マウント取れなくなるのが
ここまで語ってきたようなことを、阿久津安斗仁王はゆかりに対して一切、語ってこなかった。てか、そもそもゆかりと会話することさえ疎ましくて避けてきた。
親って奴はすぐに、
『子供の方が親を避けてる』
とか言いやがるが、そりゃ親の方が先に子供の話を聞かなかったからだろうが。子供の話に耳を傾けようとしなかったから子供に愛想尽かされただけだろうが。順序が逆なんだよ。
阿久津安斗仁王もゆかりの言葉に耳なんか傾けなかった。だからゆかりも、阿久津安斗仁王の言葉なんか聞こうとしなかった。
それが現実だ。
『子供が親の言葉を聞くのは当たり前だろ!』
とかホザく奴は、
『子供を生むことにした時、その子供に承諾をもらったなんて事実なんざ欠片もねえ』
って<当たり前>と向き合ってんのかよ? 向き合ってねえよなあ? その事実と向き合えてれば、『子供が親の言葉を聞くのは当たり前だろ!』なんて戯言も口にできるわきゃねえもんな。
何度でも言ってやるよ。親が子供を育てんのは、てめえが勝手に子供をこの世に送り出したことの尻拭いでしかねえんだよ。それでなんで『子供が親の言葉を聞くのは当たり前だろ!』みてえな寝言、口にできんだ? 子供に対して偉そうにするんなら、まずはてめえがその<当たり前>と向き合ってみせろよ。
できねえのか? その現実と向き合うのが怖えか? それを認めちまうと子供に対してマウント取れなくなるのが怖えのか?
このヘタレが!
阿久津安斗仁王はまぎれもねえ<ヘタレ>だったよ。その事実を認めなきゃ先には進めなかった。
前世ですぐに『ソースを出せ』だの『エビデンスを示せ』だの言ってた連中も、
『子供を生むことにした時、その子供に承諾をもらったなんて事実が本当にあるのかどうか?』
ってえことについてソースやエビデンスを示せたのかねえ? そんなもんにオカルト以外のソースを示せた奴なんざいるとも思えねえし、ましてや<エビデンス>なんてえものを示せた奴なんざいたはずもねえよなあ?
だってそんなものはねえんだし。
そう言えば、<陰謀論>ってのが好きな連中は、できもしねえことが『裏で行われてる!』と妄想を並べて、
『じゃあそれができないって言うのならその証拠を見せろ!』
だの、いわゆる<悪魔の証明>ってヤツを求めてきやがるよな。『科学的にそれを実現できる方法がない』ってことを立証しようとしても、『それができる技術は隠されてるだけだ!』とかホザいてきた。『隠されてる超技術なんてない』ってのを証明することなんてできねえのによ。
陰謀論にハマってる親とかに、
『子供を生むことにした時、そのことについて子供に承諾をもらったなんて事実なんてない』
って突き付けてみな。そうすりゃ陰謀論ってものの本質が見えてくるかもしれねえぜ?




