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掘り出し物

前世にゃ、他人を煽るしか能のない奴もいたな。匿名の陰に隠れて、


『やれるもんならやってみろよwww』


とか言ってる奴。でもそういう奴ほど、実際にやられたら逃げ回るしかできないんだろうな。何しろ、前世じゃ、電車の中で刃物振り回して火まで点けた奴がいた事件でも、その加害者がいかにもな<陰キャ>だったわりにゃ、誰も立ち向かっていかなかったんだろう? それがすべてを表してんじゃねえか。


普通はそういうもんだろ。ヤベぇとなったらとにかく一目散に逃げる。そこで立ち向かっていく奴なんざどっかネジが外れてやがんだろ。たまにそういうネジの外れたのがいても、普通はそうじゃないって時点で煽ってるような奴の方が現実が見えてねえだけだろ。


だから俺はもう、煽ることもしねえ。煽って追い詰めて実際に事件になったら責任の取りようもねえしな。となれば、そんな俺の姿をリーネやトーイの前でも見せねえってことだ。そんなのを真似されたりしたらそれこそ目も当てられねえ。




なんてことを考えつつ毎日を淡々と過ごしてると、それこそ収穫の時期が来て、俺が作った鎌が麓の村で大活躍してた。今、麓に暮らしてる奴らも、住むところを失って着のみ着のままで来たのが多かったから、道具もそれこそ残ってたものをそのまま使ってたのも多いようだ。ブルーノの父親も、あの住んでた家のところに元々あった家を撤去した時に出てきたものを使ってたらしい。元々あった家が焼けてそん時にダメージを受けたプラウや、先が欠けた包丁を使うしかなかったってことだな。


ま、長年使い込んだ包丁と鍋のオバサンの場合は、実際に自分が使ってたものみたいだが。


あと、麓の村にもあったはずの鍛冶工房も焼けて崩れてどうしようもなくなってたらしい。が、


「これ、焼けた家の中から出てきたんだけどよ、鍛冶屋で使うもんだろ? 俺達にゃ使い道ねえけど、あんたなら使えんじゃないかと思ってよ」


と村の連中が荷車に乗せて見せてくれたのは、<金床(かなとこ)>だった。俺が今使ってる、<岩を削り出して作られた金床もどき>じゃなくて、ガチで本物の鉄でできた<金床(かなとこ)>だ。


「ああ、これは助かる」


正直な気持ちだった。今使ってるヤツもまだ大丈夫そうだったが、いかんせん<岩>だからな。ちゃんとした金床じゃねえしいつ壊れるか分かったもんじゃなかった。冷や冷やしながら使ってたんだよ。けど、今回出てきたヤツはちゃんとしたものだった。他にも、<柄が燃えてなくなった槌>や<やっとこ>、<タガネ>、<砥石>も一緒だった。


これは文字通り<掘り出し物>だな。



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