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非常識

しかし、だからといって<ブルーノの父親>に対して直接は言わねえ。それを言ったところでこいつには届かねえのも分かってる。こいつらにとっては俺の考えてることの方が<非常識>だからな。


<常識>ってやつは、状況によって変わる。ここじゃ子供は家畜であり奴隷だが、それを嫌だと思う奴がいたからこそ、前世くらいまでは変わってもきた。


でも、


『生んでやった』


だの、


『育ててやった』


だのって理屈がまかり通ってる限りはまだまだだとは思う。何より、


『子供が親を選んで生まれてきた』


なんてトンデモオカルトが完全に消えてないうちはそれこそな。


『前世の記憶が残ってる』


ってえまさしくトンデモオカルトそのものな俺が言うのもなんだが、しかし、


『前世の記憶が残ってるほどの奴が親を選べてねえ』


のは事実だ。それがどういうことか分かるよな? 俺はあんなクソ親を自分じゃ絶対に選ばない。ましてやこんな世界に生まれるくらいなら、転生そのものを拒否する。それが拒否できないならそんなものは『自分で選べる』とは言わん。


なのに『子供が親を選んで生まれてきた』とかホザく奴がいなくならないうちは、


『現実を見てねえのは大人の方だ』


てのも変わらんだろ。


そしてそんな大人を俺一人が変えられるわけがないのも事実だろうし、そんなことをしようとしてもリーネやトーイに迷惑が掛かるだけだからやらん。


それよりも今は、


「ほら、銀貨三百だ。確認してくれ」


「おう。じゃ、これ絵本な」


<ブルーノの父親>が帰った後に取引を行う。エリクが銀貨を数えてる間に、俺も絵本の内容を確認。すると、俺が見たことのある<頭巾ちゃんとキ〇ガイ伯爵>に比べると格段に絵が上手かった。しかも字も綺麗だ。この辺りがいかにも<写本>らしい。写す人間によってクオリティがまったく変わってしまう。正直、俺の記憶にあったのを基準に銀貨三百と思ってたんだが、こりゃ掘り出し物かもしれねえ。


ただ、ところどころ読めねえ単語があった。加筆修正されてるのかもな。この辺りも、写本した奴が勝手に自分の解釈を書き加えたり気に入らない描写を削ったりってことが横行するってのを物語ってるようだ。


わけも分からず書き写してる間はそこまで頭が回らないだろうが、だんだん分かってくると今度は対抗心やら自己顕示欲やらが頭をもたげてくるってのも、人間の(さが)なんだろう。


『自分ならもっといいものが書ける!』


って感じでな。で、勝手なことをする。


それでいいものになっていきゃまあアリにしても、前世でもいたなあ。


<歴史的な美術品を、根拠のない自信を基に勝手に修理しようとして台無しにする素人>


ってのが。



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