133.瞳の変化
「それにしても聖女の説明書って長いね…。」
「うん。こんなめちゃくちゃ細かく書いてあるとは思わなかった。」
聖女としての最後の仕事は、聖女の説明書を修正することだった。
長い年月使われているものだが、聖女が来るたびに細かい修正がされているらしい。
そのため、最初の聖女の説明書の数倍の量になっているという。
辞書かなと思うくらい分厚い説明書を見て、
今まで私にキリルが見せなかった理由もわかった。
神力のことで悩んでいる時期にこんな辞書を読めって言われたら嫌だわ。
聖女の仕事のほとんどを終え、こうして暇になってからなら読む気にもなる。
パラパラとめくって、向こうの世界と違いがないかを確認する。
「これ、料理とかは別冊になっているらしいよ。」
「うそ。これ一冊で終わらないの?」
「まぁ、そのおかげで向こうと同じご飯が食べられたわけだから。
最後の仕事だと思ってがんばろうよ。」
「仕方ないね~。」
美里と気合を入れ直していると、
キリルとカインさんがケーキとお茶を持ってきてくれる。
今日のケーキはカッテージチーズを使ったレアチーズケーキで、
ブルーベリーのソースがたっぷりかけられている。
その隣には苺のシャーベットも添えられていた。
「あー夏っぽい感じだね。」
「うん、アイスティーも美味しい。」
「喜んでもらえてよかった。ケーキのおかわりあるからね?」
「「はーい。」」
甘いものはほとんど食べないのに、ケーキ作りはカインさんの担当らしく、
今日のケーキは満足いく出来栄えだったようでうなずいている。
キリルは甘いものが好きなので、私たちと一緒にケーキを食べていた。
口の端にケーキの土台のビスケット生地がついているのを見て、笑ってしまう。
「ふふ。キリル、口の横についちゃってるよ。」
「え?本当?」
「うん、取ってあげるからちょっと待って。」
手をのばしてカケラを取ってあげていたら、白い光の輪がキリルの身体を包んだ。
「え?」
よく見たら、私の周りにも白い光の輪がまわっている。
美里とカインさんにも同じようにくるくると光る輪がまわっていた。
「何、何?」
「え?どういうこと?」
私と美里が驚いているのに、キリルとカインさんはじっと待っているだけだった。
一分もかからずに光の輪が消え、何が起きたのかと思う。
「キリル…今の…え?キリル…目の色が…」
キリルの目の色が緑から紫に変わっていた。
美里を見ると、美里も紫に変わっている。カインさんの目は青に変わっていた。
「え?どうして?みんなの目の色が変わった。」
「悠里、悠里の目も変わったよ。青になってる。」
「え?ホントに?」
三人だけじゃなく、私の目の色も変わっていたようだ。
急になんで?さっきの白い光の輪のせい?
「ユウリ、それがユウリの本当の目の色なんだよ。
緑色は神の使いの印だって前に説明しただろう?
…この世界の瘴気がすべて消えたんだ。
目の色が戻ったのは、聖女の仕事が終わったってことなんだよ。」
「聖女の仕事が終わった?
青色が私の本当の目の色?美里は本当の目の色が紫だったってこと?」
「うん。そういうこと。これで二人がどこに生まれるはずだったのかわかった。」
「「え?」」




