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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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39.魔鉄職人の解決法

 この領を支えていた産業がある。それは鉄鉱石から鉄を作る製鉄業。魔石を加工して様々な動力部に利用する魔石業。そして、鉄と魔石を合わせて作る魔鉄業。


 製鉄業や魔石業は他の領にも存在しているが、魔鉄業は他とは違う。鉄と魔石を別々の領から買い入れて、自領で作るのが一般的だ。


 だけど、ランベルティ地方は偶然にも鉄と魔石の両方に恵まれた土地だった。だから、買い入れをする必要性がなく、買い入れて作っている領よりも低コストで作れて品質もいい。


 低コストで品質のいい魔鉄を作れるのはランベルティ地方しかなかった。だから、魔鉄は良く売れたし、ランベルティ地方の特産品でもあった。


 その魔鉄を作れば、財政は持ち直せる。そう思っていたのに――。


「魔鉄職人は技術と経験が必要ですから、職人さえいれば魔鉄を作れます。その職人欲しさに、他領が引き抜きをしたのでしょう」

「魔道具が人々の生活に浸透していったお陰で、魔道具は普及し始めた。魔道具の必須材料の魔鉄の需要は年々上がってきている。これから伸びる産業の職人を確保したいのはどこも考えることね」

「今まで魔道具は貴族だけのものでしたが、庶民にも使用が許可されると爆発的に需要が高まりましたね。今は、少しずつ庶民の間に魔道具が普及していますが、まだまだ数が足りていません」


 魔道具が開発されてまだ三十年くらいだ。始めはその希少性から貴族だけのものだったが、開発が進むと大量生産が可能になり庶民の手に届くほどになった。


 庶民向けの魔道具の開発は大きな商機だ。だからこそ、魔鉄を巡る競争は激化し、職人たちは高額な報酬や優遇措置を提示されて、次々と他領に移ってしまった。


 ランベルティ地方は肝心の技術者を失ってしまった今、魔鉄の生産体制が崩壊寸前となっていた。


「困ったわね……。魔道具特需で職人が奪われてしまうなんて」

「今から職人を育てるには時間がかかります。すぐには魔鉄生産に着手することが出来ないでしょう。しばらくは、鉄と魔石で領を立て直すしか……」

「それじゃあ、時間がかかりすぎるわ。魔鉄と魔道具の生産で財政を復活させようと思ったのに……」


 鉄と魔石だけでも、財政は潤っていく。だけど、今は魔道具特需があるから、その波に乗るのが一番手っ取り早い。


「どうにか、他領から職人を引っ張って……」

『その必要はありません』

「えっ?」


 考え事をしていると、叡智の声が頭に響く。


『魔鉄の製造には技術と経験が必要ですが、教われば誰でも身につくものです』

「本当ー? だって、そういう人達が少ないから引き抜きがあるわけだし、そう簡単に出来るものじゃないんじゃない?」

『しっかりとした工程を踏めば誰でも魔鉄を作れるようになります。その製造方法は私が分かっています』

「じゃあ、叡智の指導を受けた人は魔鉄職人になれるってこと?」

『必ず、魔鉄職人になります』


 物凄い自信だ。叡智がそう言うのであれば、そうなのだろう。だったら、他領から職人を引き抜くよりも、一から育てたほうが早いってことかしら?


 叡智の言葉を信じてきて悪くなったことはない。よし、なら今回も叡智を信じてみよう。


「叡智の言葉を信じて、魔鉄職人を育ててみることにするわ。ドリス、製鉄所で働いていた人を集めておいて」

「分かりました。上手くいけばいいですね」

「叡智が自信満々に言っているんだもの、きっと上手くいくわ」


 ◇


 それから数日後、製鉄所の前にはかつてそこで働いていた工員と新しく募集した新人たちがいた。


 かつての工員たちは再びこの仕事が出来るとあって、とても嬉しそうな雰囲気だ。この様子なら、しっかりと働いてくれそうだ。


 新人たちはちょっと不安げにしているものの、手に職を持ててどこか安堵をしている様子だった。


 早く、領都フォリンダを復活させなきゃ住民が流出してしまう。だから、この製造業を軌道に乗らせる必要がある。


 みんなが集まっている所に私は前に立った。


「集まってきてくれたこと、感謝するわ。私が領主のレティシア・アナスタージよ」


 その一声でざわつきが収まり、皆がこちらを向く。


「我が領で鉱石が採れなくなってかなりの時間が過ぎたけれど、この度また鉱石を採れるようになったわ。また、昔のような領に戻ると思う」


 私の言葉に工員たちはとても喜んだ様子だ。これで領が救われる、誰もがそう思っただろう。


「製鉄業と魔石加工に携わってきた人たちには、そのまま同じ作業をしてもらいます。新しく来た人達には魔鉄生産に携わってもらいます」

「新しく雇われた人たちが……あの魔鉄生産を?」

「確か、経験者は殆どいなくなったんじゃ……」


 事情を知る人達がざわつき出した。身近で魔鉄生産を見ていたからか、新人に魔鉄生産を行わせることに不安を抱いているみたいだ。


 その様子に新人たちにも不安が広がった。もしかして、難しい事をさせられるのではないかと思っているらしい。


「みんな、不安なのは分かるわ。でも、大丈夫よ。ここには、どの職人にも負けない知識を持った存在がいる。その存在にかかれば、魔鉄生産は上手くいくわ」


 そう宣言すると、みんなが盛り上がった。


「そんな凄い人物がいるなんて! 一体、どこにいるんですか!?」

「職人気質の気難しい人かな? どんな人なんですか!?」

「もしかして、すでに製鉄所の中に?」

「ここよ、ここ。目に見えないけれど、凄い存在がいるのよ」

「……ここ?」

「おい、見えるか?」

「誰もいないけれど……」


 意味が伝わらなかったのか、みんなの勢いが萎んでいく。それどころか、とても不安になっていっていた。


 くっ、どうして叡智って誰にも見えずに聞こえないのかしら! いいわ、また叡智を認知させるだけよ!

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― 新着の感想 ―
一先ず認知は諦めて「私が知ってる」と言えばいいのに ???「それが小娘の限界よwそのまま信用を失って失敗しなさい‼️」 町長「おい!そこの貧相な女!」 ┏━┓ ┃鏡┃ ┗━┛ ???「貧相な女?目が腐…
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