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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
現実世界編
29/61

二十九話 残党

 俺が目を覚ました後、カンタレから大体の流れを聞いた。半年間ずっと眠っていたのか。しかも、その間にかなり状況が変わってしまっている。


「もう落ち着いたか?」

「うん」


 起きたら急に佐藤が泣きながら抱きついてくるから驚いたよ。半年間身の回りの世話をしてくれたのは佐藤らしい。感謝しないとな。


「看病してくれてありがとう」

「それについては良いの」

「そう言えば、美香はどうしたんだ?」

「斉藤さんは今頃普通の生活をしてると思うわ」

「電話かメールできないのか?」


 佐藤が首を横に振っている。ということは取れないんだな。町からも簡単に出れそうに無いし、会うのは難しそうだ。

それにしても、政府に変わって魔王軍の残党狩りに出かけなければならないとは予想もしてない出来事だ。俺もその残党狩りに参加しないといけないのか?戦闘経験なんて全然無いんだけどな。


「俺もその残党狩りに加わらないとダメなのか?」

「そうよ。この町の大半の人が強制参加よ」

「でも俺銃とかの扱いには慣れてないというか……使えないぞ」

「大丈夫。装備が揃うまでの一ヶ月間の間にマスターしてもらうから」


 マジかよ。今すぐにでも逃げ出したいけれども、参加するしかないのか。



 それから一ヶ月間、外部から来た人にみっちり筋トレと銃の扱い方、近接格闘術を仕込まれた。もはや軍隊だな。


「よく一ヶ月間耐えたね」

「もう二度とこんな事したくない」

「大丈夫だって。おかげで筋肉も付いたじゃない」

「そういうお前は一ヶ月間の訓練に参加してなかったじゃねぇか」

「私は上空から支援するから、自由に飛びまわれるようにドラゴンと一緒にがんばってたのよ」


 町の一角には次々と米軍の払い下げの品の数々が集まっていた。戦車に装甲車、無反動砲まであるな。戦争でも始めるつもりか?それと、これだけ集めるのにいくらの金を使ったんだろう?


「まず最初は……サービスエリアの海ほたるだって」

「そんなところを占領しているのか?」

「しかも、戦車で行ったら高速道路が壊れるから使用していいのは装甲車と、ドラゴンだけだって」

「船は使えないのか?」

「別に船は使っていいみたい」

「詳しい作戦は自衛隊の人達が明日の朝九時に公民館で話してくれるみたいだよ」


 作戦は自衛隊が考えてくれるのか、それだけでもかなりの安心感があるな。作戦まで考えてくれるなら実行までしてもらいたいよな。


「今日はもう晩御飯にしましょうか」


 一応、俺と佐藤は町にある平屋建ての一軒家で同棲をしている。周りからは結婚はいつするかとか聞かれるが、俺は美香一筋だ。とは言っても、最近はまともに連絡できてないけど……。


「今日は飯はいいや。もう寝る」

「そう……」


 朝、目が覚めると八時半か。すぐに向かえば間に合うか。


「もう行くよ!」

「先に行っててくれ」

「分かったー」


 とりあえず着替えて向かうか。車を出すほどではないだろ。

公民館にはすでに人が集まっていた。横には、自衛隊の車両が止まっている。早く俺も入ろう。


「田中さん」

「カンタレも来ていたのか」

「そうですよ。魔法に詳しいのは私くらいですからね」


 もうすぐ時間か。お、自衛隊が出てきたし説明が始まるのか。


作戦の説明が終わった。結局作戦は俺たち任せの内容だった。何が「戦車さえ使わなければ何をしても構わない」だ。相手の装備に関しても良く分かってないらしいし、いい加減にして欲しいよ。


「結局どうするんだ?」

「海ほたるに向かうしかないでしょ」

「カンタレさん。どうしますか?」

「私に聞かれても困りますよ。……とりあえず空からドラゴンで奇襲しましょう。その後に車で海ほたるに行きましょう」

「そうですね。それでいいです」

「投げやりですね。町長のあなたがそれでいいのですか?」

「いいんじゃないですか?」


 佐藤が町長でこの先大丈夫なのか?


「出発はどうします?」

「明後日の日の出で良いんじゃない?」

「分かりました。私から作戦に参加する人達にメールで送っておきます」


 カンタレが完全にこの世界に馴染んでいるな。アレで五十代なんだから驚きだ。


「一也、今日どうするの?」

「車を買いにいく」

「そっか。プリウスだっけ?スカイツリーの展望デッキに真っ二つになって置いてあるんだよね」

「流石に車がないと不便で仕方ない」

「この町にはバスとか走ってないもんね」

「付いてくるか?」

「うん!」


 たしか、町の端の方に魔法使いが営む車屋があったな。とは言っても、中古車しか扱ってなかったんだっけ?


「買う車決まってるの?」

「多少はオフロードもいける車がいいな」

「あっちの世界に行ったときに車ボロボロにしてたもんね」


 お、付いた。個人経営の小さな車屋だな。俺、こういう感じ好き。


「いらっしゃい……佐藤さんじゃないか!どうしたんだい?」

「今日は付き添いです」


 佐藤の顔は広いのか。佐藤の地位を利用して値引きも多くしてもらうか。


「それで、車を買いに来たんだろ」

「そうでした」

「それでどんな車が欲しいんだい?」

「オフロードもいける車で燃費が良い車で」

「うーん。難しい事いうなぁ」


 店主であろう中年の魔法使いがパソコンを操作しているな。リストでも見てるんだろう。


「これなんてどうだ?」


 パソコンの画面を見せてくれた。えーと、アウトランダーPHEV?確か三菱だっけ?見た目も悪くないし、ネットの評判もそこそこ良かった気がするな。


「この車なら電気で走ることも出来るし、そこそこのオフロードなら行けるぞ」

「お値段の方は……」

「350万だな。値引きをして……330万だ」

「もうちょいお願いします」

「分かった。320万だ。他の法的費用は別だけどな」

「んじゃ、それで良いです」

「届くのは一週間後くらいになるがいいのか?」

「別にそこらへんは気にしてません」


 人生で二度目の車購入だ。一週間後だと海ほたるの作戦の後か。こりゃ死ねないな。

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