十九話 東京侵攻
私は、斉藤 美香26歳。彼氏の一也が行方不明になってから二週間近くが経とうとしているが警察からも情報が一切無い。一体どこに消えたのよ……。
「情報提供にお願いします」
チラシを配っても誰も見向きをしてくれないのは分かっている。むしろチラシを受け取る人のほうが少ないくらい。それでもわずかな希望を信じる!
ガシャン
何の音?……あ、交差点で車とバスがぶつかってる。どうせどちらかが信号無視でもしたんでしょ。と思ったけれども信号が光ってない。よく見ると周りのお店の電気が消えてるわね。停電?
「ギャオー!」
何の鳴き声?鳥?……上には変わった姿の鳥ね。いや、鳥にしてはでかい。しかも急降下してる……。
「ぎゃああ!」
え?今人を食べた?嘘!?
「うわああああ」
「きゃあああああ」
今度は何!?え?新宿駅からあれは……童話とかで見かけるゴブリン?手に持ってるのは銃!?
タン
撃った!人を撃った!とにかくここから逃げないと!とにかくみんなが逃げてる都庁方面に逃げれば何とかなるはず!
逃げながらでも警察に電話しないと……
「現在回線が込み合っており……」
こういうときは使えない携帯ね!そんな事よりもどこに逃げれば良いんだっけ?確か一也がこういうパニック系が好きでよく語ってたわね。なんて言ってたっけ?そうだ!警察署とかは駄目で人の少ないところに逃げろって言ってた!
「うわあああ!助けてくれ!」
また大きな鳥が人を食べて空に上がっていった!大通りはマズイ!裏路地で逃げよう!そうすればあの大きな鳥は入って来れない!
「いやああああ!誰か助けて!」
振り返ったらダメ!前だけを見て走らないと!でも、さすがに体力が……何か乗り物は……あった!車!持ち主はいない様だけど一時的に借りるだけなら良いよね。
乗り込んだは良いけどこれマニュアルだ!運転の仕方知らないよ!他のを探さないと。
気がついたら大通りに出ちゃった。でもここら辺にはあのゴブリンは来てないみたいだけど空は大きな鳥が飛んでるから注意しながら進まないと。
「君!こっちだ!」
遠くに路線バスが止まってる。その中からスーツ姿の男性が叫んだの?
「早く乗るんだ!」
今はありがたく乗ろう。路線バスにはすでに若い男女が座っている。同じく逃げてる人かな?
「あの……ありがとうございます」
「礼は後だ!とにかく東京から逃げる!」
良かった。これでひとまず安心できそう。このまま東京から離れれば何とかなりそう。
あ、首都高に乗るんだ。これならすぐに東京から離れれそうだね。ひとまず携帯で情報収集と。
『新宿で銃乱射事件』
『東京をドラゴンが襲う!』
とりあえず一つを見よう。
『午後1時13分に代々木公園や新宿御苑に突然現れた武装集団は、巨大な鳥を使って変電所を破壊すると、周囲にいた人々を無差別に殺害し始めた。現在では新宿駅を中心に千代田区、中野区、渋谷区で目撃情報が入っています。付近の住民の方は外出をしないようにしてください』
「なにこれ……」
まるでパニック映画そのものじゃない。
パシン
今度は何の音?あれ?バスのフロントガラスにあんなヒビなんて入ってたっけ?なんで、運転手がぐったりしてるの?
「おい!しっかりしろ!」
「いやぁ!」
とりあえず運転手の様子を見よう。あ、ダメだ。胸からすごい血が出てる。これは助からない。
「おい!そこのお前!早くサイドブレーキを引け!」
へ?サイドブレーキ?何で?ってか、後ろで座ってないであんたもこっちに来なさいよ。
「前を見ろ!」
前を見たら、すでに首都高の防音壁が目の前に迫っていた。終わった。
路線バスは、防音壁を突き破って下の交差点に落下した。




