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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
現実世界編
33/61

三十三話 止血

 後ろから追ってきているのは、駐車場から出てきたゴブリン達だな。走り屋の車に箱乗りしながら銃を撃ってきている。


「撃て!」

「追いつかれるぞ!もっとスピードを上げろ!」

「いやああああ!」


 無茶言うな!向こうの方が速いのは見た目で分かるだろ!そっちが何とかしろ!


「全員耳を塞いでろ!」


 手榴弾を使うのか。耳を塞げって言われても運転中で塞げねえよ。あ、ピンを抜いた。


「うぐっ!」


 手榴弾を投げようとした奴が肩を撃たれて手榴弾を落としやがった!蛇女がすかさず拾って外に投げ捨てた。ナイス判断。


パァン


 手榴弾がバスのすぐ左後ろで爆発した。その直後にバスの左後輪もパンクした。手榴弾の破片でやられたな。おかげでさっきからバスのケツがふらふらして運転しずらいんだよ。


「早くあいつ等を殺せよ!」

「あなた達は立たないで床に伏せててください!」

「うるせぇ!俺に貸しやがれ!」


 ヤバイ。救助者が沢田さんから銃を奪おうとしている。っと、バックミラーを見てる場合じゃない。運転に集中しないと、ハンドルを持っていかれそうだ。


「うがあっ!」

「止めて!」


 タァン


 何だ?肩のところが熱く……、右肩から血が……。


「いってええええ!」

「あ、ごめんごめん」

「こいつを取り押さえろ!」

「うわぁ!」


 くそっ!何で救助するはずの奴に撃たれないといけないんだ!とにかく消毒して止血しないと。誰かに運転を代わってもらわないとな……。


「大丈夫か?運転代わるぞ」

「お言葉に甘えて」


 魔法使いの人が代わってくれるのか。ひとまずニュートラルに入れてっと。


「せーので代わってください」

「わかりました」


 見える範囲には放置されている車は無い。後ろを追いかけてきている車も少し離れている。今が交代するチャンスだ。


「せーの」


 俺が座席からハンドルを掴んだまま離れると、魔法使いの人が座席に座ってハンドルを掴んでくれた。もう放しても大丈夫だろう。


「後は任せました」

「任された!」


 まずは綺麗なハンカチで傷口を圧迫して……。さっき見た感じ動脈からの出血ではないな。とは言っても、出血は止まってない。このままだと海底トンネルから出る前に気を失うかもしれない。いや、この量は死ぬかも。


「ヘビ毒で止血してあげるよ」

「え?蛇の毒って出血が酷くなる奴じゃなかったけ?」

「向こうの世界の蛇はその逆みたい。毒を注入すると全身の血液が固まるんだって」

「おい……、まさか……」

「ちょっとだけ毒を傷口につけると血が固まって出血が止まるんだ。ちょっと間違えたら死ぬけど……」

「自分で押さえとくから止めてくれ!」

「大丈夫。自分で何回か成功してるから」


 蛇女が口を大きく開けて犬歯から液体が落ちてきた。


「よし。出は良さそう。誰か田中さんを押さえてて」

「分かったぜ」


 おい。沢田!止めろ!俺はまだ死にたくないんだ。あぁ、傷口の上で蛇女が口を開けて犬歯から液体を流そうとしてる。一滴だけ今にも犬歯の先から落ちそうになっている。


「マジで止めてくれ!」


 液体が落ちて傷口に染み込むと周りの血が固まり始めているのが見て分かる。


「ふぅ~。久しぶりに成功した」


 今なんて言った?久しぶり?俺を実験台にしやがったな!


「おい!傷が塞がったなら後ろの奴らを何とかするの手伝ってくれ!」

「すいません!」


 そうだ。後で文句をたっぷりと聞かせてやる。今は、追いかけてくるゴブリンたちの車を何とかしないと。とにかく、運転席を狙ってみるか。


キキッ


 一台スピンして壁に激突した。後三台か。


「やるな!」

「まぐれですよ」


 次の車を狙うか。ん?車の後部座席から箱乗りをしてる奴が持ってる筒みたいな物って……無反動砲か!?


「全員伏せろ!」


 伏せた瞬間にマイクロバスのすぐ横に着弾して爆発する。その爆風でマイクロバスがバランスを崩して横転した。中では人が宙に舞った後に、天井に叩きつけられた。


「いってぇ!」


 バスが完全に裏返しになったのか。他の人は……銃を奪った救助者はもう手遅れだ。首が変な方向へ曲がっている。他には数人バスの外へ投げ出されている。


「早く外へ出ろ!ゴブリン達が来てる!」


 とにかく銃を拾って外へ出よう。外にはすでに数人の人がゴブリン達と銃撃戦になっていた。その中には蛇女もいた。


「田中さんは救助者を出口まで連れて行ってください!出口はもう見えてます!」


 蛇女が指差す方を見ると、光が差し込んでいる。もう夜明けか。確か、俺達の部隊があそこから出れば重武装したゴブリンが海ほたるにいる残党を倒しに行くんだよな。


「救助者の皆さんは私の合図で少し先に有る大型トラックまで走ってください」


 救助者の人達は俺の話を真剣に聞いてくれている。俺の方を撃ち抜いたあの男とは大違いだ。かと言っても俺の言うことを聞いたからって生きて帰れるわけじゃないけどな。そうだった。蛇女に制圧射撃をお願いしとこう。


「おい!蛇女!」

「何!?」

「三十秒後に一斉に制圧射撃をしてくれ。救助者達を逃がす」

「分かった!他の人にも伝えとくね」


 これで救助者達が逃げる間、残党は物陰に隠れて反撃は出来ないはずだ。


「私の合図で大型トラックの影まで走ってください!」


 銃声が一際大きく聴こえ始めた。今だ!


「走れ!」


 救助者達が一斉に走り出した。残党の方は……、車の陰に隠れて出てこないな。このままトラックの影まで行けば後は放置車両の陰に隠れながら進ませれば脱出できるだろう。


「ヤバイ!奴ら天井を崩す気だ!」


 銃撃が止んで蛇女や魔法使い達が一斉に走ってくる。その後ろではゴブリンが天井に向かって何かを撃った。


ドォォン


 海底トンネルの天井が崩れて瓦礫と一緒に東京湾の水が流れ込んでくる。

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