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こんな気持ち悪い連中とか誰が相手にするか!

それでも、こうしてリーネが正直な気持ちを打ち明けてくれたことについてはとてもありがたいと思う。それぞれの気持ちも分からないままにあれこれ動き回ってもロクなことにはならんだろう。


いわゆる<恋愛もの>と呼ばれる漫画やアニメやドラマや映画だと、とにかくそれぞれが自分の感情、いや、明らかに下半身の欲望丸出しで自分の気持ちばかり相手に押し付けようとするのが定番だろうが、阿久津安斗仁王(あんとにお)もその手のフィクションは心底バカにしていたんだよな。


『こんな気持ち悪い連中とか誰が相手にするか!』


ってな。


<甘酸っぱい恋>


だ? けっ! ヘドが出るわ! 恋愛も所詮は<人間関係>の一種でしかねえ。互いに要望を提示し、その中で受け入れられるもの受け入れられないものについて協議するのが本来の在り方だろうが! てめえばっかり優先されようとか考えてる奴なんざ、糞にまみれて畑の肥やしにでもなりやがれ!


とにかく、フィクションと現実をごっちゃにするんじゃねえよ。


確かに、フィクションをフィクションとして楽しむのはいい。それに口出しはせん。けどな、現実をフィクションに合わせようとするのはよせ。そういうのはストーカーの発想だ。


その点、イワンも、強引にリーネに迫るようなことはしないでいてくれたから、俺としては本当に感謝してる。ちゃんと彼女を人間として接して、彼女が自分を受け入れてくれるのを待とうとしてくれてたんだ。


立派だよ。


ただ、<人の気持ち>ってヤツは、自分にばかり都合よくはいかない。そもそもリーネ自身、イワンの気持ちを理解して何とかそれを受け入れようとしてくれてたんだ。


でも、無理だった。トーイのことを好きな自分の気持ちを、イワンの気持ちのために捻じ曲げることはできなかったということだ。


こうなると、とにかくトーイの気持ちを確かめなきゃならんな。


けどなあ、トーイはリーネのことが好きみたいなんだよなあ……つまり、両想いってことだ。


すると今度は、カーシャとマリーチカの<気持ち>が報われない。


これが血の繋がった兄弟姉妹なら、


『悪いが諦めてくれ』


と言うこともできた。『好き』という気持ちは尊いかもしれないが、さすがに実の兄弟姉妹のそれを認めることは俺にもできない。が、今回はその辺りの問題については関係ないので脇に置くことにする。なにしろ、誰も血が繋がっていないんだ。両想いなら何の問題もない。だから俺としてはそれを優先する。


イワンやカーシャやマリーチカには恨まれるかもしれないとしても、この辺りの<裁定>については、恨まれ役も必要だろう。リーネやトーイが恨まれるよりは俺が恨まれる方がマシだと思う。


とは言え、気が重いな……



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