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写本して作った絵本については

でも、だからってカーシャだけを気にかけてるわけじゃないぞ。


家のことをしてもらったら、リーネにもトーイにもイワンにも、


「ありがとう」


と感謝の気持ちを示すし、普段の様子はきちんと見るようにしてる。そうしなきゃ、<普段と違う様子>なんか分からないだろ?


もっとも、イワンについては、さすがにこれまで散々、大人から虐げられてきたんだろうな。明らかに怯えた様子が垣間見える。俺と出逢ったばかりの頃のリーネと同じだ。だから別に気にしない。カーシャよりも長い間、物心つくまでの間、痛め付けられてきたからな。


だいたい、イワンの足が不自由なのも、俺は虐待が原因だと思ってる。何しろ、俺が村で初めてイワンを見掛けた時には、普通に歩いてたからな。それがいつの間にか足を引きずるようになってたんだ。


折檻で足を折られてまともに治療も受けられずに怪我だけ治っちまったから障害が残ったんだろうなと睨んでるんだよ。しかし証拠もないしだいたい、誰もそれを責めるつもりもないからな。俺以外の村の奴は。俺一人が騒いだところで何も解決しないし、むしろイワンの立場が悪くなるだけだろうから、俺が引き取ったんだ。そうすりゃイワンの両親も心置きなく次を作れるわけで。


最低だよ。そんなことは分かってる。けどな、<味方>がいなけりゃ<力>も集まらないんだ。こういうのを本当の意味での<弱者>ってんだろ? 前世の、


<社会的な力を集められる弱者>


なんてのは、もう、<弱者>じゃねえ。社会を動かせるだけの力があるならそれはもう<強者>なんだよ。


とは言え、無暗に噛み付くのもどうかとは思うから、俺はただ関わらないようにするだけだろうけどな。


ただ、こっちじゃイワンやカーシャは本物の<弱者>ではある。だから俺が力を貸す。自分の力で生きていけるようになってもらうために、いろいろする。


で、今のところは家のことができるようにだな。しかし、イワンは前にも言った通り、トーイ以上に手先が器用だ。これは大きな能力だぞ。しかも、勉強熱心だ。


積極的に文字を覚えようとしてくれてる。その成長速度は、リーネ以上かもしれない。


足が不自由なくらいなんだ。それを補って余りある能力があればいいだけだろうが。イワンには間違いなくそれがある。


今、うちには、


<頭巾ちゃんとき〇がい伯爵>


<千の獣の皮を被った王女>


<王様になりたかった嘘つきカラス>


<嘘つきな羊飼いの少年>


<素朴な田舎ネズミと高慢な町ネズミ>


<愚かな欲張り犬>


と、六冊の絵本がある。これはちょっとした財産だ。しかも、リーネとトーイが写本して作った絵本については、出来のいいものはエリクに卸して、銀貨百枚の値段で売ってもらったりもしてる。


ちなみに取り分は、エリクが七割。こっちが三割だ。



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