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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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24.鉱員居住区(2)

 女性と子供たちは農具をチラつかせて、私たちを脅してきている。だけど、その程度の脅しじゃ、全く怯まないわ。


「気分を害してごめんなさい。あなたたちが今どんな状況にいるのか、分かっているつもりよ。とても大変な思いだったのでしょう?」

「分かったように言って、私たちを懐柔させるつもりなんでしょ! その手には乗らないんだから!」

「そんなつもりはないわ。辛い思いをしていたって知ったら、私の胸が痛くなったの。これは、素直な私の気持ちよ」

「ふん! そんなの口じゃなんとでも言える!」


 何を言っても、女性たちは喧嘩腰だ。そう簡単に怒りは収まらない。ここでめげていたら、いつまで経っても話は進まないだろう。私は根気強く女性たちに話しかける。


「支払う給金が少なくて、とても惨めな思いをさせてしまったわ。この畑も少なくなった給金を埋めるためにこしらえたものよね」

「そうさ。あんたたちが私たちの給金を減らしたから、食べ物を買うお金がないんだよ。私たち女性陣が減った給金分、家事の合間に野菜を育てているのさ」

「そう、この町には働き者が沢山いるのね。あなたたちのお陰で、子供は問題なく大きくなっているみたいね。今まで頑張ってきてくれてありがとう」

「自分たちの子供が大切だからね。この子たちにはちゃんと大きくなってもらわなくちゃ」

「全て、あなたたちの頑張りのお陰よ。本当にご苦労様」


 女性たちに寄り添うように話をすると、少しずつ言葉の棘がなくなってきているように思う。


 そんな様子を見て、怒り顔だった子供たちの表情が緩んでいく。そうそう、私は敵対したいわけじゃないの。ただ、話を聞いてもらいたくて来ただけなんだから。


「給金が少なくてごめんなさい。領の収入が落ち込んだせいで、あなたたちへ十分な給金を渡すことが出来なかったわ」

「……そりゃあ、魔石と鉄が採れなくなったからそうなった訳で。それについては、仕方なかった……」

「私たちはここでしか生活が出来ない、他の暮し方も仕事も分からない! ここでしか生きていけないんだ! 仕事がない時、どれだけ不安だったか……」

「そうよね、魔石や鉄が採れなくなって、自分たちの生活が変わっていくかもしれない。それを考えると不安になるわよね。その不安に寄り添わず、支えられなくてごめんなさい」


 一つずつ、彼女たちの心に寄り添っていく。見放されたと思っていた彼女たちは次々に不安だった事を言い、私はその言葉に耳を傾けて言葉を尽くす。


 すると、怒りで溢れていた彼女たちの様子が少しずつ穏やかになっていった。


「新しく領主になったあんたには何も関係ないのかもしれない。だけど、私たちは不安だったんだ!」

「いいえ、領主になったからには関係のある事だわ。今までは不安にさせてしまったけれど、これからは違う。ちゃんと向き合っていきたいと思っている。私はね、この町を救いに来たの」

「今更、何ができるっていうんだい。魔石や鉄が採れなくなったこの町は……死ぬしかないんだ」

「いいえ、まだ出来る事があるわ。この町を一緒に復興させましょう」


 そういうと女性たちはざわついた。見捨てられたと思ったら突然領主がやってきて、この町を復興させるという。その事実にただただ驚いているようだった。


「そんなこと、出来る訳ない。今だって……」


 その女性の言葉に他の女性たちは悲しそうに俯いた。どういう意味なのだろうか? その話を詳しく聞きたいけれど、そんな雰囲気ではない。


 落ち込んでいる雰囲気に子供たちも一緒になって落ち込んでいる。この空気はダメね、もっと明るくしなくっちゃ。


「諦めないで。最後まで諦めずに行動すれば、きっと道は開かれるわ」

「そう簡単にいくわけ……」

「どんな道も険しいと思う。だけど、どんな道でも努力は報われるはずよ。だから、希望を捨てないで」


 強い口調で言うと、悲しみに暮れていた空気が和らいだ。そう、諦めずに走った後には必ず成功があるのよ。


「もう一度言うわ。私はこの領を救いに来たの。みんなが安心して暮せる町を取り戻したいって思っている。その為には、町長と話さなくちゃいけない。だから、町長に会わせて」


 説得の言葉を向けると、落ち着いた様子の女性たちが話し合う。しばらく待っていると、女性たちは農具を下ろした。


「私達だけじゃ、決められない。だから、町長に会わせることにするわ」


 その言葉に私とハイドとガイは顔を見合わせた。ようやく、女性たちの心を動かすことが出来たんだ。


「もう少ししたら、町長たちが帰って来る。だから、しばらくの間待っていて」


 町長、たち? そういえば、男性の姿は畑にない。町長たちと男性たちは何をしているということなのだろうか?

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