五十四話 研究施設
エレベーターが開いた。学校の廊下の、窓が無いバージョンみたいな感じだな。
「エイリアンは流石にここまで来ないよね」
「入り口がここだけなら大丈夫でしょうね。……多分」
いたとしてもカンタレの魔法でイチコロだろうな。とりあえず一番最初にあった部屋に入ってみよう。それで地下でどんな実験をしてるくらいは把握できるだろ。
ガチャッ
「入らないんですか?」
「鍵がかかってて開かないんだよ」
「しょうがないですね。今開けます」
カンタレがドアノブを握って力を込めていると鍵が開いた音がした。暗証番号のドアもこれで開けれたんじゃないのか?
部屋に入ると、ホルマリン漬けにされたゴブリンとドラゴンがいた。その横にはデカイパソコンが置かれている。ようやくそれらしい部屋に入ったな。
「このドラゴンとゴブリンは生きてるの?」
「多分死んでますね。半年前に回収した死体を研究材料として使っているようですね」
死体を研究して何するんだろうか?新たな服を作るとか?
「ドラゴンの鱗は硬いですからね。上手く再現できれば小銃の弾丸を防ぐことの出来る防弾チョッキが出来るでしょうね」
「へー」
結局は戦争の道具かよ。
「この部屋にはもう用ありませんね」
バキャッ
部屋のデカイパソコンが粉々に砕け散った。記録は残させないつもりだな。さて、次は隣の部屋だ。今度はどんな生物がホルマリン漬けにされているんだろうか?
「また鍵がかかっている」
「もうぶち破りますね」
バゴォン
うわぁ……どんどん乱暴になっている。そのうち研究所ごと消し去りそうで怖いな。
んで、今度はホルマリン漬けじゃなくて子供が椅子に座らされて眠っている。上であった事から察すると、実験体にされてるんだろうな。
「カンタレ、子の子達生きてるのか?」
「ちょっと見てみますね」
カンタレが一人の男の子の頭に手をかざした。
「あー、一応生きてますね」
「一応って何?」
「記憶を全て消されてますね。その後に洗脳して、魔力を無理やり突っ込むんでしょうね」
「何で私に魔力が無いの?私も魔法を使ってみたいんだけど」
「使いたかったら向こうの世界に行けば魔力が芽生えるみたいです」
「この世界じゃダメなの?」
「この飛ばされた世界では魔力なんて一切ありませんね。私も魔力を回復するのに時間がかかります」
良くこれだけの子供を集めることが出来たよな。国家権力には誰も口出しは出来ないのか?
「う……」
「一人意識がありますね」
部屋の一番隅っこに座っていた男の子が意識を取り戻した。もしかしたら洗脳されているかもしれない。攻撃される前に殺しとくか。……俺の考えもやばい感じに染まってきたな。
パァン
カンタレが持っていたハンドガンで男の子の頭を撃ちぬいた。魔法は使わないのか?
「おい。どうしたんだよ」
「いや、魔法を使おうと思ったんですが、上手く引き出せなくて……」
「風邪?」
「ですかね……?」
カンタレが風邪を引くなんて初めてじゃないか?まぁ、最近カンタレは働きづめだから体調を崩してもおかしくは無いな。山口県に行く途中で風邪薬でも買ってやるか。
「次の部屋に行きましょう。魔力は何とかがんばってみます」
さて、次の部屋だ。廊下にあった扉は、この部屋ともう一つだけだ。これで全部倉庫だったりしたら発狂するぞ。というか、ここに佐藤が居ると思ったんだけどなぁ。
今度は鍵がかかってなかった。あぁ、倉庫だ。絶対に倉庫だろ。
「今回は私の力を使う必要なかったね」
「え?斉藤さん魔法使えるんですか?」
「使えないよ。ただ、ピッキングが出来るの」
扉を開けると再びホルマリンが大量に入っている容器が並んでいた。
「またですか……」
今度はホルマリン漬けにされているのは何だ?……嘘だろ。佐藤だ。佐藤が容器の中で静かにホルマリンの中に沈んでいる。
「今、出してあげる!」
美香が佐藤の入っている容器に数発銃弾を打ち込むと容器が割れて中のホルマリンが全て流れ出た。
「ゲホッゲホッ」
「大丈夫か?」
カンタレと一緒に容器から外に出すと、すぐに意識が戻った。
「何があったんだ?」
「いきなり右羽を打ち抜かれて、落ちたところにやって着た人達に運ばれて連れてこられたの」
ってことは、まだこの研究所内には生きてる職員がいるってことか。撃ち落されたってことは武器も持っているってことだろうし、対処できるようにしとかないとな。
「他の容器に漬かっている人はすでに死んでいました。もう容器から出しても無駄でしょうね」
「それじゃあ、最後の部屋に行こうよ」
部屋から出て最後の部屋に入ると、他の部屋で見た容器よりも大きな容器が有った。その中には軽く身長三メートルを超えそうな大男がホルマリンに入っていた。その横にはノートパソコンを弄っている研究員がいた。あの男がこの大男を作った張本人だろ。
「ようこそ、能力開発センターへ。私達の研究成果を見ましたか?」
「えぇ。見ましたよ。最悪な研究方法でしたがね。私ならもっと別の方法で研究しますよ」
「ほぉ……カンタレさん、あなたの意見が聞きたいところですが、この化け物とまずお手合わせ願いたいですね」
嘘だろ。あんなのと戦えって言うのか?こっちはハンドガンだけなんだぞ!
「あ、言い忘れてましたが、この部屋に魔力を無効化させる機械を置いているので気をつけてくださいね」
そうか。だからさっきからカンタレが魔法を使えなかったんだ。でも、そんなのに付き合う必要は無い。入ってきたところから逃げれば良いだけだろ。
「入ってきたところから逃げるぞ!こんな奴の遊びに付き合う必要なんて無い!」
「そうはさせませんよ」
バタン
入ってきた扉が閉まった。佐藤が必死に開けようとしているがびくともしない。
ガシャアン
容器の中から大男が出てきた。何だあの筋肉は。見ただけでも分かる、9ミリ弾じゃびくともしない!
「さぁ!やってしまいなさい!」
「があああああ!」
大男が唸り声を上げた。




