」


 ヴァロウは机を指で叩きながら、1人納得した。


「本国は今や戦費が重なり、不景気だ。加えて、大要塞同盟という上得意がなくなり、さらに前線軍と分断されたことによって、そっちに武器を卸せなくなってしまった。二重、いや三重苦というわけか」


「さすがのご慧眼ですな、ヴァロウ様。それならば、魔族と商売した方がいいと考える商人も少なくない。命さえ保障してもらえるなら、恭順すると申す者もいるほどです」


 ヴァロウは少し考える。

 その横で、やはり浮かない顔をしているのは、メトラだった。


「危険ではありませんか。本国から呪いの武器を送る可能性も。……食べ物とて、安心して食べられませんよ」


「商品の品目を絞られてはいかがでしょうか? さしあたって、材木とか」


 ヴァロウは口角を上げる。


「ふん。ペイベロ……。商人の話をしたり、本国の景気の話をしていたが、要は最初から木材を魔族に売りつけたかったのだろう」


「ははは……。バレましたか」


 ペイベロはペロリと舌を出す。

 すると、ルミルラが肩を竦めた。


「魔族に売った材木のうち、あなたの懐にいくら入るんです? ペイベロさん」


「まさかあなた! 賄賂を!!」


「メトラ様。賄賂なんて人聞きの悪い。ただ魔族と商売するのに、許可証を発行しているだけですよ」


 メトラはカンカンだ。

 人類側から木材を売らせて、ペイベロはその一部を懐に入れようとしていたのだ。


「良い。ペイベロの商売には口を出さない。それが最初の約束だからな」


「覚えていただけていて、光栄の至りです」


 やや演技っぽく、ペイベロは恭しく頭を下げた。


「しかし、ヴァロウ様」


「影でこそこそ金を摘まむようなら、それは賄賂と言えるだろうが、上司の前で堂々と賄賂と認めたならば、それは賄賂とは言えない。許可証云々も、商売の方法としては間違っていないのだからな」


「ご理解いただき重ねて感謝申し上げます」


「しかし、ペイベロ。そんなに金を貯めてどうするのだ? 他にも俺の知らないところで、金を貯め込んでいるのだろう。なのに、散財しているようにも思えないが……」


「貯めるだけ貯めて、大きく使うのが私の信条でして」


「ならば、何を買う気だ?」


「さしずめ旧同盟領をすべていただくというのはどうでしょうか?」


「あなた、何を言っているの??」


 メトラは慌てた。

 さっきから怒りっぱなしだ。

 元王女はふーふーと猫のように息を吐き出した。


 一方、ヴァロウは口角を上げる。

 メトラと違って、少し楽しんでいるようだった。


「さすがに、旧同盟領を売ることはできないな」


「ならば、値札が付くまでお待ちしますよ」


「ふん。忍耐強いな。お前は商人より、政治家の方が向いてそうだ」


 ヴァロウはペイベロを下がらせる。

 勿論、彼の提案は了解した。

 魔族側から見ても、メリットが大きいからである。


「ペイベロさん、ありがと」


 列に戻ってきたペイベロに、そっと耳打ちしたのはアルパヤだった。


 実は、材木を1番欲しがっていたのは土木担当のアルパヤなのだ。

 現在、旧同盟領は建材が圧倒的に不足していた。

 ルロイゼン城塞都市及び疲弊した各都市の復旧、新魔王城ディーバも一部未完成である。


 それを指揮するのが、アルパヤ率いるドワーフたちだ。


 だが、通常の土木や建築に加え、建材の入手、加工まで行うには、さすがのドワーフたちも手が回らない。

 困っていたアルパヤに、ペイベロが手を差し伸べたというわけだ。


 むろん、ヴァロウも気付いている。

 だからこそ、了承したのだ。


「礼には及びません。私としても、良い商売ができたので」


 いい顔で微笑むと、ペイベロはぐっと親指を立てた。

 その表情を見ながら、アルパヤも控えめに親指を立てる。


 すると、声が聞こえた。


「アルパヤ」


「は、はひぃ!」


 ヴァロウが呼ぶ声が聞いて、アルパヤは背筋を伸ばす。


「ご、ごめんなさい。復旧が遅れてて。建材が届いたら、すぐに――」


 アルパヤは頭を上げる。


「別にその件は謝らなくていい。建材を十分に確保できてなかったのは、俺の落ち度だ。その件は、ペイベロと一緒にうまくやれ」


「う、うん……。じゃなかった、はい。ヴァロウ様」


「それよりもだ。キラビムの進捗はどうなってる?」


「あ。それはもうすぐだよ」


 アルパヤの目が光る。

 先ほどまで作業進捗の遅れを気にしていたドワーフの姿は影を潜めてしまった。


「わかった。追加の仕様を送る。あと、1ヶ月でなんとかしてくれ」


「い、1ヶ月?」


 恐る恐るヴァロウから提出された書類を受け取る。

 その場で目を通すと、たちまちアルパヤの顔から血の気が引いていった。


「か、寒冷地……仕様……」


「次の戦さが寒いところになりそうだからな。それを逃せば、実戦投入は数年先になる。お前としても、そろそろ実戦でデータを取りたいところだろう」


「そ、それはそうだけど……。1ヶ月っていうのは……」


「無理か?」


 ヘーゼル色の瞳が光る。


 アルパヤは思わず「いひぃ!」と変な悲鳴を上げてしまった。


「が、頑張るよ……」


 ついにはがっくりと項垂れる。


 一方、戦さの話を聞いて、色めきだったのはザガスだ。


「戦さか! 今度はオレ様をワクワクさせてくれるんだろうな、ヴァロウ」


「それは相手に言ってくれ。向こうの陣容がわからなければ、俺も答えようがない」


「私からもいいですか、ヴァロウ様」


 手を上げたのは、ルミルラである。


「戦さをするのは構いませんが、もう少し戦力を増やすことはできませんか。たとえば、また第四師団を共闘するとか」


「第四師団との契約は、旧同盟領を攻略するまでだ。それに、今ベガラスクが俺たちに加勢してくれる公算は薄い」


「先ほどの文民派ですね」


 ルミルラは眉間に皺を寄せる。


「ちょっと見損ないました。ベガラスクさんは、ああいう手合いとは手を結ばないと思っていたので。もっと直上的な魔族かと」


「ヤツにも色々あるのだろう。さて、メトラ。お前に頼みがある。ルミルラとともに、ある人間を連れてきてほしい」


「私とルミルラでですか?」


「今、人間と仰いましたね。いいんですか? 魔王城に人間を招いて」


「構わん。そもそもそいつは、魔族に危害を加えるような者ではない」


「一体、誰ですか、ヴァロウ様?」


 メトラが尋ねる。


 再びヘーゼル色の瞳が光った。



 アズバライト教の神官を連れてきてくれ。


ご許可いただきましたので、ご報告申し上げます。

この度、『上級貴族様に虐げられたので、魔王の副官に転生し復讐することにしました』が、


『叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う』


と改題されまして、サーガフォレスト様より1月15日に発売することが決定いたしました。

イラストは『シャバの「普通」は難しい』シリーズの村カルキ先生に担当いただきました。

近いうちに、表紙の方も発表できると思います。

村先生の独創的で、耽美な『叛逆のヴァロウ』の世界をどうぞ楽しみ!!


内容の方もさらにパワーアップしておりますので、そちらも是非チェックしてくださいね。


そして、かねてより予告しておりましたが、

書籍化に伴い、タイトルを上記の内容に変更させていただきます。

次回更新予定日である12月19日には変更させていただきますので、

ご理解のほどよろしくお願いします。


こうしてまた書籍化することができたのは、

読者の皆様のおかげです。

末永いシリーズにしたいと思いますので、

書籍版の方もどうぞよろしくお願いします。

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