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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
現実世界編
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三十六話 借金

 ダンプは国道沿いの建設中のホテルに入った。見た目は建設中だったけども中は鉄骨が地面に刺さっていたり、重機が倒れていたりして建設中には見えないな。


「おい。どこに行くんだよ」

「え?大江戸線だけど?」


 大江戸線って地下鉄じゃなかったけ?俺はどこに行くにも車を使っていたから電車の乗り方とかすら知らないんだよなぁ……。


「一也は電車に乗らないから知らないんだよね」

「何だよ。地下鉄の路線が基地だというのか?」

「そうだよ」


 こいつは何を言っているんだ?そういっている間にダンプはトンネルに入った。トンネルの中の道はガタガタだ。ってか、下は線路だ。やっぱり地下鉄なのか?


「半年前に地下鉄で同時に魔王軍による襲撃で電力供給と排水設備が壊されて、所々水没していたり崩落したりして迷路になっているんだけどね」

「それで基地にしているって訳か」

「警察が何回も踏み込んできたけども迷って私達の基地まではたどり着けなかったんだよ」


 俺も今どこにいるのかわかってない。というか、真っ暗すぎてこの先に道があるのかもわからない。


「もうすぐで新宿駅に到着するよ」

「新宿駅って吹き飛んだんじゃ……」

「地上部分は吹き飛んだけども、地下二階から下は無事だったの」


 へー。そんな情報は知らなかった。


「到着したよ」


 美香がダンプの荷台から飛び降りた。目の前には薄暗いけども駅のホームだ。


「姉貴!お帰りなさい!」


 数人の男達が銃を持ってやって来た。銃といっても9ミリ拳銃に、猟銃……ライオットシールドと装備はバラバラだ。しかも装備は足りていないようだ。


「その人は?」

「私の彼氏。前に話したことがあるでしょ」

「田中一也さんでしたっけ?」

「そう。一応、明日の作戦に加える方向でよろしく」

「分かりました」


 作戦って何だ?しかも勝手に仲間にされてるし。


「では、作戦会議室へ」


 拳銃を持った男が案内してくれるのか。駅の所々には照明代わりに大量のランタンがいたる所にぶら下がっている。そして、武装した人がちらほら居る。こういうレジスタンス感、結構好き。


「こちらが会議室です」


 会議室?どっからどう見ても全国に店舗を持つコーヒー店じゃねぇか。会話が筒抜けだろ。


「どこでも好きなところに座っていてください」


 適当な席に座るとカウンターからコーヒーを持った女性が出てきた。腰には伸縮式警棒が刺さっている。


「砂糖とミルクが足りなかったら言ってくださいね」

「あ、どうも」


 って、こんな事をしている場合じゃない!


「私は橋本はしもと 流亜るあと言います。解放戦線の副隊長をしています」

「橋本さん。何か流れ的に仲間になっている様な感じだけれども、俺は何も聞かされてないんだけど?」

「大丈夫です。これからすべてのお話します」


 何が大丈夫なんだ?俺は帰りたいんだが。橋本が鞄からタブレットを取り出して見せてくれた。


「今から見せる写真は仲間が政府の研究所に潜入して撮影した写真です」


 一枚目だ。ゴブリンがホルマリン漬けにされている。他にも同じような容器が沢山並んでいる。その容器の目の前には白衣を着た研究者が容器を眺めている。


「半年前の事件で捕らえられた内の一部は政府の研究材料となっています。次行きますね」


 次は映像だ。これは通気候からの映像か?取調室みたいなところにスーツの男数人とオレンジ色の囚人服を着た男が居る。


『君の協力で素晴らしいものが出来るんだよ。ぜひ協力してくれないか?』

『そんな酷いこと私には出来ません!』

『……やれ』


 囚人服を着た男に頭から麻袋を被せると水をかけた。麻袋が濡れて顔に張り付いて息が出来ないようだ。スーツを着た男が麻袋を取ると囚人服を着た男の紙を掴んで顔面を机に叩き付けた。


『良いか?お前に拒否権は無い』

『……それでもやらない』


 映像が途切れた。政府も酷いことをするもんだ。


「まぁ、こんな感じです」

「それは、分かったとして橋本さん達に何の関係があるんですか?別に助けなくても良いんじゃないですか?」

「それが関係ないわけでもないんですよ」

「どういうことですか?」

「半年前の事件のとき何故か洗脳されてしまった人達は書類上は死亡扱いになっていたんですよ。それで、斉藤さんが先頭になって政府に取り消してくれって言いに行ったんですけどダメでした」


 謎が多いな。俺は半年間眠っていたからこういう事情はさっぱりなんだ。


「マスコミには言わなかったのか?」

「言いました。でも、取り合ってくれませんでした」

「どうして武装集団を作ることに?」

「それを今から話そうとしていたんですよ」

「あぁ、ごめんなさい」


 その後話してくれたが、死亡扱いになってしまった人達を誘拐した後、実験台にしていたらしい。


「これからが本題なんですが、田中さん達も危ないんですよ」

「どうしてそうなる?」

「日本はかなりの借金を抱えたらしく、さらにその借金もすぐに返さなくてはいけないらしく、実験結果と実験体。そしてあなた達特別治安軍の人達を売り飛ばす気らしいんですよ」


 そんな馬鹿げた話があるか。そんな事をすれば国民だって黙ってないだろうし、ましてやそんな厄介な連中を引き取ろうなんて思う国がどこに居るんだよ。


「ちなみに私たちを買い取る国のリストです」


 えーと、アメリカに、ロシア、中国……他にも聞いたことがある国ばかりだ。アフリカまであるのか。


ピリリリリリリ


 スマートフォンがなっている。表示は……佐藤だ。


「電話に出てもいいですか?」

「構いませんよ」


 通話ボタンを押すと電話越しから銃声が聞こえてくる。


『一也!?今すぐ逃げて!?』

「どうしたんだよ?」

『政府の奴ら私たちを売る気なの!捕まったらどこかの国に売り飛ばされるよ!』

「今どこだ!?」

『今空を飛んで逃げてるけども……ヘリまで出してきた!良い?逃げてね!』


 電話を切られた。どうやら、こいつ等が言っていることはある程度信用してもよさそうだ。



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