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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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34.大きな障害

「さぁ、十分に休憩したわね。頑張って瓦礫の撤去を進めるわよ」


 坑道の前に立ち、女性たちに向けて言葉を発する。すると、女性たちは元気のいい声を出してくれた。この様子なら、何時間でも作業が出来そう。


 私はハイドとガイ、二名の鉱員を連れて坑道の奥へと入る。しばらく歩くと、崩落の瓦礫で塞がれた通路にやってきた。


「じゃあ、掘るわよ。先に鉱員たちが一緒に掘ってくれる? ハイドとガイは砕けた瓦礫を女性たちに渡して」


 指示をすると四人が力強く頷いてくれた。四人とも元気が満ち溢れていて、期待感が溢れる。これなら、早く瓦礫の撤去が進みそうだわ。


「叡智、目標地点まであと何メートル?」

『残り19メートルです。それに、いい知らせがあります』

「いい知らせ?」

「どうやら、向こう側でも瓦礫の撤去をしているようです」

「そう! まだ動ける元気があったのね!」


 その報告は朗報だ。


「ねぇ、聞いて。向こう側でも瓦礫の撤去をしているみたいよ。だから、もうひと踏ん張りで出会えるわ!」

「なぜ、そんなことが……」

「分かるわよ。なんてたって、私の叡智だからね」

「叡智って凄いんだな。でも、希望が見えてきた。あいつらを助けるために、死力を尽くすぞ」


 まるっきり信じてくれなかった鉱員たちだったが、今になっては少しは叡智の存在を信じてくれていた。


 その話を信じると鉱員たちの表情に力がこもる。この士気なら、問題なくこの瓦礫は撤去出来るわ!


「じゃあ、始めていくわ」


 私は風魔法を発動させて、地道に瓦礫の撤去を開始した。


 ◇


 士気の高い現場は作業が思った以上に早く進んだ。瓦礫を粉砕する鉱員たち。後ろで手伝うハイドとガイ。瓦礫を外に運び出す女性たち。


 一糸乱れぬ動きをして、埋もれていた瓦礫がみるみるうちに減っていく。一メートル、二メートル、三メートル。どんどん、瓦礫はなくなっていく。


 この調子なら、崩落に巻き込まれた人達と会えるのも時間の問題。期待感が高まり、私たちの動きはさらに活発になっていった。


 だけど、目の前の瓦礫を撤去した時――私たちの目の前に通路を塞ぐ、大きな岩が現れた。


「こ、これは……」

『こんな岩があったのですね。見つけられなかったのは私の落ち度です。今、この岩の大きさを計ってみます』


 叡智の検索能力でも見つけられなかった大岩。きっと、他の瓦礫と一体化していて、分からなかったのだろう。


『計測完了しました。この大岩はこの通路の約三倍の大きさです』

「通路の約三倍……」


 その巨大さに言葉を失った。


「こんな大岩があるなんてっ!」

「こんな大岩、どうすればいいんだ!」


 大岩を見て、鉱員たちは悲痛な叫び声を出した。その声を聞き、後ろで作業していた女性たちが前に出てきた。そして、目の前の大岩に絶句する。


「嘘……こんなことって」

「こんなのどうすればいいの?」

「これじゃあ、助かられないじゃない!」


 みんな、この大岩を見て絶望していた。誰もがこんな大岩なんて撤去出来ないと思っているのだろう。だけど、私は……いいえ、私たちは違う。


「ここにあるのは、通路よりも大きな大岩だけど、石には変わりないわ。だから、打ち砕ける」


 迷いのない言葉をかけると、鉱員と女性たちは驚いた顔になった。


「おいおい。まさか、この大岩を撤去するつもりじゃないだろうな」

「無理だよ、こんな大岩」

「いいえ、可能よ。私の力を使えば、こんな大岩すぐに小石に変えてあげる」


 私の言葉にみんなが戸惑いを見せる。どうやら、私の力を甘く見ているようね。今は小規模の魔法でチマチマやっているけれど、私の力はこんなものじゃないんだから。


「みんな、下がって。この大岩を打ち砕いて見せるから」


 そういうとみんなが後ろに下がる。十分に下がったのを確認すると、改めて大岩に向かい合った。


 通路の約三倍の大きさの大岩。これを打ち砕くのは大変だろう。だけど、こんなに長いトンネルを鉱員たちだけで掘れるんだから、魔法が扱える私が出来ないはずがない。


「叡智、少し力を強めても大丈夫かしら?」

『検索します。……周囲の岩肌に余計な亀裂が入っておりません。なので、少し力を強めても崩落は起きないでしょう』

「その言葉を待っていたわ」


 叡智のお墨付きも貰えた。これで力をもっと使うことが出来る。


 手を構えると、深呼吸をして魔力を高める。あんまり高めちゃうと、威力が大きすぎて崩落の危険を招くから、ほどほどに止めておく。


 よし、これくらいでいいわね。じゃあ、あとは風魔法で打ち砕くのみ!


「行くわよ!」


 魔力を解放し、風魔法を放った。手から次々と現れる風の刃。その風の刃は大きくて固い大岩の端を豪快に削り取っていく。


 それはまるでパンを引きちぎるかのようにいともたやすく。大岩が削れていき、その大きさはどんどん縮小していった。


「凄い。大岩が簡単に小さくなっていく!」

「レティシア様、凄い!」


 後ろで控えていたハイドとガイが私の魔法の威力を見て驚いている。本当はもっと派手な魔法を使って驚かせたいけれど、今はこれが限界。


『バランスが悪いです。平均して通路から見えている所を削りましょう』

「分かったわ」


 三メートルを削り切った時点で叡智からの助言が来た。その方が危なくないわ。私は下部を削るのを止め、上部を削り始めた。


 連続して魔法を発動させると、大岩の姿が変化していく。圧倒的な物量を誇っていた大岩が数分もしない内に小石へと変貌していったのだ。


 そして、上部を削り取っていた時、大岩の上部が落ちてきて通路を塞いだ。通路の三倍もあるのだから、通路の面積だけ削りとってもダメだという事だ。


 だけど、それが何か?


「さぁ、まだまだ削るわよ!」


 そんなもの障害でもなんでもないわ。落ちてきた大岩に向けて風魔法で削り取る。大岩は再びその面積を減らした。


 そして、また削り切ると上部から最後の大岩が落ちてくる。


「これが最後ね!」


 私は威力を緩めるどころか、少し上げて大岩を削っていった。辺りには削った大岩の欠片が散乱している。


 だけど、今はその小石よりも大岩を撤去するほうが先決だ。大岩はどんどん削れていき、大岩の姿は綺麗に消えた。


 奥に見えるのは、見慣れた瓦礫の山だけ。


「どう? なんとかなったでしょ?」


 振り向いてそういうと、始めは反応がなかった。どうしたんだろう? と、不思議に思ってもう一度訪ねようとした時、歓声が上がった。


「本当に大岩が消えちまった! なんて凄い魔法なんだ!」

「これでお父ちゃんたちを助かられる! 本当にありがとう!」

「レティシア様、万歳!」


 みんなが手放しで喜んでくれた。それを見て、私もホッと安堵する。


『お疲れ様です。次は仕上げといきましょうか』


 何よりも相棒の労いが良く効いた。じゃあ、崩落したみんなを救出するわよ!

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― 新着の感想 ―
きっとこの岩は赤かったんだろうな ティンタクル「丁度よさそうな仮面が………町長ちょっとこい」 ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ゴリ「このヘルメットは要らないな」 ♕⌒ ヾ(*´ー`) ポイ
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