マリヤの願い
そして最近では、マリヤも家のことをしてくれるようになってきた。実年齢ではまだ四歳でありながら、ちょっと気の弱い面もありながら、決してカーシャやマリーチカに劣ってるわけでもない。
なにより、イワンに対する想いを今も持ち続けてて、彼から届く手紙を読むのを楽しみにしているようだ。
しかも彼への手紙を自分でしたためてエリクに託したりもする。そのために読み書きも真面目にやってる。本当に拙い絵でありながら、写本によって絵本を描いたりもする。
まあさすがに売り物になるほどのものじゃ、まだないが。でもいずれはリーネやトーイもできていたように銀貨百枚程度のものくらいは描けるようにもなるんじゃないかな。
何しろマリヤ自身、
「私も絵本を描けるようになってイワンと結婚する!」
とか、言い出したりもしてるしな。絵本の才能自体がどの程度のものかはまだ分からないにせよ、彼女がそれを目指すと言うのなら、その目標を否定する理由は俺にはねえよ。
そんな彼女も食材を準備したりという形で、マリーチカの手伝いをしてくれる。将来、イワンと結婚するんなら、料理とかもできるようになっといた方がいいかもしんねえし。
もっとも、料理ならイワンもできるから、できなくたって困らないかもしれねえが。
そうだ。アーク家では、家のことも男女関係なくできるようになった方が良いと考えている。と言うか、
『自分のことは自分でできるようになる』
って話だな。箸の上げ下げさえ自分じゃできねぇなんて、自慢できるようなことじゃねえだろ。それを自慢してた奴らは、一体、何を根拠にそれの自慢してたんだろうな。
意味が分かんねえよ。まあ、
『なんでもかんでもやってくれるような女房が貰える自分SUGEEE!』
ってことなのかもしれねえが、あくまでも阿久津安斗仁王はそう思ってた節はあったが、いやあ、あんまり格好つくことじゃねえだろ。
だってそれは、『高い能力を持った女房がすごい』って話であって、貰い物のチート能力でイキってるのと同じだろそんなの。
フィクションの中なら別にどういうキャラだろうが、受け手側の好みにさえ合えば商品として成立するわけだから別にどうこう言うこっちゃねえだろうが、リアルでそれをやるってのはなあ。
その点、イワンもトーイもそんなことでイキるようなタイプじゃねえし、心配はしてねえけどな。
だから、もし、マリヤが成長して、イワンがそんな彼女を受け入れてくれたんなら、俺としちゃ安心なんだ。
変な男に取られるよりは、そっちの方がずっと嬉しいよ。イワンなら任せられるしな。
ただし、それを強制はしない。




