表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/56

30.坑道の現実

 自分の採掘を後回しにして、鉱員たちの作業場にやってきた。作業場の外には誰もおらず、問題なく中に入れそうだ。


「奥まではいかないからね。入口付近までだよ」

「えぇ、分かっているわ。それで十分よ。そうよね、叡智」

『はい、それくらい入れば中の構造を把握できそうです』


 なら、大丈夫だ。少年はこちらを少し警戒するように見ると、坑道の中に入っていった。


 坑道内は坑木がしっかり組まれていて、見た目はとても安心できる。さすが、鉱員のいる坑道だ。その辺りはしっかりとしている。


 この様子なら、簡単には崩落にはならない。けど、やはり叡智の言っていた言葉が気になる。こんなにしっかりと管理されているのに、現場のミスで本当に崩落が起こるのだろうか?


「今のところ、崩落の危険性は見えないみたいだね」

「そりゃあ、現場のプロがやっているんだから。それには細心の注意を払うだろうよ」

「そうだよ! お父さんたちは凄い鉱員なんだから! 崩落させる事なんて、今まで一度もなかったんだよ」


 ハイドとガイは坑木を触ったり押したりして、しっかりと確認してくれた。なら、入口付近は崩落の危険はないって事ね。


『検索結果ですが、入口付近は複雑に穴を掘っている形跡はありません。問題があるとしたら、この先でしょう』

「何もない事を祈るしかないわね」

「この坑道はお父さんたちが掘っているから安心安全なんだよ!」


 少年が強く訴えかけてくる。その気持ちは分かるが、追い詰められた人間が何をするかは分からない。もし、町長さんたちが鉱石を見つける事に躍起になっていたら……。やはり、早くこの坑道を調べないと。


 私たちはそのまま坑道の中を進んでいく。幾つかの分岐点を進み、どんどん奥へと進んでいく。すると、突然少年が前に立ちふさがった。


「もう、これ以上はいかせないよ!」

「少ししか進んでないわよ?」

「ダメダメ! ここからはさらに道が複雑になっているから、帰れなくなるから」

「それなら平気よ。叡智が道を覚えててくれるから。そうよね、叡智?」

『……』

「叡智、どうしたの?」


 いつもはすぐに反応してくれる叡智が反応してくれない。不思議に思いもう一度声を掛けてみると――


『この奥は危険です。それ以上、進まないでください』


 とても真剣な声でそう言った。その声のトーンに私の背筋がゾッとなる。


「ど、どういうこと?」

『入口の付近はあまり穴が掘られていないので大丈夫でしたが、中盤以降はそうじゃありません。上下左右に明らかに無理に掘ったと思われる形跡があります。きっと、鉱石を掘りだしたいがために、無理をしたのでしょう』

「……っ」


 その言葉を聞いて、言葉を飲み込んだ。


『元々は安全に穴を掘っていたようですが、我慢しきれずに危険な所まで手を出しています。この状態で崩落していないのは偶然でしょう。流石、プロの集団ですね』

「褒めている場合じゃないでしょ! 早く、この坑道から鉱員たちを出さなくっちゃ!」


 無理をしてでも叡智に確認してもらって本当に良かった。このままじゃ、鉱員たちの身が危ない。


「とにかく、奥にいる鉱員たちを呼び寄せなくっちゃ」

「ダメだよ! これ以上は先へは進ませないよ! 約束を破らないで!」

「ねぇ、聞いて。この坑道は危険な状態なの。このままだったら、崩落する可能性があるわ。だから、一刻も早く」

「お父さんたちがミスするわけない! この坑道は安全なんだ!」


 坑道の奥に進もうとすると、少年が邪魔をしてくる。少年は町長たちを信じているようだが、この状況が危険なのには変わらない。叡智の能力は絶対に正しいのだ。それは長年の経験で分かっている。


 少年と押し問答をしていると、足音が聞こえてきた。私たちはそっちに顔を向けると、町長が鉱員を連れて現れた。


「何故、こんなところに?」

「丁度いい所に! 私の話を聞いて!」

「……ここでは無理だ。一度、外に出ろ」


 良かった、話を聞いてもらえそうだ。私たちはすぐに入口に戻って、改めて町長たちと対峙する。


「何故、坑道の中に入ってきた。入って来るなと言ったはずだ」

「そこの少年から話を聞いたわ。もしかして、危険なところを掘っているんじゃないでしょうね?」

「……息子がそう言ったのか?」

「それは叡智が気づいたことよ。あの坑道は調べさせてもらったわ。坑道の奥の方が危険な状態になっている。それはプロのあなたたちも知っていることじゃない?」


 ズバリいうと町長は顔を顰めた。まるで言われたくない言葉を言われたみたいだ。


「ねぇ、分かっているならこの坑道は閉鎖するべきよ。ここで手当たり次第に掘るよりも、新しい坑道を掘ったほうが」

「他の所で採れないから、ここで掘り続けているんだ! これが、俺たちのやり方だ!」

「そのやり方は止めた方が良いわ。鉱員たちを危険にさらす事になるわよ」

「そんなこと、みんなが分かっている」

「えっ……」


 嘘……。それじゃあ、危険と分かって穴を掘っていたってこと?


「そうじゃないと、魔石も鉄も採れない」

「そんな事ないわ! この山脈は鉱石の宝庫だから、他の所を掘ってもちゃんと鉱石が出てくるわ」

「だから、他の所じゃ採れなかったって言っているだろう!? 無駄話はもう止めだ」


 そういうと、町長は坑道に戻っていった。私は慌ててその後を追おうとすると、ついてきた鉱員たちが坑道の出入口を塞ぐ。


「お前を坑道には入らせない」

「ねぇ、私の話を聞いて! この坑道は危険なの!」

「そんなの分かっている。それよりも大事な事があるんだ」

「そんな……命よりも鉱石の方が大事だっていうの!?」

「鉱石を見つけなきゃ、俺たちは生きていけないんだ! だから、ほっといてくれ!」


 必死に訴えるが、私の声は届かない。だけど、このまま見過ごすこともできない。分かってくれるまで、訴えるだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
という訳でゲストさんです! 町長「アーーーーーー↗↗↗↗↗↗↗」 ティンタクル「ヤるぜぇ…俺を見た者は皆ヤっちまうぞ!」 ゴリ「お前を〇す」 町長「既にアーーーーーー↗↗↗↗↗↗二本は無理‼️もう〇ぬ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ