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著者 足軽三郎
(敬称略)
★☆
この度、日頃親しく交流させていただいている足軽三郎さまから、このようなスピンオフ作品を頂きました。
本編開始前、エリオットと出会う前のテオの物語をお楽しみください。
俺が何故魔装具の修理を生業にしているか、か。そうだなあ、理由は色々あるけれど......
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コンコンという控えめなノックの音が室内に響く。「どうぞお入りください」と俺が声をかけると、古びた扉はキィと軋みながらも開いた。最近手入れしてないからな、と心の中で誰に言うでもない独り言を呟いた。
「あの、あなたが店主さんですか」
「ええ、カーシュナーと言います」
客の問いに簡潔に答える。カーシュナーは偽名だ。正式にはテオドール・ティリットというんだけど、訳あって一見の客にはこれで通している。
入店した客にソファを勧めながら観察する。小綺麗な服装をした若い--俺より少し下かな--女だ。栗色の癖がある髪をシュシュでまとめ、脱いだコートを自分の膝の上で畳んでいる。どちらかといえば大人しそうな、悪く言えば気弱そうな感じに見えた。
この店"万屋カーシュナー"は別に怪しい店ではない。だが大通りに面した華やかな店でもない。女一人で入るのは人によっては躊躇うだろう。にも関わらず、気弱そうに見えるのにこの客の視線はしっかりとしている。事情ありの依頼かと当たりをつけた。
「あの、こちらは魔装具の修理を請け負っていると伺ったのですが」
「はい。粉微塵にでもなっていなければ大抵の魔装具は直せますよ。お困りなのですか?」
俺の問いに女は頷き、小さな鞄から包みを取り出した。その時急に思い出したように「ルネと言います、済みません、名前も申し上げず」と頭を下げたので気にしないよう伝える。お客様は神様ですから。
さて、それより問題はだ。何を修理して欲しいんだろうか? 単なる勘だが何か訳ありの物を持ち込んできている気がするんだが......見れば分かる。
ルネが包みをほどく。シルクらしき包みがふわりとほどけると中から現れたのは、真鍮の鈍い輝きを放つ拳大の物体だった。表面に微細な彫り物が施され、それが上品な美しさを俺に訴えかけてきた。「ボイスレコーダーですか。中々いい品に見えますね」とお世辞抜きに言うと、ルネは微笑んだ。少し悲しそうな顔で。
「母の物なんです。一年前に亡くなって、遺品を整理していたら出てきたんですが」
そして、彼女の指がそっとボイスレコーダーに触れる。
「--再生しなくなっていて。それで修理をお願いしようと」
「なるほど」
母に縁がある品という訳か。しかし彼女の年齢から推察すると、母親は若くして亡くなったことになる。不躾ながら聞いてみると、肺を悪くしていたとのことだった。運がないな。
もう少し詳しい経緯を聞いてみる。ルネによると、彼女の母親は亡くなる前の三ヶ月間はずっと入院していたらしい。元々入院した時の身の回りの物の中にはこのボイスレコーダーは無かったらしく、母親が亡くなり葬式を終えてから初めて気がついたという。
「病院の方に聞くと、亡くなる一月ほど前に母に買ってきてほしいと頼まれたそうです。治療の妨げになるものではないので、医師も了承したらしいんですね」
ふむ、と頷きながら俺はボイスレコーダーを手に取る。事情は分かった。しかしそうなるとこれに録音されているのは、彼女の母親の声--それも家族に残したメッセージの可能性が高い。勿論ルネもそれは承知の上でこの店に持ち込んできたのだろう。だがそうなると一つ疑問が残る。
「これの存在自体はご存知だったんですよね。何故今になって再生してみようと思ったんですか?」
「母が亡くなった後は、これに限らず母の残した遺品に触る気になれなかったんです。思い出が甦って涙が出てくるので......でも事情があって家の荷物を整理しなくてはならなくて」
答えるルネの視線を追って俺は気がついた。彼女の左手の薬指にはまる指輪にだ。小粒なダイヤが部屋の光に反射し、華やかに輝く。
「ご結婚されるわけですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます。ええ、それで引っ越しすることに、あ、言い忘れましたが父と同居していまして、父も私達のすぐ近くに引っ越すことになったので。それで今の家の荷物を整理していたのです」
「その時にお母様の遺品に改めて触れた、と」
「ええ。時間が経過したのもあって、懐かしくなって色々といじっている内にこのボイスレコーダーも手に取っていたんです」
だが微かな期待に駆られて再生ボタンを押してみても、何の反応も無かった。結婚という一大イベントを前にしたせいもあるのか、ルネは母の声が無性に懐かしくなり修理を決意したのだという。
まあ、録音されているのが彼女の母親の肉声である可能性はかなり高いが、さりとて他の音の可能性だってある。更には実際は全く使われなかった可能性もあるのだ。修理しても無駄に終わるかもしれないと指摘したが、それでもいいらしい。「それならそれで諦めがつきますから」ときっぱりと依頼人が言うならば、俺がどうこう言えることじゃないからね。
「一週間あれば直せると思います。料金は後払いでお願い出来ますか」
「分かりました、それではよろしくお願いします」
振り返りドアに手をかけた時、ルネは不意に立ち止まった。こちらに背を向けたまま「式、一ヶ月後なんです。その前に直りそうで良かった」と低く呟いてから、すっとドアを開けて出ていった。
ふむ。彼女の気持ちは俺には分からないけれども。
(きちんと修理はするよ)
預かったボイスレコーダーをそっと触る。冬の空気に冷えた真鍮は何も返してこなかった。
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魔装具の修理なんかしなくても、他にやれる仕事はいくらでもあったろう。奇妙な縁があって他人の屋号付の店を運営してはいるが、別にここを畳んで他に仕事を見つけても特に問題はない。俺の個人的な思い入れがそれを邪魔するくらいだ。
ならば何故ここに固執しているんだろう。自分なりに考えてみることもある。自分の生活リズムに合っているから? 手先が器用だから修理は得意だから? エナジーの流れを可視化できる己の能力を生かせるから?
そのどれもが正解とも言える。
そのどれもが外れとも言える。
ただ一つ確かなのは、魔装具の修理を引き受けて、実行して、お返しする。その一連の流れが自分に染みついてしまい今更他のことをやるのは面倒だってこと。そもそも贅沢は特に好まないので、雨風が防げる住居と香り高いコーヒーがあればそれでいい。
もっとも贅沢を言うなら、美味なコーヒーを淹れてくれる助手でもいれば言うことは無いが......今のところあては無いんだな。
「さてやるか」
ルネからボイスレコーダーを預かって三日後の夜、俺はようやくこいつの修理にとりかかり始めた。他の修理案件が一段落して余裕が出来たんだ。あと四日もあれば余裕だろう。自慢じゃないけど、調子に乗った時の俺の集中力は凄い。三日くらい徹夜して連続で仕事出来る。その後三日連続で寝るので、うん、トータルで見たら効率は悪いかもしれないけど。
濃い目にいれたコーヒーが入ったマグカップが修理仕事のお供だ。手元を照らす照明魔装具の向こうにある専用の棚に置く。机に置くと何かの拍子でこぼすからね。いや、実際修理中に倒して悲惨な目にあったから経験から学んだわけだ。
ボイスレコーダーの継ぎ目を繋ぐ小さなネジを、ドライバーを使い外していく。これも外す順番があり、それを間違うと後で組み直すのが大変だったりするので注意しなくてはいけない。机の上に敷いた布に外したネジを順番に並べる。
窓の外には冬の闇が広がっている。微かに通りのざわめきが聞こえてはくるけど、それはこの部屋の静寂を却って際立たせていた。必要分だけの明かりが俺の手元を照らした空間に、コーヒーの香りがゆるりと漂う。修理をする時のいつもの状況だ。
俺は自分が神経質な人間とは思ってはいないけど、それでも手先を使う作業は煩い状況では出来ない。ある程度の静けさと自分の好みに合わせた部屋はやっぱり必要だ。そしてそんな条件で仕事が出来るのを気に入っているからこそ、魔装具の修理を請け負っている......のかもしれない。
手先、特に指に神経を張り巡らせて慎重にボイスレコーダーの部品を探る。その一方で頭の片隅では別のことを考えていた。
(結婚か。俺には......どうなんだろうな)
依頼人ルネが漏らした"一ヶ月後に控えた結婚式"という言葉は、ほんの少し俺の心に波紋を作った。
他人の幸福は人並みに祝福出来るが、それを自分に当てはめて考えてしまうんだ。
人生を共にしたい、共に出来ると考えたパートナーを見つけるってことは、そうだな、魔装具の修理よりもずっと難しいことに思えるよ。別に俺は女性に興味が無いわけじゃないし、変な性癖があるわけじゃない。真剣に恋愛してみる気になったら、多分お互いが好意をもてる関係を築ける相手を見つけられるんじゃないか--多分だけど。
けれど何となくそうしてみる気は起きなかった。何だろうな、寂しいと思わないからかな。他人から見たらまた別なんだろうけど、俺--テオドール・ティリットは今の生活を壊したくないと願っているからだろうか。
(それだけじゃないくせに)
ちらりと頭をよぎる声を無視する。忘れられない光景を努力して胸の内にしまいこむ。
床に倒れた男の姿が脳裏に浮かぶ。ダークスーツの胸に穴が空き、そこから流れる血の赤と微かに立ち上る硝煙の黒が瞳に焼き付いて離れない。俺は--まだ小さかった俺は、喉も裂けよとばかりに声を枯らして叫ぶんだ。"父さん"と。
目を閉じる。瞼を指で軽く押し、頭の中に巣食う悪夢を追い出そうと--抑えつけようと意識する。駄目だろ、テオドール。今は仕事中だ。これ以上自分を責めるのは止めろ。自分が他者を求めない原因の一つに向き合うのは......止めろ。
頭の中のモヤモヤを振り払い、ボイスレコーダーの修理に集中する。故障の原因はすぐに分かった。音声を録音する音庫から再生装置へ繋がる細いケーブルが焼き切れていた。本来は赤銅の明るいメタリックな色のそのケーブルは、黒くくすんでいる。原因は分からないがエナジーの流れが一極集中してしまい、耐久限界を超えてしまったのだろう。
うん、それなら取るべき手は決まっている。まず銅線自体の交換は必須だ。それに加えて、ボイスレコーダー内のエナジーの出力のムラを無くせば今後はこんなことも無くなる。
通常ならこんな小さな機械内に流れるエナジーを可視化するなど不可能だが、俺には出来る。胸ポケットから取り出した眼鏡をかけ、意識を集中していくと何となく分かるんだ。ボイスレコーダーの動力として使われているエナジーの波動、その強さや強弱のリズムが。
(ちょっと手加えるか)
コーヒーを一口飲み、更に作業に取り組んだ。このボイスレコーダーに記録されているであろう、ルネの母親の肉声を甦らせる為に。
空気中のエナジーを取り込むエアフィルターを新品に替えておくか。あとは部品に付着しているオイルを拭い、埃を掃除すればかなり違うはずだ。
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「直りましたよ、ルネさん」
「え、ほんとに!? ありがとうございます!」
一週間が経過した約束の日、正午ジャストにルネはやってきた。俺が差し出した思い出のボイスレコーダーを手に取り、嬉しそうに笑う。いとおしそうに眺めるその姿から満足感が伺えた。
いつもならこれで万事解決、修理代金をいただいてお仕舞いなんだが。今回は修理の性質上、ちょっと俺は言わなくてはいけないことがあるんだ。すぐに代金を払おうとするルネを制する。
「すみません、今回ボイスレコーダーの修理ということで修理が終わった後で、その、再生が出来るかどうか試さざるを得なくてですね」
歯切れの悪い俺の口調に、ルネは何を言いたいのか気がついたようだ。「いいんですよ」と小さな声でなだめてくれるけど、ま、それでもさ。
「--録音されていたお母様の声を聞いてしまいました。致し方なかったとはいえ、依頼人のプライベートに踏み込むような真似をしてしまい......すみません」
「そうですか、やはり母がこれを使って」
良かった。ルネに怒った様子は無い。確かに怒られても困るんだけど、無事に回避出来たのでホッとする。
「ええ、ここでは細かい内容は申し上げません。ただ一つ言えることは......素敵なお母様でいらっしゃったと思いました」
ボイスレコーダーに録音されていたルネの母親のメッセージ。それはあまり長い物では無かったけれど、娘を案じる優しさと思いやりに溢れていた。深夜に一人で聞くと、見ず知らずの他人の俺でも少しばかり涙ぐむような--そんなメッセージだった。
「分かりました、ありがとうございます。家に帰ってから聞いてみますね」
規定の修理代金を払い、深々とお辞儀をしてからルネは店を出ていった。ボイスレコーダーは大事そうにまた布で包み、鞄の中に仕舞いこんでいる。母親の声、それも亡くなる直前となればそれも道理だ。
どんな気持ちであのメッセージを聞くのだろうか、と思いつつ、俺は台所に向かった。一仕事終えた後はコーヒーを飲みたくなる。但し今日だけは疲れたから砂糖多めで。
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華やかな場所は嫌いじゃない。
だけど場合によっては居心地の悪い時だってある。そう、例えば自分の知人や友人がいない結婚式に特別ゲストとして呼ばれた時なんかは特にだ。
(うーん、やっぱり断るべきだったかな)
隅の方の席に座り、俺はオレンジジュースの入ったグラス片手にため息をつく。久しぶりにクローゼットから取り出した一張羅のスーツと青のネクタイは組合わせは悪くないはずだが、普段楽な格好しかしないのが祟りやたら緊張するじゃないか。ただでさえ所在無いのにさ。
しかし文句を言っても仕方がない。救いは丸テーブルごとに座る形ではなく、立食パーティー方式なので俺みたいなのが一人いてもそこまで目立たないことだ。そろそろと視線を動かすと、一番前の大きな席に座る結婚式の主役が視界に捉えようとする。
落ち着いた照明が頭上から注ぎ、その場を浮かび上がらせている。壁に豪華に飾り立てられた色とりどりの花束は、今日この場のめでたい雰囲気を盛り上げ華やかさを添えているその前に--いたいた。
人の波の隙間から、純白のウェディングドレスを着た女は生涯の伴侶の隣で笑っているのが見えた。それは俺にボイスレコーダーの修理を頼んだルネの晴れ姿だ。そう、何故か俺は彼女から招待状をもらい、この結婚式に呼ばれたんだ。最初はびっくりして断ろうかと思ったけど、招待状に添えられていたメッセージを読んで気が変わった。
(全く、あんなこと書かれたら行かないわけにはいかないじゃないか)
"母がボイスレコーダーに残したメッセージを式で流したいんです"
ルネはそう書いていたんだ。修理終了時に一度それを聞いた身としては、若干の後ろめたさと興味を覚え、そしてルネの気持ちを考えさせられ。今この場にいるってこと。
新郎新婦の入場から始まった結婚式は、ここまではごくごく順調だった。夫婦の誓いを神父の前で交わした二人の姿は初々しく、列席者から拍手を貰っていた。親族の挨拶、友人代表によるスピーチが終わるとそのままこの立食パーティーへと移行したんだ。うん、何も問題は無い。ああ、そうそう。ルネの父親がルネの肩を支えるようにして入場してきたんだけど、事情を知る人達は既にその時点で涙ぐんでいたな。
そう、当然のことではあるがこの場にルネの母親はいない。一年前に病で息を引き取った彼女の代わりに、一枚の写真があっただけだ。やっぱり切ない物ではある。
ただ俺としてはボイスレコーダーの所在が気になったけど、それはまだ出てきていない。忘れたのかな。もしそうなら拍子抜けだけど、それはそれで......
だけど俺の推測は外れた。俺がオレンジジュースにも飽き、何杯目かのワインを飲み干した頃にそれは起きた。会場の最前列で立ち上がったルネが見え、次にその口から紡ぎ出された言葉が会場に広がる。
ああ、そうか。これからなのか。忘れるわけなどないよね。
「皆さん、今日はご来場いただきありがとうございました。式も終わりに近づいた今、皆さんに聞いていただきたいことがあります」
ルネの凛とした声が響く。会場のざわめきが徐々に静まり、全ての視線が彼女に集まる。
「ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、私の母は一年前に病気で亡くなりました。私の結婚を誰よりも楽しみにしていましたが、その願いは叶うことなく......息を引き取りました」
ああ、だからなのか。ルネ、君は今日あのメッセージを皆に聞かせたいと。そう思ったのか。
ルネは話す。ボイスレコーダーが母が入院中に購入した物であること、母の遺品のそれを先日動かしてみようとしたこと。故障していたそれを直してもらったことを。ボイスレコーダーの修理に話が及んだ時、ルネが唐突に「その修理をしていただいた"万屋"カーシュナーさんにも、本日お越しいただいています。あちらに」と言い、白い手袋に包まれた手で俺の方を指した時にはびっくりしたけどね。
唐突に自分に集まる視線にびびり、「あ、どうも」と曖昧な笑いで逃げる。ルネさん、とんだサプライズだね。ま、いいけど。
「--今日、この式に母は列席出来ません。ただ、その代わりに母が残した、私に残してくれたこのメッセージを......是非皆さんにも聞いていただきたいと思います」
言葉の最後を震わしながら、ルネは両手でボイスレコーダーを持つ。真鍮製のそれは照明を受けて、誇らしげに輝いていた。会場に静かに充ちる沈黙はけして不愉快な物じゃない。少しの期待、少しの興味、そして優しさが混じったそれがルネにも伝わったのだろう。
彼女の指が再生ボタンを押す。止まっていた時が動き始めた--
ルネ。これをあなたが聞いているということは、私がこの世にいないということでしょう。私は今、このボイスレコーダーに向かって話しています。恐らく長くはもたない自分の体のことを考えると、こんな形でも自分の気持ちをあなたに伝えたくなりました。びっくりした?
変ね、話したいことはたくさんあるのに、いざこうやってみると胸がいっぱいでね。何から話していいのか分からないの。ああ、でもこれだけは言わなくちゃ。私は......あなたを生んで良かった。まだハイハイも出来ない赤ちゃんの頃も、初めてママって呼んでくれた頃も、学校に通い始めた頃も、反抗期を迎えて喧嘩した頃も、初めてのお給料でパパと私にプレゼントを買ってきてくれた頃も全部覚えていて。そして、私はいつもあなたが大好きです。赤ちゃんの頃から大人になった現在も、全部のあなたが私の誇りなの。
いつか言っていたわね。「結婚式にはちゃんと出てね。私の花嫁姿見せてあげたいから」って。そうね、本当に......本当にその日をこの目で見たかったけど。無理みたいで、ね。ごめんね、ルネ。頑張ったけどどうしてもこれ以上は私は、私の体はもう。もたないみたいなの。
あなたのウェディングドレス姿を楽しみにしています。大丈夫よ、あの世から見ていてあげるから。だから、ルネ。最愛の私の娘。幸せになってね。母より。
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そうだなあ、俺が魔装具の修理をやってる理由ねえ。
時々さ、誰かを幸せにする助けになってるかなって思えるからかな。自分の技術がそんな風に貢献しているって思えるのは、中々悪くないもんだよ?




