表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
361/398

これなに? これなに!?

「ねえねえ! これなに? これなに!?」


マリーチカは、うちに来てトーイが実際に鍛冶の仕事をしてるのを見て、道具に手を伸ばそうとした。それに対してトーイが、


「触るな!!」


と声を荒げる。


これまで、カーシャやマリヤに対してそんな風にしたことがなかったこともあって、カーシャとマリヤまでビクッと体を竦ませて、マリヤに至っては泣き出してしまった。


「おお、おお、よしよし、大丈夫、大丈夫だ。トーイはマリヤに怒ってるわけじゃない」


たまたま作業場の前を通りがかったところでトーイの怒声を浴びたから、自分が怒られたのかと思ってしまったんだろう。そんなマリヤを抱き上げてなだめつつ俺は、


「マリーチカ。この仕事はとても危ないんだ。それに使う道具も危険なものが多い。だから俺達鍛冶屋は、自分以外の人間に道具を触らせないんだよ」


怯えた様子のマリーチカにも、丁寧にそう声を掛けた。するとトーイは、


「見てるだけって言うから作業場に入れたんだ。邪魔するなら出てってもらう」


とも付け加える。職人としての矜持をすでに持ち始めているからこその言葉だろう。声を荒げてしまったのはあまり褒められたことじゃないが、その辺りはトーイ自身、まだまだ若くて未熟だからな。


そんなトーイに、マリーチカは、怯えてた様子だったのがいきなりキッと眉を吊り上げて、


「なによ! そんな言い方しなくていいじゃない!」


と言い返した。


『やれやれ。これは骨が折れそうだ……』


なんてことも思ってしまう。マリーチカは、この歳まで村の連中の常識の中で育ってきたからなあ。イワンもそうだったが、イワンの方は割と感情を内向きに溜め込むタイプだったからおとなしそうに見えるんだが、マリーチカはその場で表に出すタイプってことだな。


でも、俺としてはむしろマリーチカのようなタイプの方が扱いやすいと感じるというのもある。何しろ、その時の感情や思考が分かりやすいからな。だから対処もしやすいんだ。逆にトーイやイワンのように普段はおとなしそうなタイプの方が何を考えてるのか感じてるのかが掴みづらくて難しい。


実際、これまで見せなかった態度をこんな風に急に見せたりするし。


だからこそ親が間に入る必要があるんだ。こうやってお互いに感情的になってる時に、どう対処すればいいのかっていう<手本>を見せるんだよ。


そんなわけでまずは、


「マリーチカ。すまん。トーイは今、鍛冶屋として一人前になるための修行中なんだ。それだけ真剣なんだよ。分かってやってくれないか?」


<新入り>である方のマリーチカに対してまず譲歩を持ち掛けたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ