102.魔力と依存(一花)
「…私は悠里を利用してなんて…。」
「無意識だったんだろうが、力を使って利用していたことは確かだ。
聖女じゃなく寄生者だとわかったから、父上の後宮に放り込もうかどうか悩んだ。
魔力を吸って魅了するものを父上の後宮に入れれば混乱するだろうからな。
父上の力を削ぐのにちょうどいいかと思っていたんだ。
イチカと話をするようになって、その考えはやめた。」
「……。」
「あまりにもイチカは何も知らないようだったから。
それに何度も話しているうちにイチカと仲良くなっていたしな。
まずは他の者の魔力を吸わないように、俺以外の魔力持ちは遠ざけた。
このエリアでイチカの世話をさせている者たちは魔力が無いものを選んだ。
ついでにイチカの魅了に抵抗できるように魔術具をつけさせている。
この城に来て、イチカが吸っていた魔力は全部俺の魔力だ。
俺はこの国で一番魔力量が多い。
多少吸われたところで問題ないし、魅了も効かない。」
「…あんなにしょっちゅう会ってたのは魔力を吸わせるため?」
「それもあるし、イチカと会うのが息抜きになっていたのもあるな。
次期国王というのはなかなかめんどくさいから。
…ここひと月会わなかったのは、即位するのに忙しかったからだ。
あまりに忙しすぎて抜け出してくることができなかった。
俺、もう国王になったんだ。」
「あぁ、そうなんだ。」
そういえば成人したら国王になるって言ってた。
しばらく会わないと思っていたけど、忙しかったからなんだ。
もう飽きて忘れちゃったとかじゃないんだ…。
「ひと月も会わなくなれば、イチカの中にある俺の魔力も消える。
体調が悪かったのも、それが原因だ。
昨日、これでもかと魔力を渡したから、今は平気だろう。」
「あぁ、だから魔力不足で体調がとか言ってたんだ。
…え?寝たのはそのため?」
「…ちょっとキスすれば落ち着くかと思ったのに、お前が離さないのが悪い。
あんなに引っ付かれたら、途中でやめるわけにも…。」
昨日の行動を思い返してみたら、私が抱き着いて離さなかった気がする。
おそらくあれが魔力なんだと思うけど、それがもっと欲しくてねだっていた。
王子がキスだけにするつもりだったのを、ベッドに引き込んだのは私だ…。
こうなった原因って私のせいなのか。
「無理やり抱いたわけじゃないが、悪かったよ。
もっと魔力が無くなる前に会えばよかったんだが、
これがいい機会だとも思ったんだ。」
「…いい機会って?」
「イチカのこれからの人生は二つ選択肢がある。」
「二つ?…もう悠里のところに戻るって選択肢は…」
「それは無い。
今、この世界では瘴気が発生している。
瘴気って言ってもイチカはわからないだろうが、良くないものなんだ。
ドロドロした瘴気に入り込まれると身体の中で魔獣が産まれる。
その魔獣が身体を食い破って産まれてくるから、当然死ぬことになる。
イチカは身を守るすべがないだろう。
一人であの国に戻ったとしてもずっと幽閉されるだけだし、
魔力を吸おうとするものに瘴気が吸い寄せられる可能性だってある。
この世界で産まれた人間よりもイチカは弱いんだ。」
「…瘴気で魔獣。」
悠里が聖女として呼ばれた理由はこれなのかな。
瘴気も魔獣もわからないけど、私が身を守るすべがないのは事実だ。
実際にこうしてさらわれて城に閉じ込められているのだから。
ここから解放されたところで自由に生きていけるわけがない。
「イチカの選択肢は、一つは向こうの世界に帰ること。」
「え?」
向こうの世界に帰る?帰れるの?
もうすでにあきらめていたことを出されて、驚くしかない。
「イチカは聖女じゃない。
聖女じゃない者が向こうに帰ったという記録を見つけた。
本気でこの世界にいたくない、向こうに帰りたいと望めば帰れるそうだ。」
「…本当に、それだけで?」




