表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/56

48.支える者たち(叡智視点)

 暗い部屋の片隅で、魔灯が灯っている。その机には設計図や物が散らばっていて、全てが途中で終わっていた。


 そんな机に体を預けて、レティシアは寝ている。気持ちよさそうな寝息を立てて、幸せそうに寝入っている。


『レティシア、起きてください。レティシア』


 そんなレティシアに何度も声を掛ける。その体を揺する手がないから、声を掛けるしかない。なので、精一杯声を掛け続けた。


 かなりの音量で声を掛けていたのだが、レティシアが起きることはなかった。深い眠りに入っているのか、まったく反応を見せなかった。


 このままでは風邪を引いてしまうかも。そう思うのだが、毛布をかける手はない。もし、自分に手があれば、毛布をかけてあげられるのに。


 仕方がない、私には体がないのだから。いつものオチに落ち着いた。


 私が出来ることは、レティシアが起きそうになったら、声を掛けて起こすくらいの事だろう。なので、その姿を確認し続けた。


 静かな夜。レティシアが起きていると騒がしいけれど、レティシアが寝るといつも訪れる穏やかな時間。


 今日もそんな時間が過ぎ去ろうとした時――ノックの音が響いた。


 扉を見てみると、セリナがそっと部屋に入ってきた。


「レティシア様?」


 不思議そうな顔をしてセリナがレティシアに近づいてきた。そして、その顔を見ると呆れたようにため息をつく。


「もう……疲れているなら、ちゃんと休まないとダメですよ」


 その言葉に心が痛い。私がもっと、レティシアに強く言えていたら、こんな事にはならなかっただろう。厳しくしているつもりが、甘くなっていたようだ。


「きっと、叡智様の声も聞かなかったのでしょうね。叡智様、お疲れ様です」


 突然、声を掛けられた。私の姿が見えないのに、私の声が聞こえないのに、このセリナは時々私に話しかけてくる。


 すると、セリナがレティシアを抱えて、ベッドへと移動をした。優しくベッドに寝かせると、レティシアに布団をかける。


 こんな状況になってもレティシアは目覚める事はしなかった。相当、疲れが溜まっているらしい。


「叡智様、レティシア様はまた無理をしているんじゃないですか?」

『……そうですね。無理をしていると思います』


 私の声が届かないのは知っている。だけど、その言葉に返答したくなった。


「小さい頃からそうでした。何かに夢中になると、つい無理をしてしまうことを」


 セリナは懐かしむように微笑みながら、レティシアの額にそっと手を当てた。


「まだ小さかった頃、覚えてます。木製のオルゴールを作ろうとして、夜通し工具を振るっていた日があって……。手が真っ赤に腫れて、泣きながらも『どうしても完成させたいの』って言って」

『ありましたね、そんな事。私の知識を使って、夢中になって作っていました。』

「『叡智の言う通りにすれば出来る!』って言って、ついに一人で完成させました。その時の笑顔が本当に良い笑顔でしたよね」

『いつもの王女としての尊厳のある顔から、無邪気な子供ような顔をしてましたね。当時としては、とても珍しい表情でした』

「あんな風に笑えるのだったら、レティシア様を応援しなければと思っていました……」


 優しく微笑んだあと、セリナは少し表情を曇らせる。


「ですが、無理をして寝込んだこともあります。その時のお辛そうな表情は、とても心が痛かったのを覚えています」

『小さい頃は寝込んだことがありましたね。とても辛そうにしていたのを覚えています』

「その姿を思い出すたびに切なくなって、頑張って欲しくないと思ってしまうのです。もう少し、楽な方を選ぶことも可能だというのに……」

『そうですね。でも、レティシアはその選択をしなかった。自分のやるべきことが分かっているのです。だから――』

「だから、応援したくなるんですよね」


 私が言いたいことをセリナが言った。どうして、こんなに考えたことが合うのだろう? もしかしたら、声が届いている? いいや、そんなはずはない。


「きっと、叡智様も同じ気持ちで……だから、レティシア様の事を見守ってくれているんですよね」

『私が言っても聞かないだけですよ。それだけ、レティシアには強い思いがあるってことです』

「きっとレティシア様がこんなに頑張れるのは、頼りになる叡智様が傍にいるからだと思うんです。だから、安心して進めると思います」

『……そうでしょうか?』


 私の存在がレティシアの努力の礎に? 私はただ知識を与えるだけの存在。それ以上の存在ではないはず。


「これからも、レティシア様を一緒に支えていきましょう。叡智様が傍にいるだけで、とても安心出来ます」

『……一人でなくて良かったです』



 私は知識を与える存在だけではなく、支える存在になっていた。レティシアはいつも私に存在意義をくれる。お陰で私が私になれた。


 だから、これからも支えていこう。レティシアが真っすぐ自分の道を進めるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
さて、皆さん前々回の感想欄覚えてますか? ティンタクル「特に変わった事といえば処された町長のやらかしか?」 ゴリ「前回、被害者の手で追放・処刑されたよな?」 ところが汚いモノを見せた事で寝込んだとえぃ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ