5話
「……お前、雪乃に何したんだよ」
会長が呆れたように言う。でも私のせいじゃないのよ。本当に。言い訳にしか聞こえないのが悔しいけど。
「雪乃は重いんですよ……あたしはいつも何も無いんですけど」
雪乃は青白い顔をしてうんうん唸りながら、タオルケットに身を包ませ、あたしの膝の上にごろんと寝転がっている。
「そういうことか……あたしも重い方だから薬持ってるぞ。飲むか?」
るる先輩がそう言って鞄を探りだすけど、雪乃は力なく首を横に振った。
「風邪の時なんかもそうなんですけど、こればかりはいつも我慢するんですよ。顔を上げるのすら辛そうなのに」
「やだもん……」
家で寝てればいいのに。我慢しなくても、この学校の先生はみんな女性だから理解してくれるはずだし。
「おかげで心配で目が離せません」
「それはいつものことだろ!!」
「変われるならいいのに。1度もそういうのないから分かってあげられないし」
「羨ましいな」
結局、いつものように膝枕をして、頭を撫でてあげることしか出来ないのよ。
「ゔー。ぐあんぐあんだしぐるぐるだしふわふわなの〜……」
「意味が分からないわ……」
「雪乃ちゃん。ココアは暖まるしリラックスも出来るのよ。体起こせるようなら飲んでね」
「ここあぁ〜」
テーブルのココア目がけて伸びた手はしかし、途中で力無く下ろされた。
「ゔー……無理」
「いい加減諦めて薬を飲みなさい雪乃」
「やだよぉ。だってこれを乗り越えたら赤ちゃん産むときは少し楽だって……」
確かにそういう話は聞いたことあるけど。
「大丈夫よ。まだ女性同士で子どもを産めるほど技術は発達してないわ」
「お前雪乃が男と結婚する可能性を考えてないのかよ……」
「そんなの許しませんよ」
るる先輩のツッコミに思わず即答する。
「でも結婚は出来るかも……」
「そうね。地域によってはもう許可されてるし」
「結婚したらできるから……」
「「「え?」」」「あぁ?」
この場にいた全員がポカンと口を開ける。
そういえば……みんなそういう話を雪乃にしようとはしないから……だって、ねぇ? 純粋でいてほしいじゃない?
「そうね……」
としか、言いようがなかった。
まあでも、
「いざとなったら性転換してでも孕まs……」
ゴンと鈍い音がしてじんわりと頭が痛くなる。
「会長……やりますね……」
気配を全く感じなかった。
「お前な! とんでもないこと考えんな!」
「あたしは雪乃の為なら何でもします」
「知ってるが……」
「少しずつでも雪乃ちゃん離れしたら?」
「嫌ですよ」
リオン先輩まで何を。
雪乃から離れるなんて一生無いに決まってるわ。
「雪乃のことになると柚結里はほんとに譲らないよな」
「当たり前です。愛してますから」
「あっさり言ってくれるよな〜」
「はいどうぞ、みなさん」
いつの間に用意していたのか、3人の前に芳しい香りが漂う。コーヒーだった。あたしはブラックで、小野町姉妹は大量のミルクと砂糖を入れて飲み、一息つく。
リオン先輩は優雅に紅茶を飲んでいた。
「よくもまあ毎日放課後わざわざ集まって駄弁るだけ駄弁って盛り上がるなんてこと出来るよなー」
るる先輩の言葉にみんな首を縦に振る。雪乃は少し落ち着いたようで、すぅすぅと寝息を立てて眠っていた。
あたしも気づいたら毎日ここに足が向いてる。2人で過ごす時間が減るのが嫌だったけど、今は不思議とそうは思わない。むしろ心地よく感じるくらいだ。
「それにしてもだ。さっきのあれはちゃんと雪乃に現実を聞かせた方が……」
「ま、まぁ、そうですね雪乃には必要ない知識ですけど……」
それは流石に気が引けるわ。
「この学校に限って言えば知らん奴はいくらでも居るがな」
「「「…………」」」
「まあ、」
会長が立ち上がってコーヒーを一気に飲み干す。
「帰るか!」
中途半端に終わらせてしまった……。
なんというかもう、あ、もう無理。ってなった。
ちなみに私はゆゆと同じく生理痛全くないです。




