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読み書きができるだけで超エリート

正直、こっちの世界じゃ、まともに読み書きができるだけで超エリートだ。ただし、元の世界の知識しかない奴がそのまま<転移>したって、算術はともかく読み書きはすぐにはままならないだろう。その点、<転生>の場合は、ある程度のことは学べるから理解は早いと思う。


何しろ、頭が柔らかいうちに、前世の記憶と照合する形で覚えていけるからな。こっちの連中は、しゃべることさえできれば何とかなると思ってて、文字を覚えようっていう気がない。必要な分の単語だけ、<記号>って感じで覚えてるって程度だ。


でもなあ、言葉は知ってても<文字>がそもそも使われてないから、どの言葉にどの文字が当てはまるかが分からない。何らかのきっかけで断片的に知れるそれをちょっとずつ覚えていくしかない。


文字は基本的にアルファベットに近いから覚えるのは余裕だった。ただ、発音が俺の知らないそれだったから、聞いたまま覚えるしかできなかった。


強いて言うならフランス語に近いような気がしないでもないが、でもやっぱり確実に違う。ま、英語とフランス語とドイツ語くらいしか聞き分けられない俺の知識なんかまったく当てにならないけどな。


一方、数字は、1が<а>の上に波型の記号が乗ってるもので、以降、2=в、3=г、4=д、5=е、って、前世でも見たことのある文字の上にやっぱり波型の記号が乗ってるものだった。しかもアラビア数字なら1と0で10、2と0で20と表せば済むところを、10=і、20=к。さらに、100=р、200=с、って調子で、900=ц、まで続く。なのに1000を超えると今度は<҂>って記号が前に付くと、実にめんどくさい。


それで考えるとアラビア数字ってのは非常に直感的に理解できるように整理された機能的な数字だったんだなと思わされる。


とは言え、一度覚えるとあとはまあ、そんなに難しくはない。実際、数字については、仕事でも使うからか、書ける人間も少なくはない。


ただし、<文章>となるとほとんど誰も書けなくなる。街に行けばまだマシかもしれなくても、少なくとも俺の周りでは文章を書ける人間は代書屋しかいなかった。その代書屋も、村に住んでる奴じゃなくて、たまに村を訪れて代筆とかを請け負う<流し>って感じの業態だったな。


麓の村にはまだ代書屋はこない。他の村と交流ができ始めたからいずれは現れるだろう。その代書屋を通じて絵本でも手に入れられりゃ、教材としても万々歳だ。


こう考えると、やっぱ、親が<教育>ってもんを考えるか考えないかで子供に大きな影響が出るんだな。


前世だと<学校>があったから親はそこまで考えなくてもよかったが。



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