嘘だって吐き放題だ
ところで、今のこの世界には、はっきりとした<権利>って言葉がねえ。そういう概念がそもそもねえから仕方ないんだが、そこで俺は<機会>って言葉で代用してる。<選択の機会>は、本来なら誰にでもあるべきなんだろうな。
それに大人同士だったら、基本的にそいつと関わるかどうかだって、『どの程度関わるか』『どの程度親密になるか』って点も含めて普通は自分で選べるだろ? それをまあ<権利>というニュアンスで使ってるってわけだ。
けど、子供にはそれがない。
<どの親の下に生まれてくるかの選択の機会>
はねえんだよ。じゃあ、子供は自分で選んで生まれてきたわけじゃねえから、責任なんかそもそも持ちようがねえじゃねえか。違うのかよ?
じゃなきゃ、
『自由には責任が伴う』
なんて御託、通用しねえぞ? 自分じゃ選択できねえことにさえ責任を負わされるんじゃ、それを蹴飛ばそうと思ったら<無法>しかねえじゃねえか。違うってのかよ? 自分で選択できる自由があってこその『自由には責任が伴う』じゃねえのかよ?
だからこれも、俺はリーネ達に伝えておく。
「自分が好き勝手に生きたいなら、それには責任が伴うんだ。自分がそれを選択したという責任がな。けど、『どの親の下に生まれてくるか?』ってことについては、実際には選択なんてできないんだ。誰も覚えてない。たまにそれを『覚えてる』とか言ってる奴がいたりもするが、それが本当に事実なのかを確かめる方法なんかない。事実かどうかを確かめる方法がないってことは、嘘だって吐き放題だ。それはおかしいだろ?」
「確かに……」
「……」
「それは…分かる……」
リーネとトーイとイワンが頷いてくれる。
俺はそれを確かめて、言うんだ。
「だから忘れないでほしい。どんな生き方を選んでもそれは自由だが、『選択には責任が伴う』ってことをな。それをわきまえない奴が、他人様に迷惑掛けても『自由だから!』とか言いやがるんだ。俺は、みんなにそんな奴になってほしくない。なってほしくないからこうやってちゃんと教えとく。こんなことも教えない親も多いが、俺は教えとくんだ。だからこそ、こうやってちゃんと教えたんだから、『そんなこと教わってない!』なんて言い訳は通用しないってのも肝に銘じておいてほしい」
どうだ。こういうことも、親からちゃんと教わってるか? 何度でも言うが教わってなきゃそれは親の<怠慢>だ。そして、『親の所為にするな』とかホザくんなら、親からそれを教わってねえからって、『周りにいくら迷惑掛けても構わねえ! 自分は自由に生きるんだ!』なんて戯言は通用しねえぞ。




