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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
日本転移編
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五十八話 AED

 今はどこに居るんだ?現在地が分かりそうなものは無いか!?あった。この車の納税証明書だ。住所は山口県下関市になっている。結構近くまで来れたんだな。


「ちょっと!車に乗せて!」


 佐藤が軽自動車の横を飛んでいる。流石に飛ぶのに疲れたんだろう。


「窓開けるから勝手に入れ!今止まればエイリアンが群がってくる!」


 車の窓を開けるとスルリと入り込んできた。


「斉藤さん大丈夫……?」

「どう見ても大丈夫じゃないでしょ……」

「だよね」


バフゥン


 エイリアンにぶつかった瞬間にエアバックが作動した。


「大山さんは?」

「……言わなくても気が付いてるよね。……ヘリのローターに……ね」


 聞かなくても知ってた。というか、知りたくも無かった。


「武器は?二人とも持ってないの?」

「持ってない。というか弾切れだ」

「私も残り二発だけ」


 明らかに絶望的な状況だな。後ろにはエイリアンが数体追いかけてくるし、ちょくちょく道路脇のエイリアンが飛び掛ってくるし。


「道はこれでいいの?」

「海岸沿いを走ってれば灯台に到着するだろ」

「だろうね」


 横には海岸線が続いているのに、その奥には森が広がっている。その森からはエイリアンが車の音に気が付いたのか、ぞろぞろ出てきた。一体どんな世界に飛ばされたんだ?少し興味がわいてきたぞ。


ベゴッ


 屋根が突然凹んだ。上にエイリアンでも乗ったのか!?


「佐藤!撃て!」

「無理!この狭い室内じゃ無理!」


 車を左右に揺らしてみても落ちる気配が無い。それどころかエイリアンの指が車の天井を突き抜けてきた。


ベギッバリバリ


「嘘!?」


 エイリアンが車の天井を引き剥がした。オープンカー状態だ。


「ギャアオ!」


 エイリアンの口から涎みたいなのが飛んできた。汚い。


「いい加減にして!」


 佐藤がエイリアンの下顎に小銃の銃口を押し当ててる。


タァン


 今度はエイリアンの血の雨か。お湯のシャワーが浴びたいな。その前に、日本を元に戻したとしてもエイリアンを完全に駆除するのに何年かかるんだろうか?まず、日本の人口がどれだけ残っているかも謎だ。


「何考え事しているの!?前!エイリアンの群れ!」


 エイリアンが交差点に群がっている。えーと、二十匹……それ以上はいる。突っ込むべきか……それとも引き返すべきか……いや、今からブレーキをかけても停まるころにはエイリアンの群れの中だ。


「突っ込むの!?」

「私……重症なの忘れてる?」


バゴッ


 エイリアンを一匹跳ね飛ばすと速度が半分以下まで落ちた。二匹目を跳ね飛ばすと歩く速度並みになった。三匹目は……受け止められた。


「どうすんのよ!集まってきたよ!」

「もうちょっといけると思ったんだけどな……」

「それ本気で言ってる?本気だったらこの場で脳天撃ち抜くよ」


 本気です。さて、誰か助けに来ないかな?


パァー


「クラクション?」


 エイリアン達がクラクションの鳴ったほうを向いた。俺達三人もその方向を見ると、一台のボンネットトラックが突っ込んできていた。

ボンネットトラックはエイリアンを跳ね飛ばすというよりは踏み潰しながら進んできて車の横で停まった。


「早く乗って!」


 運転していたのは金澤だった。荷台には野原がショットガンを持って立っていた。


「一人怪我人が居るんだ!」

「野原!援護して!」


 野原が飛び掛ってきたエイリアンに向けて撃つとエイリアンの頭部が吹っ飛んだ。上手い。

荷台に上ると大量の空薬きょうが落ちていた。一体どこでこれだけの弾を手に入れたんだ……。


「早く出せ!」

「分かってる!」


 ボンネットトラックから凄まじいエンジン音が聞こえてくる。それと一緒にマフラーから真っ黒な煙が出てくる。


「……何とかエイリアンの群れから抜け出せれたな」

「どうしてここが分かったんだ?」

「何と無く海沿いを走ってただけだ。一箇所に留まっていたらエイリアンが集まってくるし」


ダァン


 路肩の放置車両から飛び掛ってきたエイリアンを野原が散弾で吹き飛ばした。


「金澤!お前治癒魔法使えなかったか?」

「ごめんなさい。ここに来るまでに魔力を使い切ったの」

「もういいよ……痛みも和らいできたから」


 それって、確実に死ぬ間際じゃねぇか。何とかして血を止めないと。こういう時ってアドレナリン注射を打つんだっけ?……あれは戦争のときだけだっけ?


「見て!診療所!」


 元海沿いの道の脇に小さな診療所がある。周りを見た感じエイリアンの数も少ない。治療をするなら最後のチャンスかもしれない。


「そこで美香の治療をしたい。停まってくれ」

「……ねぇ。斉藤さん息して無いような気がするんだけど」

「……おい!美香!起きろ!」


 口に手を当ててみるが息をしてない。首筋で脈を取ってみるが脈が無い。一体いつからこの状態なんだ!?


「おい!AED持ってないのか!?」

「持ってるわけ無いでしょ!それよりも心臓マッサージ!」

「そ……そうだな」


 心臓マッサージを始めるが、こんなの自動車学校でやった安全講習以来でやり方なんてこれであってるのか?


「とりあえず診療所で停まるからAEDないか私と田中で探してくるから佐藤さんと野原は斉藤さんをよろしくね」

「あぁ。エイリアン共を近づけさせないようにする」


キキッ


 ボンネットトラックが診療所の前で停車した。診療所の入り口のドアのガラスは割れて中も荒らされているのが外からでも分かった。ここにAEDが無ければ確実に美香は死ぬ。


「良い?エイリアンがいたらこれで対処して」

「サバイバルナイフ?」

「あくまで気休めだから好戦的には行かないで隠密にね」


 ドアをゆっくり開けて中に入った。

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