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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
日本転移編
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四十二話 土下座

 もうすぐで富士の樹海の町に到着する。そこでカンタレを捕まえて日本を元の世界に戻してもらう。そうしないと日本中がエイリアンに占領されてしまいそうだ。


「カンタレって診療所にいるの?」

「多分。自宅兼診療所だからな」

「車を持っているとかは?」

「カンタレが車を持ってるなんて聞いたこと無いけど……それがどうかしたのか?」

「万が一逃げられたらめんどくさいからね」


 後部座席の二人が銃を取り出した。9ミリ拳銃とグロックか……本気のカンタレにそれで挑むとしたら火力がぜんぜん足りてないぞ。カンタレの本気と闘うには戦車を二台くらい出さないと。以前カンタレがキレた時は戦車一台お釈迦になったからな。


「この道を進めば着くぞ」


 さて、町に帰るわけだが見張りの自衛隊とか先に戻っている人達はどうなっているんだろうか?まさかとは思うが殺されて無いよな?


「先に行くね!」


 佐藤が先に飛んでいった。

 町の入り口を見張っているはずの自衛隊が見当たらない。それどころか、町の中に入っても誰も見当たらない。


「見て!エイリアンが死んでる!」


 道路の路肩でエイリアンが頭部を破壊されて死んでいる。それも一体どころじゃない、何十体も倒されている。一体誰が……って、この強さはカンタレしかいないだろ。


「カンタレの診療所はどこですか?」

「この交差点を曲がればすぐのはず……」


 カンタレの診療所だ。診療所は要塞と化してた。窓は木の板で塞がれて、診療所の前には荷台に機関銃を積んだ2トントラックが止まっている。よく見ると荷台にいる人は自衛隊員だ。どうなってるんだ?


「どうなってるの?」

「美香、お前の情報違うみたいだぞ」

「おかしいなぁ……」


 近づいていくとトラックの荷台の自衛隊員が機関銃を向けてきた。俺達はエイリアンじゃないぞ。すぐに気が付いてくれたのか銃口をそらしてくれた。

 車を診療所の前に停めると自衛隊員が診療所の出入り口から走ってきた。


「もしかして田中さんですか?」

「そうですけど……」

「早くこちらへ、他の皆さんも診療所内へ」


 案内された診療所の診察室にはカンタレが座っていた。腕には包帯を巻いてる。怪我でもしたのか?珍しいな。


「来ましたか。早速ですが……すいませんでした!」


 おぉ、土下座。すがすがしいほどの綺麗な土下座だ。ところで、どうして土下座なんてするんだ?


「どうしたんだよ?」

「本当に取り返しの付かないことをしました!」

「謝ってばっかじゃなくて説明してくれない?」


 佐藤が土下座しているカンタレの頭に拳銃をゴリゴリ押し当てている。たまにこいつは、凶暴化するんだよな。本当に辞めて欲しいけども直接伝えれば凶暴化するから伝えれないんだよ。


「わかりましたから!銃口を押し当てないでください!」

「ねぇ、佐藤さんってあんな性格なの?」


 美香が耳元でこっそり話しかけてきた。そうか、こういう性格の佐藤を見たこと無いんだっけ?


「なんか、時々こういう感じになるんだよ。気をつけろよ。殴られるぞ」


パァン


「そこ、黙って」


 佐藤が診療所の壁に拳銃で穴を開けた。発砲音のせいで自衛隊員の人が数人突入してきたぞ。




「こうなったのは私の甘い考えが原因です」


 ホワイトボードを裏から引っ張り出してきた。診療所に必要ないよな。


「私が元いた世界の生活水準を上げようと思いまして最初は人だけを送り込めるか自分で実験したんですが、人間だけは遅れませんでした」


 自分で実験したのか……怖い物知らずというか……何というか……。


「そこで、場所ならいけるんじゃないかと思いまして石川県にあった廃村でやってみたら成功したんです」

「待って!どうやってこの町から抜け出したの!?」

「え?普通に空を飛びましたよ」


 カンタレはどこか抜けてるんだよなぁ……。それ以外は優秀なんだけどな。


「話を戻しますね。私は最初、個人的に政府に技術者を数人向こうの世界へ送ってもいいかと聞いたんですが、答えはNOでした。そこで私は本州ごと転移させてしまって、私に協力せざる終えない状況を作れば政府も答えてくれると思ったんです。向こうの世界なら、今の自衛隊でも対処できますし」


 何か話が飛んだような気がするが、ここは突っ込まないで話を聞こう。


「そして、いざやってみたら他にも世界があったらしく、エイリアンが住む世界へと来てしまったのです」


 勘弁してくれよ。今回の騒動すべてカンタレ一人でやったっていうのか?規模が違いすぎる。


「戻す方法はあるんでしょうね?」

「もちろんあります!石を指定した場所においてくればその時点で魔法が発動して元の世界に返れます」

「その場所は?」


 ホワイトボードに地名を書き始めた。場所は全部で五ヶ所だった。

青森県大間崎のマグロの下、石川県珠洲市禄剛崎灯台の前、山口県下関市金ノ弦岬灯台の前、和歌山県東牟婁郡串本町潮岬灯台の前、千葉県南房総市白浜町根本マリンキャンプ場だ。灯台が半数を占めているのか。


「指定された場所が破壊されていたらどうするんですか?」

「破壊されていても大丈夫です。指定した場所の周辺に置いてもらえれば魔法は発動します」

「それで、置く石ってどれ?」

「これです」


 カンタレが持ってきた石は店の、のぼり旗を立てるような中心にパイプが刺さった真四角の石だった。

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