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異世界にエコカーで行く  作者: タコ中
現実世界編
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二十三話 思い出

今日は疲れたな。考えてみればこの世界に戻ってきてから休憩なんてしてないよな。


「次は姉ちゃんだな」


 こいつは疲れを知らないのか?まぁ、アフは人間じゃないからな。


「今日はもう休む。さすがに疲れた」

「どこで休むんですか?」


 そうだった。今の東京じゃホテルなんて営業してるわけない。営業していたとしても襲われてるだろ。


「今日は部屋を一晩借りましょう」

「いまの状態じゃ部屋を借りても襲われるだけだろ」

「田中さん。魔法の力を侮ってはいけませんよ。気配くらいは消せますよ」


 それなら安心だな。とりあえず、そこらへんのマンションの一室にでもお邪魔させてもらうか。食べ物はさっきのコンビニから貰っていけば問題は無いだろ。


 近くのマンションの鍵の開いていた部屋に一晩止めてもらうことにしよう。部屋にはテレビにパソコンか、久しぶりに文明的な部屋に泊まることが出来そうだ。美香をベットに寝かせておいてと。


「すごい珍しい物がいっぱいですね」

「何だこれ?中が涼しいぞ」


 さっそくいろいろ触っているな。俺の部屋じゃないからどうでも良いけどな。お、大学の教科書があるな。ということはこの部屋の住人は大学生か。

あ、カンタレがパソコンを分解し始めたな。さて、パソコンは使えなくなったし、テレビでも見るか。


『現在、東京都内では謎の動物人間達が人々を襲っています。……今入った情報によると、スカイツリーの展望台にドラゴンが集結しているとの情報が入りました。なお、政府が自衛隊を出動させることを決定しました。』


 ようやく自衛隊が出るのか。自衛隊が出ればすべて片付くだろうな。


「じえいたいとは何ですか?」

「自衛隊ってのは、軍だな」


 正式には軍ではなかった気がするけどこの際、軍って説明した方が分かりやすいし楽だな。


「姉ちゃんまで殺されたりしねぇのか?」


 そうだった。自衛隊が出動すればドラゴンもそうだが、実験された人達も殺される可能性があるな。そうなれば佐藤も……。


「ん……ここは?」


 お、美香が起きたか。


「ゴブリン!?」

「あ、魔法掛けとくの忘れてました」


 ヤバイな。美香にはちゃんと説明しとかないとややこしいことになりそうだ。


「美香!落ち着け!このゴブリンは人を殺してた奴らとは違う!」

「え……?どういうこと?」


 異世界に行った所から順番に説明しとくか。


「そんなの信じられるわけ無いじゃない」


 やっぱりな。俺でもこんな話をされれば作り話じゃないかと思うよ。


「でも、信じる。というか、こんな状況だもん。信じるしかないじゃない」


 さすが俺の彼女だ。物分りが早くて助かる。


「それで、異世界では浮気してたのね」

「いや……そういう関係までは行ってないって!」

「へー」


 カンタレとアフ。助けてくれよ……って見てない。


「でも、久しぶりだね」

「何が?」

「一也が誰かを助けようとするのって。たしか、出会ったときって私がバイクを起こせなくて困ってたときに一緒に起こしてくれたんじゃなかったけ?」

「そうだよ。そのときにぎっくり腰にもなったんだけどな」

「そうだったね。懐かしいな」


 たまに誰かを助けないといけないって衝動に駆られるときがあるんだよな。普段はそういう場面に出くわしても逃げるのにな。


「へーそんな出会いなんですね。場面の想像が出来ませんけど」

「んで、いつ夜に交わったんだよ」


 何だこの雰囲気?修学旅行のテンションになってきてるな。何とかして流れを変えたいな。そうだ!コンビニから持ってきた弁当でも食べよう。


「弁当でも食べよう!」

「一也は流れかえるの下手だね。いつものことだけど」

「そうですね。おなかが減っては魔法もまともに使えませんからね」


 そういえば、向こうの世界ではスプーンとフォークが当たり前だったから気がつかなかったけれども、カンタレとアフは箸を使えるのか?


「割り箸でもいい?」

「良いぜ。んじゃ、俺はこの肉の塊でも食べるかな」

「私は、この変わったパンですね」


 箸は使えるんだな。アフはハンバーグ弁当で、カンタレはメロンパンか。向こうの世界でもハンバーグくらいは有りそうな気がするんだがな。さて、俺も唐揚げ弁当でも食べるか。佐藤のことは食べながら考えれば良いだろ。


「それで、佐藤さんだっけ?とはどんな関係なの?」


 いきなり踏み込んできたな。どんな関係といわれても、何とか手を出さずに済んだわけだしな。でも、あいつがいなければ最初の村から動いてなかった可能性もあるな。


「パートナー的な?」

「何それ?浮気?」

「だから、そんな意味じゃないって!」

「分かってるって。でも、話を聞いた限りじゃ一也は最初の町から動かずにそのまま異世界に馴染んでたんじゃない?その面で言えば佐藤さんが助けを求めに来てくれたことに感謝だね」

「それで、佐藤さんを助けに行きますか?」


 そりゃ助けに行かないと自衛隊に駆除されたら後味も悪いし、ゴブリンの森で佐藤の友達を助けられなかったんだ。佐藤くらいは助けないとな。


「行くよ」

「その言葉を待ってたんだ!」

「私も行くよ」

「え!?でもかなり危険だぞ」

「一也の浮気相手をこの目で見ておかないとね」


 何だその理由?理由になってないぞ。まぁ俺も人の事言えないけどな。


「今日はもう遅いですから明日の日の出後に出発しましょう。それまでは体を休める。良いですね」


 美香が部屋の電気を消すとカンタレとアフがすぐに眠ったな。なんでみんなそうやってすぐに眠れるんだ?


「ねえ、その胸にあるのってダイヤモンド?」


 胸?あ、ガナスの町で子供達から貰った薄く延ばしてあるダイヤモンドか。


「ちょっと触らしてもらっていい?」

「良いけど」

「見た目は薄いけどもしっかりして折れそうに無いね」

「もしかしたらダイヤモンドじゃないとか?」

「異世界のことは良くわからないけど、ダイヤモンドとは別の物とか?……ダメ、わかんない。今度鑑定してもらったら?」

「そうしてみるよ」

「はい。返すね」


 これをずっと首からぶら下げているとそのうち命でも守ってくれないかな。


「もう寝るね」


 美香も眠ったことだし。俺も寝るか。

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