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そいつの能力がすべて決まるって

イワンは、リーネが丁寧に教えてくれてるから任せてるし、足は不自由でも実は手先はかなり起用で、正直、トーイよりも巧いくらいかもしれない。


そうだ。『足が不自由』ってだけでそいつの能力がすべて決まるってわけじゃねえ。村じゃ畑仕事を手伝わせるのが結局はメインだからそれを巧くこなせなけりゃ、


<役立たず>


ってことにもなるんだが、いやいや、うちじゃ十分に役立ってくれてるぞ。しかもイワン、罠を作るのも巧いんだ。こちらはそれこそ俺より巧いかもしれない。


イワンが罠を仕掛けるようになってから、獲物が獲れる確率が上がった気がする。まあこれは誤差の範囲内で『そんな気がする』だけかもしれないけどよ。


そしてカーシャの方だが、彼女はそれこそ生後数ヶ月の赤ん坊で、今のところは何の役にも立ってない。目が見えないからそれこそ成長しても何の役にも立たないかもしれないが、でもなあ。俺だって今世に生まれてから、夜なんかほとんど視力は当てにならないが、何となく周囲の様子とか察せられるようになったぞ?


音の反響で、壁や木が前にあったら分かるようになった。


考えてみりゃ、野生の生き物にゃ、目そのものが退化しちまったのもいるよな? そういうのも普通に生きてるよな? コウモリとかは、


<エコーロケーション>


とかいう能力で周囲を察知してるらしいが、そんな特別な能力を持たなくても生きてるのもいたはずだ。モグラとかは鼻がよかったんだっけか?


だから、『目が見えない』というだけで『何もできない』と決め付けるのもおかしな話とは思わないか? 人間社会が視力に頼り切った構造になってるから適応しづらいってだけじゃないのか?


視力に頼らなくても手先だけでできる作業については、カーシャにやってもらおうと思ってる。藁を編んで縄を作ったりというのも、慣れた人間はそれこそよそ見をしながらでもできるしな。手先指先の感覚だけで作業をしてるんだ。できない部分は俺達がフォローすればいい。


とにかく俺達は、お互いに支え合って生きていくんだよ。カーシャはまだ一方的に守られる側ではあるものの、誰だって赤ん坊の頃はそうじゃねえか。赤ん坊の時からばりばり仕事してる奴が現実社会にいるってのかよ? 漫画やアニメの見すぎだろ。


俺はその当たり前のことをしようとしてるだけに過ぎん。


逆に、それ以外のことができるとも思ってない。人生はオカルトじゃねえんだ。オカルト染みた奇跡みたいなことを起こる場合もあるとしても、そんなもん、計算に入れられるような確率で起こることじゃねえだろうが。



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